2022年7月31日日曜日

031青玉案(歐陽修)

青玉案  歐陽修

1一年春事都来幾。
2早過了・三之二。
3緑暗紅嫣渾可事、緑楊庭院、暖風簾幕、有個人憔悴。

4買花載酒長安市、又争似家山見桃李。
5不枉東風吹客涙、相思難表、夢魂無拠、惟有帰来是。

1一年のうち春はあわせてどのくらいなのだろう。
2早くも三分の二は過ぎてしまった。
3葉がこんもりと茂り、花が赤くうるわしいのは、楽しむべきことだろう。楊柳の垂れる庭の奥、暖かい風が吹きすぎる簾やカーテン、そこには憔悴した面持ちの人がいるけれど。

4長安の市で花を買い、酒を車に乗せるが、故郷の桃李には似ても似つかない。
5なるほど、春風が旅人の涙を乾かそうとしても、あの人を思う気持ちは表しがたく、夢はさらにアテにならない、どうやら引き返すのが正しいようだ。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
3紅嫣:赤い花が麗しいさま。 渾可事:楽しかったと言えること。 4買花:歌を買う、妓楼で遊ぶこと。 争似:どうして似ていることがあろうか。 家山:故郷。 5不枉:なるほど~に違いない。

中華書局『宋詞三百首誦読本』注:
3渾可事:すべてつまらない事、関心に価しない事。

1一年の春事(はる)都来(あわせ)(どのくらい)

2早くも過了(すぎてしま)った、三()うち二を。

()は暗く(はな)(うるわ)しい、(すべ)可事(すばら)しい、緑楊(やなぎ)庭院(にわ)、簾と(カーテン)に暖かい風、(ひと)憔悴(やつ)れた人が()る。

 

4花を買い酒を載せる、長安の市、()(どうし)家山(ふるさと)で桃李を見たことに(くら)べられようか。

不枉(なるほ)東風(はるかぜ)(たびびと)の涙に吹いても、相思(おもい)は表し難く、夢魂(ゆめ)(あて)(ならな)い、惟有()帰来(かえ)るのだけが(ただ)しい。


qīng yù àn

1 yì nián chūn shì dōu lái jǐ.
2 zǎo guò liǎo、sān zhī èr.
3 lǜ àn hóng yān hún kě shì,lǜ yáng tíng yuàn,nuǎn fēng lián mù,yǒu gè rén qiáo cuì.

4 mǎi huā zǎi jiǔ cháng ān shì,yòu zhēng sì jiā shān jiàn táo lǐ.
5 bù wǎng dōng fēng chuī kè lèi,xiāng sī nán biǎo,mèng hún wú jū,wéi yǒu guī lái shì.

030浪淘沙(歐陽修)

浪淘沙  歐陽修

1把酒祝東風、且共従容。
2垂楊紫陌洛城東、総是当時携手処、遊遍芳叢。

3聚散苦匆匆、此恨無窮。
4今年花勝去年紅、可惜明年花更好、知与誰同。

1酒を手にとり春風に祝(ねが)う、私と一緒にここに留まってください、と。
2柳の枝の垂れる帝都洛陽の東の路、どこもかしこも、かつてあの人と手を携えたところ、花や草をあまねく訪ねて。

3出会いも別れもあわただしく、恨みばかりがいつまでも残る。
4今年の花は去年より赤い。だが来年、もっと花がすばらしかったとて、誰が一緒に愛でてくれるだろう。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1従容:ここでは、離れがたく留まる、の意。 2紫陌:帝都の道をいう。 4知与誰同:ほかに誰が一緒にいるのか分からない。「知」は「不知(知らない)」の意。

 

1酒を()って東風(はるかぜ)(ねが)う、(しばら)く共に従容(とどま)ってください、と。

垂楊(やなぎ)紫陌(はな)の洛城の東、総是(すべて)当時(あのとき)、手を携えた処、芳叢(はな)遊遍(たずねまわ)って。

 

(であい)(わかれ)は苦しく匆匆(あわただ)しく、此の恨みは無窮(きわまりな)い。

4今年の花は去年より()(あか)可惜(ざんねん)なことに明年の花が更に(すばら)しくても、誰()(いっしょ)にいられる(だろう)か。


làng táo shā

1 bǎ jiǔ zhù dōng fēng,qiě gòng cóng róng.
2 chuí yáng zǐ mò luò chéng dōng,zǒng shì dāng shí xié shǒu chù,yóu biàn fāng cóng.

3 jù sàn kǔ cōng cōng,cǐ hèn wú qióng.
4 jīn nián huā shèng qù nián hóng,kě xī míng nián huā gèng hǎo,zhī yǔ shéi tóng.

029木蘭花(歐陽修)

木蘭花  歐陽修

1別後不知君遠近、触目淒涼多少悶。
2漸行漸遠漸無書、水闊魚沈何処問。

3夜深風竹敲秋韻、万葉千声皆是恨。
4故敧単枕夢中尋、夢又不成燈又燼。

1別れて以来、あなたはどこにいらっしゃるのか、目にするものすべてわびしく、もの狂おしい。
2あなたはどんどん遠くへ去り、音信もとだえた。手紙を届けてくれるはずの魚も広々とした水底に沈み、どこにいるやら分からない。

3夜がふけて風が竹林にわたり、秋の声がする。ざわざわと鳴る葉は、すべて恨みの音。
4ひとり寝の枕に身体を傾け、夢の中で追いかけようとするが、夢もまだ見ぬうちに、燈心は燃えて、灰となった。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2魚沈:魚は手紙を伝えてくれるという伝説がある。魚が水底に沈んでいるは、音信がないこと。 3秋韻:秋の声。 4燼:燈心が燃えて灰燼になること。

1別れた後、(あなた)遠近(どこ)かも不知(わからな)い、目に触れるものは淒涼(わび)しく、多少(とて)(くる)しい。

(しだい)に行き(しだい)遠くなり(しだい)(てがみ)も無くなり、(かわ)(ひろ)く魚は沈み、何処(どこ)(わからな)い。

 

3夜は(ふけ)て風が竹にふき秋の(おと)()らす、万千(たくさん)の葉の(おと)皆是(どれ)も恨み。

(わざわ)(ひとりね)の枕に(もた)れてで尋ねようとするが、夢も()不成(みられな)い、(ともしび)()(もえつ)きる。


mù lán huā

1 bié hòu bù zhī jūn yuan jìn,chù mù qī liáng duō shao mēn.
2 jiàn xíng jiàn yuǎn jiàn wú shū,shuǐ kuò yú chén hé chù wèn.

