2022年9月30日金曜日

210秋霽(史達祖)

秋霽  史達祖

1江水蒼蒼、望倦柳愁荷、共感秋色。
2廃閣先涼、古簾空暮、雁程最嫌風力。
3故園信息、愛渠入眼南山碧。
4念上国、誰是・膾鱸江漢未帰客。

5還又歳晚、瘦骨臨風、夜聞秋声、吹動岑寂。
6露蛩悲・青灯冷屋、翻書愁上鬢毛白。
7年少俊遊渾断得。
8但可憐処、無奈苒苒魂驚、采香南浦、翦梅煙駅。

1川は青々、くたびれた柳と悲しげなハスを眺め、共に秋の気配を感じる。
2すたれた堂がまず涼しくなり、古びた簾がむなしく暮れて、雁の旅は風が強くなることを最も嫌う。
3故郷のたより、あの目に入る南山の緑を愛する。
4都を思う、誰だろう、ふるさとの味のある江漢に帰らない旅人は。

5またも歳の暮れ、痩せた身体で風に臨み、夜に秋の声を聞き、寂しさを吹き動かされる。
6露にぬれてコオロギは悲しげ、青く灯のともる冷たい部屋、書を広げれば愁いで鬢が白くなる。
7若いころの遊びはすべて断たれた。
8ただ悲しいところだけ、どうしようもなくやわな魂を驚かせる、香り草を南浦に採り、梅を靄のたちこめる駅で切る。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
3南山:杭州西湖に南北ふたつの山があり、南山は南屏山とも呼ばれる。 4膾鱸:晋の張翰が故郷を思った故事。辛棄疾174「水龍吟」の「鱸魚堪膾」の注、参照。

江水(かわ)蒼蒼(あおあお)(くたび)れた柳と(かな)しげな(ハス)(なが)め、共に秋の(けはい)を感じる。

(すた)れた(たかどの)が先ず涼しくなり、古びた簾が空しく暮れて、雁の(たび)は風が(つよ)くなることを最も嫌う。

故園(ふるさと)信息(たより)()の眼に入る南山の(みどり)を愛する。

上国(みやこ)(おも)う、誰是(だれ)だろう、膾鱸(ふるさとのあじ)の江漢に未帰(かえらな)(たびびと)は。

 

()た又た歳の(くれ)、瘦せた(からだ)で風に臨み、夜に秋の声を聞き、岑寂(さびし)さを吹き動かす。

6露に(こおろぎ)は悲しげ、青い灯の冷たい(へや)、書を(ひら)けば愁いが鬢毛(びん)を白く(そめ)る。

年少(わかいころ)俊遊(あそび)(すべ)断得(たた)れた。

()可憐(かな)しい(ところ)だけ、無奈(どうしようもな)苒苒(やわ)な魂を驚かせる、(かおりぐさ)を南浦に()り、梅を(けぶ)る駅に()る。


qiū jì

1 jiāng shuǐ cāng cāng,wàng juàn liǔ chóu hé,gòng gǎn qiū sè.
2 fèi gé xiān liáng,gǔ lián kòng mù,yàn chéng zuì xián fēng lì.
3 gù yuán xìn xī,ài qú rùyǎn nán shān bì.
4 niàn shàng guó,shuí shì、kuài lú jiāng hàn wèi guī kè.

5 hái yòu suì wǎn,shòu gǔ lín fēng,yè wén qiū shēng,chuī dòng cénj ì.
6 lù qióng bēi、qīng dēng lěng wū,fān shū chóu shàng bìn máo bái.
7 nián shào jùn yóu hún duàn dé.
8 dàn kě lián chǔ,wú nài rǎn rǎn hún jīng,cǎi xiāng nán pǔ,jiǎn méi yān yì.

209三姝媚(史達祖)

三姝媚  史達祖

1煙光搖縹瓦、望晴檐多風、柳花如酒。
2錦瑟横床、想涙痕塵影、鳳弦常下。
3倦出犀帷、頻夢見・王孫驕馬。
4諱道相思、偸理綃裙、自驚腰衩。

5惆悵南楼遙夜、記翠箔張灯、枕肩歌罷。
6又入銅駝、遍旧家門巷、首詢声価。
7可惜東風、将恨与閑花俱謝。
8記取崔徽模様、帰来暗写。

1靄と光が瑠璃瓦に揺れる、見渡す、晴れたひさしに豊かな風、柳のわたは注ぐよう。
2瑟は床に置かれている、思う、涙の痕と塵の影、鳳の弦は常に下ろされていたのかと。
3部屋から出るのもけだるく、しきりに王孫(私)の帰りを夢見ていただろう。
4思いを言うのは憚られ、こっそりと絹のスカートを整えれば、痩せたことに独り驚く。

5南楼での遠い夜を悲しむ、思い出す、カーテンと灯火、私の肩を枕に歌い終えた。
6また通りに入り、昔の家々をめぐり、まずあの人の消息を訊ねる。
7惜しむらくは春風が、恨みを花と一緒に散らせたこと。
8崔徽のようなあの人の姿を覚えて、帰って来てひそかに写そう。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1縹瓦:瑠璃瓦。 2塵影:塵のあと。王褒「長安道」に「樹陰連袖色、塵影染衣風(樹陰 袖色に連なり、塵影 衣風に染まる)」とある。 3犀帷:犀の角で飾ったカーテン。 王孫:帰ってきて欲しい人の代名詞。 4腰衩:腰周りと解した。「衩」は衣の下端の両脇を裂いて縫ったもの。 6銅駝:洛陽の通りの名前。借りて臨安の通りをいう。 声価:ここは関係のある妓女の消息をいう。 8崔徽:元稹「崔徽歌」序に「崔徽は河中府の娼妓である。裴敬中が興元の幕として蒲州に使いした時に、崔徽と知り合って数ヶ月過ごした。裴敬中が帰る時に、ついて行けないことを恨みに思い、病気になった。丘夏に頼んで肖像画を描いてもらい、裴敬中に『崔徽は画中の人に及ばず、あなたのために死にます』といって発狂して死んだ。『麗情集』に見える。

(もや)と光が縹瓦(るりがわら)に搖れる、(みわた)す、晴れた(ひさし)(ゆた)かな風、柳花(やなぎのわた)(そそ)(よう)

錦瑟(こと)は床に()かれている、想う、涙の痕と塵の影、鳳の弦は常に下ろされていたのかと。

犀帷(へや)から出るのも(ものう)く、(しきり)王孫(わたし)驕馬(かえり)を夢見ていただろう。

相思(おもい)()うのは(はばか)られ、(こっそり)(きぬ)(スカート)(ととの)えれば(やせ)たことに(ひと)り驚く。

 

5南楼での(とお)い夜を惆悵(かな)しむ、(おもいだ)す、翠箔(カーテン)張灯(ともしび)、肩を枕に歌い()えた。

()銅駝(とおり)に入り、旧家門巷(むかしのいえいえ)(めぐ)り、()声価(しょうそく)(たず)ねる。

可惜(おしむら)くは東風(はるかぜ)が、恨み()閑花(はな)()(いっしょ)()らせたこと。

崔徽(あのひと)模様(すがた)記取(おぼえ)て、帰って来て(ひそ)かに写そう。


sān shū mèi

1 yān guāng yáo piǎo wǎ,wàng qíng yán duō fēng,liǔ huā rú jiǔ.
2 jǐn sè héng chuáng,xiǎng lèi hén chén yǐng,fèng xián cháng xià.
3 juàn chū xī wéi,pín mèng jiàn、wáng sūn jiāo mǎ.
4 huì dào xiāng sī,tōu lǐ xiāo qún,zì jīng yāo chài.

5 chou chàng nán lóu yáo yè,jì cuì bó zhāng dēng,zhěn jiān gē bà.
6 yòu rù tóng tuó,biàn jiù jiā mén xiàng,shǒu xún sheng jià.
7 kěxī dōng fēng,jiāng hèn yǔ xián huā jù xiè.
8 jì qǔ cuī huī mú yàng,guī lái àn xiě.

208喜遷鶯(史達祖)

喜遷鶯  史達祖

1月波疑滴、望玉壺天近、了無塵隔。
2翠眼圏花、冰糸織練、黄道宝光相直。
3自憐詩酒瘦、難応接許多春色。
4最無頼、是随香趁燭、曾伴狂客。

5蹤跡、漫記憶、老了杜郎、忍聴東風笛。
6柳院灯疏、梅庁雪在、誰与細傾春碧。
7旧情拘未定、猶自学・当年遊歴。
8怕万一、誤玉人・夜寒簾隙。

1月の光はしずくに似て、月を見上げると天は近く、塵や埃が少しもないかのよう。
2さまざまな花灯籠、冰の糸で絹を織り、御成道はキラキラと照らされている。
3独り憐れむ、詩と酒で瘦せて、あまたの春の景色を迎え難いことを。
4とりわけつまらないこと、それは香と燭を持って、かつては狂客を伴ったこと。

5どこだったか、むやみに思い出す、杜さん(私)は老いて、春風に中で笛を聴くのがつらい。
6柳の庭に灯はまばら、梅の建物に雪は残り、誰が一緒に春の酒を味わってくれようか。
7昔の思いはつなぎ止められない、まだ独りあの時遊んだところをなぞる。
8万一を恐れている、寒い夜に簾の隙からあの人がのぞいているのに、見過ごすのではないか、と。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1玉壺:月をいう。 2翠眼圏花:未詳。唐圭璋『宋詞三百首箋注』に「さまざまな花灯籠か」とあり、いまそれに従う。 黄道:古代の人は太陽が地球を回って運行していると考え、その軌道を黄道と呼んだ。また日が常に皇帝に喩えられることから、皇帝の巡遊する道も黄道という。 相直:相対する。 5杜郎:杜牧。ここは借りて作者をいう。 6春碧:酒をいう。緑色をした酒。