3 yè shēn fēng zhú qiāo qiū yùn,wàn yè qiān shēng jiē shì hèn.
4 gù yǐ dān zhěn mèng zhōng xún,mèng yòu bù chéng dēng yòu jìn.

028蝶恋花(歐陽修)

蝶恋花  歐陽修

1幾日行雲何処去。
2忘了帰来、不道春将暮。
3百草千花寒食路、香車繫在誰家樹。

4涙眼倚楼頻独語。
5双燕来時、陌上相逢否。
6撩乱春愁如柳絮、依依夢裏無尋処。

1流れる雲のようにあなたは行ってしまって、幾日たったことでしょう。
2帰るのを忘れてしまったのですね、春がもう終わろうとしているのに。
3寒食の節句を迎えて花々の咲く道、あなたの立派な車はどこの家の樹に繋がれているのやら。

4私は涙を流しながら、高楼にのぼり、独りごとを言っています。
5つがいの燕よ、戻ってくる途中で、あの人に会いましたか?
6春の愁い、飛ぶ柳のわたのように心は乱れ、夢のようなあの日々は、どこを探しても見つかりません。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2不道:~にかかわらず。 3寒食:清明節の1~2日前の節句、火を使わず冷たい食事をとった。 6依依:「悠悠」に作るテキストもある。
 

1幾日も行雲(くも)のように何処(どこ)()ってしまったのか。

2帰って来るのを忘了(わすれてしま)って、春が()(おわ)ろうとしているのも不道(しらな)いで。

百草千花(はならんまん)の寒食の路、香車(りっぱなくるま)は誰の家の樹に繫在(つながれてい)るのか。

 

涙眼(なみだしなが)(たかどの)(もた)れて(しきり)独語(ひとりつぶや)く。

双燕(つばめ)よ、来る時、陌上(みち)であのひとに相逢()いましたか(どう)ですか。

撩乱(みだれ)る春の愁いは柳絮(やなぎのわた)(よう)依依(はるか)に夢の(なか)尋処(たずねるところ)も無く。


dié liàn huā

1 jǐ rì xíng yún hé chù qù.
2 wàng liǎo guī lái,bú dào chūn jiāng mù.
3 bǎi cǎo qiān huā hán shí lù,xiāng chē xì zài shuí jiā shù.

4 lèi yǎn yǐ lóu pín dú yǔ.
5 shuāng yàn lái shí,mò shàng xiāng féng fǒu.
6 liáo luàn chūn chóu rú liǔ xù,yī yī mèng lǐ wú xún chù.

027蝶恋花(歐陽修)

蝶恋花  歐陽修

1誰道閑情抛棄久。
2每到春来、惆悵還依旧。
3日日花前常病酒、不辞鏡裏朱顔瘦。

4河畔青蕪堤上柳、為問新愁、何事年年有。
5独立小橋風満袖、平林新月人帰後。

1私が言い難い思いを捨て去ったと言うのは誰?
2春が来るたびに、以前とかわらず悩み苦しむのに。
3くる日もくる日も、花の前で飲んでは病み、鏡に映る顔が若さを失っていることも、どうでもよいと思うのに。

4川岸の青草、岸の柳よ、くる年もくる年も、新しい愁いを抱くのは何故?
5ひとり小さな橋に立てば、風が袖に満ちる。遠く林には新月がのぼる、私が帰路についたのちに。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
3病酒:飲酒のために身体が不調なさま。 4青蕪:茂る青草。古詩「飲馬長城窟行」に「青青河辺草、綿綿思遠道(青青たる河辺の草、綿綿と遠道を思う)」とある。

 

1誰が()うのか、閑情(おもい)抛棄(すて)て久しいと。

(いつ)も春が到来()ると、惆悵(なげ)くこと、()依旧(むかしのまま)なのに。

3くる日もくる日も花の前で(いつ)病酒(ふつかよい)、鏡の(なか)朱顔(わかわかしいかお)が瘦せてしまったのも(どうでもよ)い。

 

4河の畔の青い(くさ)(きし)の柳よ、為問(たずねた)い、新しい愁いは、何事(どうし)てくる年もくる年も有るのだろう。

5独り小さな橋に立てば風が袖を満たし、平林(はやし)には新月がのぼる、(わたし)が帰った後に。


dié liàn huā

1 shéi dào xián qíng pāo qì jiǔ.
2 měi dào chūn lái,chóu chàng hái yī jiù.
3 rì rì huā qián cháng bìng jiǔ,bù cí jìng lǐ zhū yán shòu.

4 hé pàn qīng wú tí shàng liǔ,wèi wèn xīn chóu,hé shì nián nián yǒu.
5 dú lì xiǎo qiáo fēng mǎn xiù,píng lín xīn yuè rén guī hòu.