1月の(ひかり)(しずく)()て、玉壺(つき)(みあげ)ると天は近く、塵隔(ちりほこり)了無(すこしもな)いかのよう。

翠眼(さまざま)圏花(はなどうろう)、冰の糸で(きぬ)を織り、黄道(おなりみち)宝光(きらきら)相直(てら)されている。

(ひと)り憐れむ、詩と酒で瘦せて、許多(あまた)の春の(けしき)応接(むか)え難いことを。

4最も無頼(つまらな)いこと、(それ)は香と燭を随趁()って、(かつ)ては狂客を伴ったこと。

 

蹤跡(どこだったか)(むやみ)記憶(おもいだ)す、杜郎(わたし)老了()いて、東風(はるかぜ)に笛を聴くのが(つら)い。

6柳の(にわ)に灯は(まば)ら、梅の(たてもの)に雪は(のこ)り、誰が(いっしょ)に春の(さけ)細傾(あじわ)うか。

(むかし)(おもい)拘未定(つなぎとめられな)い、()(ひと)当年(あのとき)の遊んだ(ところ)(なぞ)る。

8万一を(おそ)れて、寒い夜に簾の隙にいる玉人を(みすご)すことを。


xǐ qiān yīng

1 yuè bō yí dī,wàng yù hú tiān jìn,le wú chén gé.
2 cuì yǎn quān huā,bīng mì zhī liàn,huáng dào bǎo guāng xiāng zhí.
3 zì lián shī jiǔ shòu,nán yìng jiē xǔ duō chūn sè.
4 zuì wú lài,shì suí xiāng chèn zhú,céng bàn kuáng kè.

5 zōng jì,màn jì yì,lǎo liǎo dù láng,rěn tīng dōng fēng dí.
6 liǔ yuàn dēng shū,méi tīng xuě zài,shéi yǔ xì qīng chūn bì.
7 jiù qíng jū wèi dìng,yóu zì xué、dāng nián yóu lì.
8 pà wàn yī,wù yù rén、yè hán lián xì.

207東風第一枝(史達祖)

東風第一枝  史達祖

春雪

1巧沁蘭心、偸黏草甲、東風欲障新暖。
2漫疑碧瓦難留、信知暮寒猶浅。
3行天入鏡、做弄出・軽松繊軟。
4料故園・不巻重簾、誤了乍来双燕。

5青未了・柳回白眼、紅欲断・杏開素面。
6旧遊憶著山陰、後盟遂妨上苑。
7寒炉重熨、便放漫・春衫針線。
8怕鳳靴・挑菜帰来、万一灞橋相見。

春の雪

1巧みに蘭の芯に沁み、こっそりと草の葉に貼りつき、春風は生じたばかりの暖かさを遮ろうとする。
2どうやら、瓦には留まりづらいようだ、暮れの寒さはまだ浅いと十分に分かる。
3空を行き池に入り、軽くゆったりと細く柔らかく、降っている。
4きっと故郷の庭では、幾重もの簾を巻かないで、来たばかりのつがいの燕が巣作りするのを邪魔しているだろう。

5青く続いていた柳は白い芽にもどり、赤さを断たれようとして杏は白い顔をのぞかせる。
6昔の遊び、山陰の王子猷を思う、後の誓い、遂に司馬相如のように苑に行くのを妨げる。
7寒々した炉を再び温めると、そのままゆっくりになる、春の衣を縫う針と糸。
8心配する、あの人が菜をつんで帰って来るとき、もしや灞橋で雪に会いやしまいか、と。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
3行天入鏡:韓愈「春雪」詩に「入鏡鸞窺沼、行天馬度橋(鏡に入って鸞は沼を窺い、天を行きて馬は橋を度る)」とある。 5青未了:青色が続くさま。杜甫「望岳」詩に「斉魯青未了(斉齊 靑未だ了らず)」とある。 6「旧遊」句:『世説新語』「任誕」に「王子猷は山陰にいて、夜に大雪が降り……、戴安道に会いたくなった。この時、戴安道は剡にいたので、夜に小船に乗って行き、一晩かかってやっと着いたが、門前で引き返した。ある人が理由を尋ねると、興に乗じて来ただけだから、興が尽きたら帰るまでのこと、会う必要はあるまい、と答えた」とある。 8挑菜:二月二日は挑菜節(仕女が郊外へ出て菜を摘む節句)。 灞橋:陝西長安県東。鄭綮はかつて「詩思は灞橋の風雪の中、驢子の上に在り、此れ何を以て之を得ん」と言った。

春の雪

 

1巧みに蘭の(しん)に沁み、(こっそり)草の()()りつき東風(はるかぜ)は新しい暖かさを障ぎろう()とする。

漫疑(どうやら)碧瓦(かわら)には留まり(づら)いようだ、暮れの寒さは()だ浅いと(じゅうぶん)()かる。

(そら)を行き(いけ)に入り、軽く(ゆったり)(ほそ)く軟かく、做弄出()ている。

(きっ)(ふるさと)(にわ)では、(いくえ)もの簾を不巻(まかな)いで、来た(ばか)りの双燕(つがいのつばめ)誤了(じゃま)している。

 