026蝶恋花(歐陽修)

蝶恋花  歐陽修

1庭院深深深幾許。
2楊柳堆煙、簾幕無重数。
3玉勒雕鞍遊冶処、楼高不見章台路。

4雨橫風狂三月暮、門掩黄昏、無計留春住。
5涙眼問花花不語、乱紅飛過秋千去。

1庭はどれほど奥深いのだろう。
2柳に靄がこもる、簾やカーテンのように幾重もかさなって。
3玉や螺鈿で飾り立てた馬に乗り、あの人はどこへ遊びに行ったやら。高い楼からも見えない、章台の路の向こう。

4横なぐりの雨に吹きすさぶ風、春の三か月も終わろうとしている。門を閉ざす黄昏時、どうにも引き止められない。
5涙ながらに花に尋ねるが、花は答えない。乱れ散る花びらが、私の乗るブランコのわきを飛んでいった。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2「楊柳」二句:柳が青い霞のように、みどりのカーテンのように、重なっていること。 3玉勒雕鞍:玉で作った馬のくつわと、螺鈿で飾った馬の鞍、貴公子を表す。 遊冶:遊楽。 章台路:花街のこと、妓女がいるところ。漢代、長安に章台があり、そのしたに章台街があって、のちの妓女が多く住んだ。

庭院(にわ)深深(おくふか)く、深さは幾許(どれくらい)

楊柳(やなぎ)(もや)(かさ)なる、簾と(カーテン)無重数(いくえ)も。

勒雕鞍(うつくしいうま)遊冶(あそ)ぶ処、楼高(たかどの)からは不見(みえな)い、章台の路のむこう。

 

4雨風が橫狂(あれ)る三月の暮れ、門を()ざす黄昏(たそがれ)、春を留住(とど)める無計(すべもな)く。

涙眼(なきなが)ら花に問うても花は不語(かたらな)い、(はなびら)(ちら)して秋千(ブランコ)を飛び過ぎて()った。


dié liàn huā

1 tíng yuàn shēn shēn shēn jǐ xǔ.
2 yang liǔ duī yān,lián mù wú chóng shù.
3 yù lè diāo ān yóu yě dhù,lóu gāo bú jiàn zhāng tái lù.

4 yǔ héng fēng kuáng sān yuè mù,mén yǎn huáng hūn,wú jì liú chūn zhù.
5 lèi yǎn wèn huā hua bù yǔ,luàn hóng fēi guò qiū qiān qù.

025踏莎行(歐陽修)

踏莎行  歐陽修

1候館梅残、渓橋柳細、草薰風暖搖征轡。
2離愁漸遠漸無窮、迢迢不断如春水。

3寸寸柔腸、盈盈粉涙、楼高莫近危欄倚。
4平蕪尽処是春山、行人更在春山外。

1宿の梅はもう散り、岸辺の柳は細い枝をのばし始め、やからかく春風に吹かれるころ、遠く旅立つことになった。
2別れの愁いはどこまでも尽きることがない。遙かに流れゆく春の川のように。

3千々に乱れる思い、おしろいを流してこぼれる涙。楼の高いところで欄干に寄りかかり、遠く眺めるのはやめよう。
4広々とした草原、春の山の尽きるところ、その春の山のさらに向こうに、あの人は行ってしまったのだから。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1候館:旅宿、客店。 草薰風暖:江淹「別賦」に「閨中風暖、陌上草薫(閨中 風暖かく、陌上 草薫る)」とある。 搖征轡:馬に乗って遠くへ行くこと。 2「離愁」句:旅人が遠く去り、愁いは尽きず、離れれば離れるほど悲しくなること。 迢迢:遙かなさま。 3危欄:高いところの欄干。 4平蕪:広々とした草原。

候館(やど)の梅は()り、渓橋(はし)の柳は細いえだをのばし、草薰り風暖かいころ、(たび)(くつわ)を搖らすことになった。

(わか)れの愁いは(しだい)に遠く(しだい)無窮(はてしな)く、迢迢(はるか)不断(たえな)い、春の(かわ)(よう)に。

 

寸寸(ちぢ)なる柔腸(こころ)盈盈(はらはら)(おしろい)をながす涙、楼高(たかどの)危欄(てすり)に近づいて(もた)れるのは(やめよ)う。

平蕪(くさはら)が尽きる処、(そこ)は春の山、行人(たびびと)は更に春の山の(むこう)に在るのだから。


tà suō xíng

1 hòu guǎn méi cán,xī qiáo liǔ xì,cǎo xūn fēng nuǎn yáo zhēng pèi.
2 lí chóu jiàn yuǎn jiàn wú qióng,tiáo tiáo bú duàn rú chūn shuǐ.

3 cùn cùn róu cháng,yíng yíng fěn lèi,lóu gāo mò jìn wēi lán yǐ.
4 píng wú jìn chù shì chūn shān,xíng rén gèng zài chūn shān wài.

024訴衷情(歐陽修)

訴衷情  歐陽修

1清晨簾幕巻軽霜、呵手試梅妝。
2都縁自有離恨、故画作遠山長。

3思往事、惜流芳、易成傷。
4擬歌先斂、欲笑還顰、最断人腸。

1朝、簾を巻き上げると、外にはうっすら霜が降りていた。手に息をはきかけて、梅花妝をほどこそうとする。
2別れの恨みのために、描いた眉は遠山のよう。

3過ぎし日々、青春の時はすぎ、悲しみがわいてくる。
4歌おうとして、眉をひそめる。笑おうとしても、眉がくもる。なんてつらいのだろう。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1呵手:手が冷たいので、息をふきかけて暖める。 梅妝:南朝の宋の武帝の娘、寿陽公主が含章殿の軒下で横になっていた時、梅の花が額に落ちて、五弁の花となった。払っても落ちず、三日これを洗ってようやく落ちた。宮女がこれを奇とし、争って真似たので、後に梅花妝という。 2遠山:女子の眉をたとえる。『西京雑記』に「文君姣好にして、眉色は遠山の如し」とある。 3流芳:過ぎ去った青春の日々、「芳華」。 成傷:悲しみを引き起こすこと。 4斂:眉をひそめる。「斂」は「咽」に作るテキストもある。 顰:眉をひそめる。

清晨(あさ)簾幕(すだれ)を巻きあげると(うっすら)と霜がおりていた、手を(はあっ)として梅妝(うめかざり)(しよ)うとする。

(すべ)離恨(わかれのうらみ)が有る縁自(せい)(そのため)遠山(まゆ)を長く画作()いてしまった。

 

往事(むかし)を思うと、流芳(わかさ)を惜しみ、成傷(かなしくな)(やす)い。

4歌を(うたお)うとして先ずまゆを(ひそ)める、欲笑(わらお)うとして()たまゆを(ひそ)める、(なん)人腸(こころ)(いた)ませることだ。


sù zhōng qíng

1 qīng chén lián mù juǎn qīng shuāng,hē shǒu shì méi zhuāng.
2 dōu yuán zì yǒu lí hèn,gù huà zuò yuan shān cháng.

3 sī wǎng shì,xī liú fāng,yì chéng shāng.
4 nǐ gē xiān liǎn,yù xiào hái pín,zuì duàn rén cháng.

023采桑子(歐陽修)

采桑子  歐陽修

1群芳過後西湖好、狼籍残紅、飛絮濛濛、垂柳闌干尽日風。

2笙歌散尽遊人去、始覚春空、垂下簾櫳、双燕帰来細雨中。

1群花が褪せたあとの西湖は、すばらしい。花びらが散乱し、柳絮が飛び乱れ、垂柳は日がな風に揺られて縦横に乱舞する。

2笙歌がやみ、客人たちは帰った。そこではじめて気がついた、春はすでに尽きようとしていることに。窓の簾を垂らすと、つがいの燕が細かい雨の中、帰ってきた。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1西湖:潁州の西湖。州の治所はいまの安徽省阜陽、湖は州城の西北にある。 狼籍:散り乱れた様子。 闌干:縦横なさま。岑参「白雪歌送武判官帰京」詩に「瀚海闌干百丈氷(瀚海闌干たり 百丈の氷)」とある。 2簾櫳:窓の簾。「櫳」は窓のれんじ、紋様入りの格子。

(はな)()った後の西湖は(すばら)しい、狼籍(ちりぢり)残紅(はなびら)飛絮(やなぎのわた)濛濛(もわもわ)垂柳(やなぎ)のある闌干に尽日(ひがな)風ふいて。

 

2笙歌が散尽()んで遊人(きゃくたち)が去り、始めて春が(おわ)ろうとしていることに(きづ)く、(まどのすだれ)垂下(おろ)すと、双燕(つばめ)が帰って来た、細かい雨の中を。


cǎi sāng zǐ

1 qún fāng guò hòu xī hú hǎo,láng jí cán hóng,fēi xù méng méng,chuí liǔ lán gān jìn rì fēng.

2 sheng gē sàn jìn yóu rén qù,shǐ jué chūn kòng,chuí xià lián long,shuāng yàn guī lái xì yǔ zhōng.

022木蘭花(宋祁)

木蘭花  宋祁

1東城漸覚風光好、縠皺波紋迎客棹。
2緑楊煙外暁寒軽、紅杏枝頭春意鬧。

3浮生長恨歓娯少、肯愛千金軽一笑。
4為君持酒勧斜陽、且向花間留晚照。

1東城はもうすばらしい景色に思える。皺のある紗のように波紋が旅人の船を迎えて。
2岸の柳は朝靄にかすみ、明け方の寒さは少し緩んでいるし、紅い杏の咲く枝先は、いかにも春らしい。

3人生、歓楽の時が少なすぎるのが恨めしい、千金を惜しんで一笑を軽んずることができようか。
4君のために酒杯を持ち、夕陽にささげよう、しばらく花のあいだに残照を留めてくれたまえ。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1縠皺:皺のある紗、波紋のたとえ。 2寒:「雲」に作るテキストもある。 3肯:「豈肯(どうして~ということがあろうか)」の意。 4「為君」二句:花のために夕陽をひきとめる。李商隠「写意」詩に「日向花間留晚照(日は花間に向かい晩照を留む)」とある。

1東城は(しだい)に風光が()くなっていると(おも)う、縠皺(ちりめん)の波紋が客棹(たびのふね)を迎えて。

緑楊(やなぎ)(もや)(むこう)、暁の寒さが(すこ)し、(あか)い杏の枝の(さき)、春の(けはい)(たけなわ)で。

 

浮生(うきよ)では(つね)歓娯(よろこび)の少なさを恨む、千金を(おし)んで一笑を軽ろんずることは(でき)ようか。

4君の為に酒を持ち斜陽(ゆうひ)に勧めよう、(しばら)く花の間()晚照を留めてくれたまえ。


mù lán huā

1 dōng chéng jiàn jué fēng guāng hǎo,hú zhòu bō wén yíng kè zhào.
2 lǜ yáng yān wài xiǎo hán qīng,hóng xìng zhī tóu chūn yì nào.

3 fú shēng cháng hèn huān yú shǎo,kěn ài qiān jīn qīng yí xiào.
4 wèi jūn chí jiǔ quàn xié yáng,qiě xiàng huā jiān liú wǎn zhào.

2022年7月30日土曜日

021鳳簫吟(韓縝)

鳳簫吟  韓縝

1鎖離愁・連綿無際、来時陌上初燻。
2繡幃人念遠、暗垂珠露、泣送征輪。
3長行長在眼、更重重・遠水孤雲。
4但望極楼高、尽日目断王孫。

5消魂。
6池塘別後、曾行処・緑妒軽裙。
7恁時携素手、乱花飛絮裏、緩步香茵。
8朱顔空自改、向年年・芳意長新。
9遍緑野・嬉遊酔眼、莫負青春。

1ほどけぬ別れの愁いが、春の草のようにどこまでも続く。ちょうど道に草が萌える頃。
2閨房の奥で、あの人は遠く旅立つ私のために、ひそかに玉のような涙を流し、車の出立を見送る。
3車は進み、あの人は見つめる、遠く河と雲の重なる果てまで。
4そして高い楼にのぼり、一日中、王孫の帰りを待つのだろう。