5青く未了(つづ)く柳は白い()(もど)り、(あか)さを断たれよう()として杏は(しろ)(かお)(のぞか)せる。

(むかし)の遊び、山陰を憶著(おも)う、後の(ちか)い、遂に苑に()くを妨げる。

7寒々した炉を(ふたた)(あたた)めると、便(そのま)放漫(ゆっくり)と、春の(ころも)の針と(いと)

(しんぱい)する、鳳靴(あのひと)が菜を()んで帰って来るとき、万一(もし)や灞橋で相見()いやしまいか、と。


dōng fēng dì yī zhī

chūn xuě

1 qiǎo qìn lán xīn,tōu nián cǎo jiǎ,dōng fēng yù zhàng xīn nuǎn.
2 màn yí bì wǎ nán liú,xìn zhī mù hán yóu qiǎn.
3 xíng tiān rù jìng,zuò nòng chū、qīng sōng xiān ruǎn.
4 liào gù yuán、bù juǎn zhòng lián,wù liǎo zhà lái shuāng yàn.

5 qīng wèi liǎo、liǔ huí bái yǎn,hóng yù duàn、xìng kāi sù miàn.
6 jiù yóu yì zhe shān yīn,hòu méng suì fáng shàng yuàn.
7 hán lú zhòng yùn,biàn fàng màn、chūn shān zhēn xiàn.
8 pà fèng xuē、tiāo cài guī lái,wàn yī bà qiáo xiāngj iàn.

206双双燕(史達祖)

双双燕  史達祖

詠燕

1過春社了、度簾幕中間、去年塵冷。
2差池欲住、試入旧巣相並。
3還相雕梁藻井、又軟語・商量不定。
4飄然快払花梢、翠尾分開紅影。

5芳径、芹泥雨潤、愛貼地争飛、竟夸軽俊。
6紅楼帰晚、看足柳昏花暝。
7応自棲香正穏、便忘了・天涯芳信。
8愁損翠黛双蛾、日日画欄独憑。

燕を詠む

1春社を過ぎて、簾やカーテンの間を渡ると、去年の塵が冷たい。
2尾羽を休ませようとして、古巣に並んで入ろうとする。
3また梁と天井を見て、また柔らかい言葉で相談すること、やまない。
4ふいにさっと花咲く梢をかすめて、尾は花影に分け入る。

5香る小径、芹の泥は雨に潤い、好んで地に貼りつくように争って飛び、そして身軽さを誇る。
6たかどのに遅く帰ってくる、暗い柳と花を見尽くして。
7きっと自分たちの心地よい寝床でゆったりして、すぐに天の果ての手紙は忘れてしまうだろう。
8やつれたあの人は、くる日もくる日も手すりに独りもたれている。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1春社:社日は農事の祭祀の日、春と秋がある。春社は穀物が豊かであることを祈り、秋社は願いがかなったことを神に感謝する。春の社日は春分の前後にふつう来るが、そのころ燕が飛んできて、秋社の頃に去る。 度簾幕中間:『青箱雑記』に晏殊の断句「楼台側畔楊花過、簾幕中間燕子飛(楼台の側畔に楊花過ぎ、簾幕の中間に燕子飛ぶ)」が引用されている。 2差池:『詩経』邶風「燕燕」に「燕燕于飛、差池其羽(燕燕 于きて飛び、其の羽を差池す)」とあり、箋に「其の尾翼を張舒するを謂う」とある。 3相:細かに見る。「相面」「星相」の相。 藻井:井桁の形に装飾し、菱やハスや藻を描いた天井板。火災を押さえる意味が込められている。 5芹泥:杜甫「徐歩」詩に「芹泥随燕嘴(芹泥 燕嘴に随う)」とある。

燕を詠む

 

1春社を過了(すぎ)て、簾幕の中間を(わた)ると、去年の塵が冷たい。

差池(おばね)(やす)ませよう()として、旧巣(ふるす)相並(なら)んで試入(はいってみ)る。

()雕梁(はり)藻井(てんじょう)()て、()(やわらかい)(ことば)商量(そうだん)すること不定(やまな)い。

飄然(ふい)(さっ)と花さく梢を(かす)めて、翠尾()(はな)(かげ)分開(わけい)る。

 

(かお)(こみち)、芹の泥は雨に潤い、(この)んで地に貼りつき争って飛び、(そし)軽俊(みがる)さを(ほこ)る。

紅楼(たかどの)(おそ)く帰る、昏暝(くら)い柳と花を看足(みつく)して。

(きっ)(じぶん)たちの棲香(ここちよいねどこ)正穏(ゆったり)して、便(すぐ)天涯(てんのはて)芳信(てがみ)忘了(わすれてしま)う。

愁損(やつれ)翠黛双蛾(あのひと)は、くる日もくる日も画欄(てすり)に独り(もた)れる。


shuāng shuāng yàn

yǒng yàn

1 guò chūn shè liǎo,dù lián mù zhōng jiān,qù nián chén lěng.
2 chā chí yù zhù,shì rù jiù cháo xiāng bìng.
3 hái xiāng diāo liáng zǎo jǐng,yòu ruǎn yǔ、shāng liang bú dìng.
4 piāo rán kuài fú huā shāo,cuì wěi fēn kāi hóng yǐng.