5さびしい。
6池のほとりで再会するまで、あの人が独りで歩いたところでは、軽やかな裳に芳草も嫉妬することだろう。
7そのとき私は、あの人の白い手をとって、花びらや柳絮が乱れ散る中、香る草のしとねを歩こう。
8だが私の若々しかった顔は老いて、毎年、芳草だけが新しく生長していることだろう。
9だからいまは酔って、春の野を存分に愛で、短い青春に恥じるまい。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1鎖:結ばれてほどけない。 陌上初燻:「燻」は「薫」と同じ、香ること。江淹「別賦」に「閨中風暖、陌上草薫(閨中 風暖かく、陌上 草薫ず)」とある。 2征輪:遠くへ行く車。 4王孫:自分を指していう。『楚辞』「招隠士」に「王孫遊兮不帰、春草生兮萋萋(王孫 遊んで帰らず、春草 生じて萋萋たり)」とある。 6緑妒軽裙:軽やかな緑の羅の裳の美しさに、芳草も嫉妬するの意。 7恁時:そのとき。 香茵:芳草がしとねのように生えている。「茵」は布団、絨毯。 8「向年年」句:毎年春になると、芳草はいつも新たに生えてくること。「向」は、到る、臨む。

(ほどけな)(わか)れの愁い、連綿と無際(どこまで)も、来た時は(みち)(そば)に初めて(くさめぶ)いて。

繡幃(へや)(あのひと)は遠くを(おも)い、(ひそ)かに珠露(なみだ)を垂らし、泣きながら(たびゆ)(くるま)(みおく)った。

(どこまで)も行き(どこまで)在眼(みつめ)る、更に重重(いくえ)もの遠水(かわ)孤雲(くも)

4但だ望極(ながめや)楼高(たかどの)にて、尽日(ひがな)王孫(あのひと)目断(のぞ)む。

 

消魂(さび)しい。

池塘(いけ)で別れた後、(かつ)(ある)いた(とき)(くさ)が軽やかな(スカート)(ねた)んで

恁時(あのとき)(しろ)い手を()り、()る花と飛ぶ(やなぎのわた)(なか)(ゆっくり)香茵(くさのしとね)を步いた。

朱顔(わかわかしいかお)も空しく自ら改まり、くる年もくる年も、芳意(くさ)だけが(いつ)も新しくなるのを向かえる。

9緑の野を(めぐ)る、嬉んで遊ぼう、酔った眼で、青春に莫負(はじな)いように。


fèng xiāo yín

1 suǒ lí chóu、lián mián wú jì,lái shí mò shàng chū xūn.
2 xiù wéi rén niàn yuǎn,àn chuí zhū lù,qì sòng zhēng lún.
3 cháng xíng cháng zài yǎn,gèng chóng chóng、yuǎn shuǐ gū yún.
4 dàn wàng jí lóu gāo、jìn rì mù duàn wáng sūn.

5 xiāo hún.
6 chí táng bié hòu,céng xíng chù、lǜ dù qīng qún.
7 nèn shí xié sù shǒu、luàn huā fēi xù lǐ,huǎn bù xiāng yīn.
8 zhū yán kōng zì gǎi,xiàng nián nián、fāng yì cháng xīn.
9 biàn lǜ yě、xī yóu zuì yǎn,mò fù qīng chūn.

020蝶恋花(晏殊)

蝶恋花  晏殊

1六曲欄杆偎碧樹、楊柳風軽、展尽黄金縷。
2誰把鈿箏移玉柱、穿簾海燕双飛去。

3満眼遊糸兼落絮、紅杏開時、一霎清明雨。
4濃睡覚来鶯乱語、驚残好夢無尋処。

1曲がりくねる欄干、緑樹の近く、柳は風にそよぎ、若黄色の枝を広げる。
2飾りたてた箏を弾いているのは誰だろう。簾を、燕がふたつながらに飛んでいく。

3どこもかしこも、糸のような細い枝と風に飛ぶ柳のわた。紅く杏の花が咲き、さっと清明の雨が降る。
4ぐっすり眠ってしまった。鶯がそこかしこで鳴いている。よい夢を見ていたのに、どこに探しにいけばいいだろう。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1偎:ぴったりはりつく、くっつく。 黄金縷:若く柔らかい柳の枝。 2鈿箏:金銀や螺鈿を象嵌した箏。 移玉柱:箏を弾くこと。 海燕:燕。春に南方から海を渡ってくることから。海岸の壁に巣を作る燕に似た鳥は、生物学的には別のもの。 3一霎:みじかい時間。

六曲(まがりくね)る欄杆が(みどり)の樹に()い、楊柳(やなぎ)が風に()れ、黄金の(えだ)展尽(のば)す。

2誰が鈿箏(こと)()移玉柱(ひい)ているのだろう、簾を穿つ海燕(つばめ)(ふた)つながら飛んで()く。

 

満眼(みるものすべて)遊糸(ゆれるいと)(そし)落絮(とぶわた)と、(あか)い杏が()く時、一霎(いっとき)の清明の雨。

(ぐっすり)(ねむ)って覚来(めざめ)ると鶯が乱れ()いている、()い夢が驚残(やぶ)られた、(さが)しにゆく(あて)が無い。


dié liàn huā

1 liù qū lán gān wēi bì shù,yáng liǔ fēng qīng,zhǎn jìn huáng jīn lǚ.
2 shéi bǎ diàn zhēng yí yù zhù,chuān lián hǎi yàn shuāng fēi qù.

3 mǎn yǎn yóu mì jiān luò xù,hóng xìng kāi shí,yí shà qīng míng yǔ.
4 nóng shuì jué lái yīng luàn yǔ,jīng cán hǎo mèng wú xún chù.

019踏莎行(晏殊)

踏莎行  晏殊

1小径紅稀、芳郊緑遍、高台樹色陰陰見。
2春風不解禁楊花、濛濛乱撲行人面。

3翠葉蔵鶯、朱簾隔燕、炉香静逐遊糸転。
4一場愁夢酒醒時、斜陽却照深深院。

1小路に花は散って少なく、野原に青く草茂り、高殿が樹々のあいまに見える。
2春風は柳のわたが飛ぶのを禁じることも理解せず、旅人のほおを白く乱れ打つ。

3緑の葉陰にかくれて鶯が鳴き、朱の簾のむこうで燕が巣を作り、炉で香が静かに燃えて、小さな虫の吐く糸を揺らしている。
4酔って愁いの中でいっときの夢を見た。酒がさめ夢から醒めた時、庭の奥深く夕陽が照らしていた。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1紅稀:花が少ないこと。 緑遍:草が多いこと。 陰陰見:ひそかに現れること。 3遊糸:春に小さな虫が吐き、空中にただよう細い糸。

小径(こみち)(はな)(まれ)となり、芳郊()(くさ)(ひろが)り、高台(うてな)樹色(きぎ)陰陰(あいま)に見える。

2春風は楊花(やなぎのわた)を禁ずることを不解(しらな)い、濛濛(はたはた)行人(たびびと)(かお)を乱れ()つ。

 

(みどり)の葉に鶯が(かく)れ、(あか)い簾が燕を隔てて、炉の(こう)が静かに遊糸(むしのいと)()って()れる。

一場(つかのま)の愁いの夢、酒が醒めた時、斜陽(ゆうひ)(おもいがけ)深深(おくふか)(にわ)を照していた。


tà suō xíng

1 xiǎo jìng hóng xī,fāng jiāo lǜ biàn,gāo tái shù sè yīn yīn xiàn.
2 chūn fēng bù jiě jìn yang huā,méng méng luàn pū xíng rén miàn.

3 cuì yè cáng yīng,zhū lián gé yàn,lú xiāng jìng zhú yóu sī zhuàn.
4 yì chǎng chóu mèng jiǔ xǐng shí,xié yáng què zhào shēn shēn yuan.

018踏莎行(晏殊)

踏莎行  晏殊

1祖席離歌、長亭別宴、香塵已隔猶回面。
2居人匹馬映林嘶、行人去棹依波転。

3画閣魂消、高楼目断、斜陽只送平波遠。
4無窮無尽是離愁、天涯地角尋思遍。

1別れの席、別れの歌、長亭の駅で別れの酒宴、花散りおちた土埃を巻き上げながら、旅人はなおも振り返る。
2送る人々の馬が林でいななく。送られる人の船は波間に消えた。

3美しい高殿は静まり、遠く眺めやれば涙がこぼれる、いまはただ夕陽が波を見送るだけ。
4尽きることがない別れの愁い、天涯までも海角までも、私の思いはめぐる。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1祖席:旅立つ人を送るための酒席。 香塵:花が散りおちて地面が香っている。 2棹:櫂と同じ。船を指す。 4尋思:思索、思い。

(みおくり)の席、(わか)れの歌、長亭(えき)での別れの宴、香塵(ちり)に已に隔てられ猶お回面(ふりかえ)る。

(おく)る人たちの匹馬(うま)映林(はやし)で嘶く、行く人の去る(ふね)依波(なみま)()えた。

 

画閣(へや)魂消(しずま)り、高楼(たかどの)で目を()らせば、斜陽(ゆうひ)が只だ平波(なみ)を遠く(みおく)るだけ。

無窮(つきな)無尽(つきな)()(わか)れの愁い、天涯(てんのはて)地角(ちのすみ)までも尋思(おもい)(めぐ)る。


tà suō xíng

1 zǔ xí lí gē,cháng tíng bié yàn,xiāng chén yǐ gé yóu huí miàn.
2 jū rén pǐ mǎ yìng lín sī,xíng rén qù zhào yī bō zhuàn.

3 huà gé hún xiāo,gāo lóu mù duàn,xié yáng zhǐ sòng píng bō yuan.
4 wú qióng wú jìn shì lí chóu,tiān yá dì jiǎo xún sī biàn.

017木蘭花(晏殊)

木蘭花  晏殊

1緑楊芳草長亭路、年少抛人容易去。
2楼頭残夢五更鐘、花底離愁三月雨。

3無情不似多情苦、一寸還成千万縷。
4天涯地角有窮時、只有相思無尽処。

1あの人と別れたあの道に柳が青々と茂り、青春はあっさりと私を捨てて去った。
2夢覚めるころ、たかどのに五更を告げる鐘の音、花に三月の雨が降り、別れの愁いがつのる。

3無情な人は多情な人ほど苦しむまい、私の一寸の心は千万の柳の枝のように乱れているというのに。
4天の果て地の果ても尽きる時があるが、この思いは尽きることがない。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1長亭路:送別する道、古代の駅は「十里一長亭、五里一短亭」(『白帖』)だった。 年少抛人:人が年少(若さ)に捨てられた、つまり少年から老年になったこと。 2五更鐘・三月雨:人を思う時をいう。 一寸:心をいう。 千万縷:思いをいう。

緑楊(やなぎ)芳草(くさ)長亭(えき)の路、年少(わかさ)は人を()てて容易に去る。

(たかどの)(そば)(なご)りの夢、五更の鐘、(はな)(もと)(わか)れの愁い、三月の雨。

 

3無情は多情ほど不似苦(くるしまないよう)だ、一寸のこころは()た千万の(いと)と成ろうに。

天涯(てんのはて)地角(ちのすみ)(きわ)まる時が有る、只有()相思(おもい)だけは尽きる処が無い。


mù lán huā

1 lǜ yáng fang cǎo cháng tíng lù,nián shào pāo rén róng yì qù.
2 lóu tóu cán mèng wǔ gēng zhōng,huā dǐ lí chóu sān yuè yǔ.

3 wú qíng bú sì duō qíng kǔ,yí cùn hái chéng qiān wàn lǚ.
4 tiān yá dì jiǎo yǒu qióng shí,zhǐ yǒu xiāng sī wú jìn chù.