5 fāng jìng,qín ní yǔ rùn,ài tiē dì zhēng fēi,jìng kuā qīng jùn.
6 hóng lóu guī wǎn,kàn zú liǔ hūn huā mìng.
7 yìng zì qī xiāng zhèng wěn,biàn wàng liǎo、tiān yá fāng xìn.
8 chóu sǔn cuì dài shuāng é,rì rì huà lán dú píng.

205綺羅香(史達祖)

綺羅香  史達祖

詠春雨

1做冷欺花、将煙困柳、千里偸催春暮。
2尽日冥迷、愁裏欲飛還住。
3驚粉重・蝶宿西園、喜泥潤・燕帰南浦。
4最妨他・佳約風流、鈿車不到杜陵路。

5沈沈江上望極、還被春潮晚急、難尋官渡。
6隠約遙峰、和涙謝娘眉嫵。
7臨断岸・新緑生時、是落紅・帯愁流処。
8記当日・門掩梨花、翦灯深夜語。

春の雨を詠む

1寒くなって花を欺き、靄で柳を眠らせ、千里もこっそりと春の暮れを促す。
2ひがなぼんやりと、愁いのうちで飛ぼうとしては、また留まる。
3粉が重くなったのに驚いて、蝶は西園で宿り、泥が潤うのを喜んで、燕は南浦に帰る。
4とりわけ雨が邪魔するのは、約束した風流な男女、車は杜陵の路まで行けない。

5静かな川のほとりで眺めやれば、また春の潮が晚に急なせいで、渡し場をさがすのが難しい。
6ひっそりした遠い峰、謝娘の眉が涙を含むかのような。
7断崖に近づくと、新緑が生える時、それは散った花びらが愁いを帯びて流れる処。
8思い出す、あの日、門は梨の花で閉ざされ、灯の芯を切りながら深夜まで語った。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
4鈿車:金の花で飾った車。 杜陵:今の陝西長安県東南。 5春潮晚急:韋応物「滁州西澗」詩に「春潮帯雨晩来急、野渡無人舟自横(春潮 雨を帯て晩来急に、野渡 人無くして  舟 自ら橫たう)」とある。 官渡:役所が船を置いて人を渡らせるところ。 6謝娘:広く唐宋時代の女子の名。 眉嫵:眉の化粧、眉の形。「嫵」は「嫵媚(美しくなまめかしい)」の派生義。

 

春の雨を詠む

 

(さむ)()って花を(あざむ)き、(もや)()柳を(ねむ)らせ、千里も(こっそり)春の暮れを(うなが)す。

尽日(ひがな)冥迷(ぼんやり)と、愁いの(うち)で飛ぼう()としては()(とどま)る。

3粉が重くなったのに驚いて、蝶は西園で宿り、泥が潤うのを喜んで、燕は南浦に帰る。

4最も(あめ)(じゃま)するのは、佳約(やくそく)した風流、鈿車(くるま)は杜陵の路に不到(つけな)い。

 

沈沈(しずか)(かわ)(ほとり)望極(ながめや)れば、()た春の潮が晚に急なせい()で、官渡(わたしば)(さが)すのが難しい。

隠約(ひっそり)した(とお)い峰、謝娘の(まゆ)が涙を(ふく)む。

断岸(だんがい)(ちかづ)くと、新緑が生える時、(それ)()った(はなびら)が愁いを帯びて流れる処。

(おもいだ)す、当日(あのひ)、門は梨の花で(とざ)され、灯を翦りながら深夜まで語った。


qǐ luó xiāng

yǒng chūn yǔ

1 zuò lěng qī huā,jiāng yān kùn liǔ,qiān lǐ tōu cuī chūn mù.
2 jìn rì míng mí,chóu lǐ yù fēi hái zhù.
3 jīng fěn zhòng、dié sù xī yuán,xǐ ní rùn、yàn guī nán pǔ.
4 zuì fáng tā、jiā yuē fēng liú,diàn chē búdào dù líng lù.

5 chén chén jiāng shàng wàng jí,hái bèi chūn cháo wǎn jí,nán xún guān dù.
6 yǐn yuē yáo fēng,hé lèi xiè niáng méi wǔ.
7 lín duàn àn、xīn lǜ shēng shí,shì luò hóng、dài chóu liú chǔ.
8 jì dāng rì、mén yǎn lí huā,jiǎn dēng shēn yè yǔ.

2022年9月29日木曜日

204宴山亭(張鎡)

宴山亭  張鎡

1幽夢初回、重陰未開、暁色催成疏雨。
2竹檻気寒、蕙畹声搖、新緑暗通南浦。
3未有人行、才半啓・回廊朱戸。
4無緒。
5空望極霓旌、錦書難拠。

6苔径追憶曾遊、念誰伴、秋千彩縄芳柱。
7犀奩黛巻、鳳枕雲孤、応也幾番凝佇。
8怎得伊来、花霧繞・小堂深処。
9留住。
10直到老・不教帰去。

1ひそかな夢からちょうど覚めて、厚い雲はまだ散らない、暁の光の中、いっときの雨が降る。
2竹の手すりは空気が冷たく、かおり草の畑は音たてて揺れ、新緑が南浦に暗く通じる。
3路行く人はまだいない、やっと回廊の扉を半ば開く。
4落ち着かない。
5むなしく雲を眺めやる、手紙はあてもない。

6苔むす小径は追憶のかつて遊んだところ、思い出す、誰が一緒だったか、ブランコの縄を結んだ柱。
7犀の角の化粧箱に黛は収められ、鳳の枕に独り寝して、きっとまたしばらく佇んでいるだろう。
8どうすればあの人は来てくれるだろう、花の香りがめぐる、ちいさな建物の奥に。
9留めよう。
10老いるまでずっと、去らせないで。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2蕙畹声搖:蘭蕙のはたけが風雨で音を立てていること。古代は十畝を「畹」といった。 5霓旌:旗のような雲。宋玉「高唐賦」に「霓為旌、翠為蓋(霓を旌と為し、翠を蓋と為す)」とある。 7巻:おさめる、おさまる。 雲:雲鬢。

 

(ひそ)かな夢から(ちょう)()めて、(あつ)(くも)未開(まだちらな)い、暁の(ひかり)のなか(いっとき)の雨が催成()る。

2竹の(てすり)(くうき)(つめ)たく、(かおりぐさ)(はたけ)(おと)たてて搖れ、新緑が南浦に暗く通じる。

(みちゆ)く人は未有(まだいな)い、(やっ)回廊の朱戸(とびら)半ば(ひら)

無緒(おちつかな)い。

5空しく霓旌(くも)望極(ながめや)る、錦書(てがみ)難拠(あてもな)い。

 

6苔むす(みち)は追憶の(かつ)て遊んだところ、(おもいだ)す、誰が(いっしょ)か、秋千(ブランコ)彩縄(なわ)芳柱(はしら)

7犀の(はこ)に黛は(おさ)められ、鳳の枕に雲孤(ひとりね)して、(きっ)()幾番(しばら)凝佇(たたず)んでいる。

怎得(どうす)れば(あのひと)は来てくれるだろう、花の(かおり)(めぐ)る、小さな(たてもの)深処(おく)に。

留住(とどめ)よう。

10老いるまで()(ずっ)と、帰去()()()いで。


yàn shān tíng

1 yōu mèng chū huí,zhòng yīn wèi kāi,xiǎo sè cuī chéng shū yǔ.
2 zhú jiàn qì hán,huì wǎn shēng yáo,xīn lǜ àn tōng nán pǔ.
3 wèi yǒu rén xíng,cái bàn qǐ、huí láng zhū hù.
4 wú xù.
5 kōng wàng jí ní jīng,jǐn shū nán jū.

6 tái jìng zhuī yì céng yóu,niàn shéi bàn,qiū qiān cǎi shéng fāng zhù.
7 xī lián dài juǎn,fèng zhěn yún gū,yìng yě jǐ fān níng zhù.
8 zěn děi yī lái,huā wù rào、xiǎo táng shēn chù.
9 liú zhù.
10 zhí dào lǎo、bù jiāo guī qù.

203満庭芳(張鎡)

満庭芳  張鎡

促織児

1月洗高梧、露漙幽草、宝釵楼外秋深。
2土花沿翠、螢火墜牆陰。
3静聴寒声断続、微韻転・淒咽悲沈。
4争求侶・殷勤勧織、促破暁機心。

5児時曾記得、呼灯灌穴、斂歩随音。
6任満身花影、猶自追尋。
7携向華堂戯鬥、亭台小・籠巧妝金。
8今休説、従渠床下、涼夜伴孤吟。

コオロギ

1月の光が高くのびた梧を洗い、露は深い草を濡らし、宝釵楼の向こうで秋は深まっている。
2苔が緑に広がり、蛍がかきねの陰に下りる。
3寒々しい声が途切れがちに鳴くのを静かに聴く、かすかな音はたちまちむせぶように悲しげに。
4どうして連れ合いを求めてねんごろに機織りを勧めているのだろうか、夜明けまで心を尽くすよう促している。

5子どもの時、かつてこんなことがあった、灯を持ってこさせて穴に水を注ぎ、抜き足で鳴き声を追った。
6全身を花の影に委ねて、なお独りで追いかけた。
7コオロギを持って堂で闘わせた、うてなのような小さいカゴ、巧みに金で飾られた。
8今はやめよう、この床下から、冷たい夜に、私につきあって寂しく鳴いている。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1漙:音は「団」、露が多いさま。『詩経』鄭風「野有蔓草」に「野有蔓草、零露漙兮(野に蔓草有り、零露漙たり)」とある。 宝釵楼:もとは咸陽の古跡、ここは借りて臨安の張達可の家の楼台をいう。 2土花:青い苔。

促織児(コオロギ)

 