2022年7月29日金曜日

016木蘭花(晏殊)

木蘭花  晏殊

1池塘水緑風微暖、記得玉真初見面。
2重頭歌韻響琤琮、入破舞腰紅乱旋。

3玉鉤欄下香階畔、酔後不知斜日晚。
4当時共我賞花人、点検如今無一半。

1澄んだ池の水に、暖かく風が吹く。美しい女性に初めてあった日の情景をまだ覚えている。
2玉を打ったように響く歌声、激しく舞い乱れる赤い裳裾。

3弓張り月がのぼる欄干、匂いたつ階段、私は酔って、日が沈むのも分からなかった。
4あのとき一緒に花をめでた女性たちは、いまはもう半分もいない。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1玉真:玉人、美しい女性。「真」は神仙。 2重頭:曲の用語で、上下二闋の句式で子音・母音が完全に一致するもの。 琤琮:玉を打つ音。 入破:曲の用語で、楽曲が激しくなる部分。 3玉鉤:弓張り月の比喩。しばしば夕日が沈む前に空にかかる。「玉鉤欄下」は新月がかかる欄干のもと。鮑照「玩月城西門廨中」詩に「始見東南楼、繊繊如玉鉤(始めて東南の楼を見れば、繊繊として玉鉤の如し)」、白居易の「三月三日」詩に「指点楼南玩新月、玉鉤素手両繊繊(楼南を指点して新月を玩ぶ、玉鉤 素手 両つながら繊繊たり)」がある。 4賞花人:歌舞を鑑賞している人。詩では歌舞の女性をしばしば花にたとえる。 点検:数えること。

池塘(いけ)の水は(あお)く風は(かす)かに暖かい、記得(おもいだ)す、玉真(あのひと)が初めて(かお)を見せたとき。

重頭(でだし)歌韻(うた)って琤琮(たま)のように響き、入破(サビ)舞腰()って(もすそ)乱旋(ひら)めいていた。


玉鉤(ゆみはりづき)のかかる(てすり)(もと)(にお)いたつ(きざはし)(そば)、酔った後、斜日(ゆうひ)(しず)むのも不知(しらな)いで。

当時(あのとき)(わたし)と共に花を賞でた人は、点検(かぞえ)てみると如今(いま)一半(はんぶん)(いな)い。


mù lán huā

1 chí táng shuǐ lǜ fēng wēi nuǎn,jì dé yù zhēn chū jiàn miàn.
2 chóng tóu gē yùn xiǎng zhēng cóng,rù pò wǔ yāo hóng luàn xuàn.

3 yù gōu lán xià xiāng jiē pàn,zuì hòu bù zhī xié rì wǎn.
4 dāng shí gòng wǒ shǎng huā rén,diǎn jiǎn rú jīn wú yí bàn.

015木蘭花(晏殊)

木蘭花  晏殊

1燕鴻過後鶯帰去、細算浮生千万緒。
2長於春夢幾多時、散似秋雲無覓処。

3聞琴解佩神仙侶、挽断羅衣留不住。
4勧君莫作独醒人、爛酔花間応有数。

1燕と雁が去って鶯がもどってきた、こまかに数えてみれば、この浮世で千万の出来事があった。
2春の夢と比べてどれほど長かっただろう、秋の雲にも似て再び尋ねるすべもなく別れたのだった。

3琴の音を聴いて佩玉を解いた神仙のような伴侶、薄絹の衣をひいて引き留めることもできずに。
4独り覚醒した人でいるなんてやめたまえ、花間で酔い潰れる、それがきっと定めだ。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2「長於春夢」2句:白居易の「花非花」詩に「来如春夢不多時、去似朝雲無覓処(来ること春夢の如く幾多の時ぞ、去ること朝雲に似て覓むる処なし)」とある。3聞琴:卓文君の故事。寡婦になって実家に戻っていた時、司馬相如の琴の音に誘われ、夜、駆け落ちした。『史記』「司馬相如列伝」に見える。 解佩:江妃(二人の神女)が、江のほとりに遊び、鄭交甫と出会って悦び、佩玉を解いて贈った故事。『列仙伝』に見える。 神仙侶:幸福な伴侶のたとえ。 4独醒人:『楚辞』「漁父」に「屈原曰く、『世を挙げて皆濁り我独り清し、衆人皆酔い我独り醒めたり、是を以て放たらる』」とある。 数:定数、気数、定められた運命。

1燕と(かり)(すぎ)た後、鶯が帰り去る、(こま)かに(かぞえ)てみれば、浮生(このよ)には千万(あまた)(できごと)

2春の夢より()幾多(どれほど)か長い時、秋の雲の(よう)(わか)れた、(たず)ねる処も無く。

 

3琴を聞いて(おびたま)を解いた神仙のような(あのひと)羅衣(うすぎぬ)挽断()いて留不住(とめられな)った。

4君に勧める、独り()めた人と()るのは(やめたま)え、花間に爛酔(でいすい)する、(きっ)とそれが有数(さだめ)だ。


mù lán huā

1 yān hóng guò hòu yīng guī qù,xì suàn fú shēng qiān wàn xù.
2 cháng yú chūn mèng jǐ duō shí,sàn sì qiū yún wú mì chù.

3 wén qín jiě pèi shén xiān lǚ,wǎn duàn luó yī liú bú zhù.
4 quàn jūn mò zuò dú xǐng rén,làn zuì huā jiān yīng yǒu shù.

014清平楽(晏殊)

清平楽  晏殊

1金風細細、葉葉梧桐墜。
2緑酒初嘗人易酔、一枕小窓濃睡。

3紫薇朱槿花残、斜陽却照欄杆。
4双燕欲帰時節、銀屏昨夜微寒。

1ひそやかに秋風が、梧桐の葉を散らす。
2新酒をはじめて飲み、すぐに酔い、小窓のそばでぐっすり眠った。

3紫薇(サルスベリ)や朱槿(ブッソウゲ)は花びらを散らせ、夕陽が欄干を照らす。
4つがいの燕が南方へ帰ろうとする時節、昨夜、部屋の銀の屏風はうっすら寒かった。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1金風:秋風。秋は五行で金に属する。


金風(あきかぜ)細細(サーサー)葉葉(はらはら)と梧桐()る。

緑酒(しんしゅ)を初めて()んで、人は酔い易い、一枕(まくら)小窓(まどべ)濃睡(ぐっすり)と。

 

紫薇(さるすべり)朱槿(ぶっそうげ)は花を()らせ、斜陽(ゆうひ)(おもいがけ)ず欄杆を照らす。

双燕(つばめ)欲帰(かえろ)うとする時節、銀屏(びょうぶ)に昨夜の微寒(うすらざむ)さ。


qīng píng yuè

1 jīn fēng xì xì,yè yè wú tóng zhuì.
2 lǜ jiǔ chū cháng rén yì zuì,yì zhěn xiǎo chuān nóng shuì.