1月は高い梧を洗い、露は(ふか)い草を()らし、宝釵楼の(むこう)で秋は深まる。

土花(こけ)(みどり)沿(ひろ)がり、螢火(ほたる)が牆の陰に()りる。

3静かに聴く、(つめた)い声は断続(とぎれ)がち、微韻(かすかなおと)(たちま)淒咽(むせ)ぶように悲沈(かな)しげに。

(どうし)(つれあい)を求めて殷勤(ねんごろ)(はたおり)を勧めるのか、破暁(よあけ)まで心を(つく)すよう促している。

 

(こども)の時、(かつ)記得(おぼえ)ている、灯を(もってこ)させて穴に(みずそそ)ぎ、斂歩(ぬきあし)で音を()った。

6満身を花の影に(ゆだ)ねて、()(ひと)りで追尋(おいかけ)た。

()って華堂(たかどの)()戯鬥(たたか)わせた、亭台(うてな)の小さい籠は巧みに金を妝っていて。

8今は休説(やめよ)()の床下から()(つめ)たい夜、(つきあ)って(さび)しく()いている。


mǎn tíng fāng

cù zhī ér

1 yuè xǐ gāo wú,lù tuán yōu cǎo,bǎo chāi lóu wài qiū shēn.
2 tǔ huā yán cuì,yíng huǒ zhuì qiáng yīn.
3 jìng tīng hán shēng duàn xù,wēi yùn zhuàn、qī yè bēi shěn.
4 zhēng qiú lǚ、yīn qín quàn zhī,cù pò xiǎo jī xīn.

5 ér shí céng jì dé,hū dēng guàn xué,liǎn bù suí yīn.
6 rèn mǎn shēn huā yǐng,yóu zì zhuī xún.
7 xié xiàng huá táng xì dòu,tíng tái xiǎo、lǒng qiǎo zhuāng jīn.
8 jīn xiū shuō,cóng qú chuáng xià,liáng yè bàn gū yín.

2022年9月28日水曜日

202風入松(兪国宝)

風入松  兪国宝

1一春長費買花銭、日日酔湖辺。
2玉驄慣識西冷路、驕嘶過・沽酒楼前。
3紅杏香中簫鼓、緑楊影裏秋千。

4暖風十里麗人天、花圧鬢雲偏。
5画船載取春帰去、余情付・湖水湖煙。
6明日重扶残酔、来尋陌上花鈿。

1春の日に花を買う金をたくさん費やして、日々湖辺で酔う。
2馬は西冷の路に慣れ、いなないて酒店を過ぎた。
3赤い杏の香りの中の簫鼓、緑の柳の陰のブランコ。

4暖かい風が吹く十里の堤、娘たちがくりだす空、花は髪をおさえて傾く。
5船に取って載せよう、春が去ろうとしている、名残りは湖の水と靄に与えて。
6明日ふたたび二日酔いでふらふらしながら、路に堕ちたかんざしを探しに来よう。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2玉驄:白馬。 西冷:西湖の橋の名。孤山西麓と棲霞峰の間にあり、蘇小小が同心を結んだ(愛を誓った)ところ。「西冷」を「西湖」とするテキストもあるが、上の句と重複する。

一春(はるのひ)に花を買う(かね)(おお)く費やし、日日湖辺で酔う。

(うま)西冷慣識()れて、驕嘶(いなな)いて沽酒楼(さかや)の前を過ぎた。

紅杏(あんず)の香りの中の簫鼓、緑楊(やなぎ)影裏(かげ)秋千(ブランコ)

 

4暖かい風の十里、麗人(むすめたち)(そら)、花は鬢雲(かみ)(おさ)えて(かたむ)く。

画船(ふね)に取って載せよう、春が帰去()ろうとしている、余情(なごり)湖水(みずうみ)湖煙(もや)(あた)えて。

6明日(ふたた)残酔(ふつかよい)(ふらふら)しながら、陌上(みち)花鈿(かんざし)来尋(さが)そう。


fēng rù song

1 yì chūn cháng fèi mǎi huā qián,rì rì zuì hú biān.
2 yù cōng guàn shí xī lěng lù,jiāo sī guò、gū jiǔ lóu qián.
3 hóng xìng xiāng zhōng xiāo gǔ,lǜ yáng yǐng lǐ qiū qiān.

4 nuǎn fēng shí lǐ lì rén tiān,huā yā bìn yún piān.
5 huà chuán zǎi qǔ chūn guī qù,yú qíng fù、hú shuǐ hú yān.
6 míng rì zhòng fú cán zuì,lái xún mò shàng huā diàn.