3 zǐ wēi zhū jǐn huā cán,xié yáng què zhào lán gān.
4 shuāng yàn yù guī shí jié,yín píng zuó yè wēi hán.

013清平楽(晏殊)

清平楽  晏殊

1紅箋小字。
2説尽平生意。
3鴻雁在雲魚在水。
4惆悵此情難寄。

5斜陽独倚西楼。
6遥山恰対簾鉤。
7人面不知何処、緑波依旧東流。

1紅い便箋に小さな字。
2平生の思いを書きつくす。
3鴻と雁は雲のなか、魚は水のなか。
4ああ、この思いを伝えるすべがない。

5夕陽の中、ひとり西楼にいる。
6遠く山々が、簾をかける鉤と向かいあう。
7あの人はどこにいるのやら。春の河はあいもかわらず東へと流れる。


蔡義江『宋詞三百首全解』注:
3鴻雁、魚:手紙を運ぶとされる。 7「人面」句:唐・崔護「題都城南荘(都城の南荘に題す)」詩の「去年今日此門中、人面桃花相映紅。人面不知何処在、桃花依旧笑春風(去年の今日 此の門の中、人面 桃花 相い紅を映す。人面は知らず 何処にか在る、桃花 旧に依りて 春風に笑〔さ〕く)」を踏まえる。

 

(あか)(びんせん)に小さな字。

2平生の(きもち)(かた)り尽くす。

鴻雁(かり)は雲のなかに()て、魚は水のそこに()る。

惆悵(かな)しい、()(おもい)を寄せ難い。

 

斜陽(ゆうひ)のなか、(ひと)り西楼で(もた)れる。

6遥か山は(まる)で簾をかける(かぎ)(むか)っているよう。

7あの人の(すがた)は、何処(どこ)不知(わからな)い、緑波(なみ)(むかし)(まま)に東へ流れる。


qīng píng yuè

1 hóng jiān xiǎo zì.
2 shuō jìn píng shēng yì.
3 hóng yàn zài yún yú zài shuǐ.
4 chou chàng cǐ qíng nán jì.

5 xié yáng dú yǐ xī lóu.
6 yáo shān qià duì lián gōu.
7 rén miàn bù zhī hé chù,lǜ bō yī jiù dōng liú.

012浣渓沙(晏殊)

浣渓沙  晏殊

1一向年光有限身。
2等閑離別易銷魂。
3酒筵歌席莫辞頻。

4満目山河空念遠、落花風雨更傷春。
5不如憐取眼前人。

1またたく間の歳月、限りある身。
2安易な別れに魂は消える。
3酒宴を辞する莫かれ。

4目に映る山河、彼方を思えば虚しい。風雨に散る花、さらに春を傷む。
5目の前の人を愛すべし。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1一向:いっとき。短い時間。「一晌」と同じ。 2等閑:安易に。うかうかと。 5「不如」句:元稹の「会真記」にある崔鴬鴬の詩に「還将旧来意、憐取眼前人(還〔ま〕た旧来の意を将〔も〕て、眼前の人を憐取す)」とある。「憐取」は愛すること。

中華書局『宋詞三百首誦読本』注:
5取:語助詞。

一向(またたくま)年光(としつき)、限り有る身。

等閑(あっさり)した離別(わかれ)に、ひとは銷魂(かなし)み易い。

3酒と歌の筵席(せき)を、(しき)りにあるからと(こと)わるのは()めたまえ。

 

4目にうつる(たくさん)の山河に空しく遠くを(おも)い、花を()らせる風雨に更に春を(かな)しむ。

5憐んで眼前の人を()不如(ほうがよ)い。


Huàn xī shā

1 yí xiàng nián guāng yǒu xiàn shēn.
2 děng xián lí bié yì xiāo hún.
3 jiǔ yán gē xí mò cí pín.

4 mǎn mù shān hé kōng niàn yuǎn,luò huā fēng yǔ gèng shāng chūn.
5 bù rú lián qǔ yǎn qián rén.

011浣渓沙(晏殊)

浣渓沙  晏殊

1一曲新詞酒一杯。
2去年天気旧亭台。 
3夕陽西下幾時回。

4無可奈何花落去、似曾相識燕帰来。 
5小園香径独徘徊。

1新しい詞を歌うのを聴きながら、酒を飲んだ。
2去年もこんな天気だった、あの人と過ごした亭台。
3夕陽が西の空に沈む。いつまた会えるか分からない。

4どうすることもできないまま花は散り、昔なじみの燕が戻ってきた。
5小さな庭、花の香りのただよう小路を、私はひとりうろうろと歩く。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
45無可奈何:晏殊の「示張寺丞王校勘(張寺丞王校勘に示す)」詩に「上巳清明仮未開、小園幽径独徘徊。春寒不定斑斑雨、宿酔難禁灧灧杯。無可奈何花落去、似曾相識燕帰来。梁園賦客多風味、莫惜青銭万選才」とあり、三句が一字違うだけで同じ。

1一曲の新しい(うた)に、酒一杯。

2去年とおなじ天気(そら)(なじみ)亭台(あずまや)

3夕陽が西に(しず)む、幾時(いつ)また()えるだろう。

 

無可奈何(どうしようもな)く花は落去()り、(かつ)相識()っていた(よう)な燕が帰って来る。

小園(にわ)香径(こみち)を、わたしは独りで徘徊(うろうろ)する。


Huàn xī shā

1 yì qǔ xīn cí jiǔ yì bēi.
2 qù nián tiān qì jiù tíng tái.
3 xī yáng xī xià jǐ shí huí.

4 wú kě nài hé huā luò qù,sì céng xiāng shí yàn guī lái.
5 xiǎo yuán xiāng jìng dú pái huái.