201木蘭花(厳仁)

木蘭花  厳仁

春思

1春風只在園西畔、薺菜花繁蝴蝶乱。
2冰池晴緑照還空、香径落紅吹已断。

3意長翻恨遊糸短、尽日相思羅帯緩。
4宝奩如月不欺人、明日帰来君試看。

春の思い

1春風はただ庭の西にいて、なずなの花繁り蝴蝶が乱れ飛ぶ。
2冰のはった池は晴れて青く照らされ、また明らか、小径に散った花びらはすでに風に吹き尽くされて。

3私の思いは続いて恨みに変わったのに、風にゆれる蜘蛛の糸は短い、日がな焦がれて帯は緩くなった。
4化粧箱の鏡は月のように人を欺かない、明日帰って来たらあなたも試しに見てごらんなさい。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2晴緑:池の水をいう。 4奩:化粧の鏡箱。

 

春の思い

 

1春風は()(にわ)西畔(にし)()て、薺菜(なずな)の花が繁り蝴蝶(ちょう)()ぶ。

(こお)った池は晴緑(あお)く照らされ()(あき)らか、香径(こみち)()った(はなびら)は已に吹き()くされて。

 

(おもい)(つづ)いて恨みに(かわ)ったのに遊糸(くものいと)は短かい、尽日(ひがな)相思(こが)れて羅帯(おび)は緩くなった。

宝奩(かがみ)は月の(よう)に人を不欺(あざむかな)い、明日帰って来たら(あなた)も試しに()てごらんなさい。


mù lán huā

chūn sī

1 chūn fēng zhǐ zài yuán xī pàn,jì cài huā fán hú dié luàn.
2 bīng chí qíng lǜ zhào hái kòng,xiāng jìng luò hóng chuī yǐ duàn.

3 yì cháng fān hèn yóu mì duǎn,jìn rì xiāng sī luó dài huǎn.
4 bǎo lián rú yuè bù qī rén,míng rì guī lái jūn shì kàn.

200唐多令(劉過)

唐多令  劉過

安遠楼小集、侑觴歌板之姫黄其姓者、乞詞于龍洲道人、為賦此。同柳阜之・劉去非・石民瞻・周嘉仲・陳孟参・孟容、時八月五日也。

1蘆葉満汀洲、寒沙帯浅流。
2二十年・重過南楼。
3柳下繫船猶未穏、能幾日、又中秋。

4黄鶴断磯頭、故人曾到否。
5旧江山・渾是新愁。
6欲買桂花同載酒、終不似、少年遊。

安遠楼にて小さな集まりをした、酒杯をすすめる歌板※の姫はその姓を黄という者で、わたし龍洲道人に詞を乞うたので、これを作ってあげた。一緒にいたのは、柳阜之・劉去非・石民瞻・周嘉仲・陳孟参・孟容、時に八月五日であった。

1蘆の葉は汀に満ち、冷たい岸に浅い流れがある。
2二十年ぶりに再び南楼を通りかかった。
3柳の下に船を繫いだがまだ落ち着かない、幾日かあとには、また中秋。

4黄鶴楼は断崖の上、友はかつて来たかどうか。
5昔のままの川と山、すべて新しい愁い。
6桂花を買って一緒に酒に載せたいが、結局は若いころ遊んだようにはならないだろう。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2南楼:安遠楼のこと。姜夔195「翠楼吟」の小序、参照。 4黄鶴磯:武昌の西にあり、上に黄鶴楼がある。 6欲買桂花同載酒:「欲買桂花酒同載(桂花酒を買いて同載せんと欲す)」の意。

※「歌板」はカスタネットに似た拍子をとる楽器。

安遠楼で(すこ)し集まり、(さかずき)(すす)める歌板()姫は黄と其の姓をいう者で、龍洲道人(わたし)()詞を乞うたので、その為に(これ)(つく)った。

柳阜之・劉去非・石民瞻・周嘉仲・陳孟参・孟容と(いっしょ)で、時に八月五日であっ()

 

1蘆の葉は汀洲(みぎわ)に満ち、(つめ)たい(きし)に浅い流れが()る。

2二十年ぶりに(ふたた)び南楼を(とおりかか)った。

3柳の下に船を繫いだが()未穏(おちつかな)い、幾日か(あと)には、又た中秋。

 

4黄鶴は断磯(だんがい)(うえ)故人(とも)(かつ)()たか(どう)か。

(むかし)(かわ)と山、渾是(すべて)新しい愁い。

6桂花を買って(いっしょ)に酒に載せたい()が、(けっきょく)少年(わかいとき)の遊びとは不似(ちが)う。


táng duō lìng

ān yuǎn lóu xiǎo jí,yòu shāng gē bǎn zhī jī huáng qí xìng zhě,qǐ cí yú long zhōu dà orén,wèi fù cǐ.
tóng liǔ fù zhī、liú qù fēi、shí mín zhān、zhōu jiā zhòng、chén mèng cān、mèng róng,shí bā yuè wǔ rì yě.

1 lú yè mǎn tīng zhōu,hán shā dài qiǎn liú.
2 èr shí nián、zhòng guò nán lóu.
3 liǔ xià xì chuán yóu wèi wěn,néng jǐ rì,yòu zhōng qiū.

4 huáng hè duàn jī tóu,gù rén céng dào fǒu.
5 jiù jiāng shān、hún shì xīn chóu.
6 yù mǎi guì huā tóng zǎi jiǔ,zhōng bú sì,shào nián yóu.

199小重山(章良能)

小重山  章良能

1柳暗花明春事深、小欄紅芍薬、已抽簪。
2雨余風軟碎鳴禽、遅遅日、猶帯一分陰。

3往事莫沈吟、身閑時序好、且登臨。
4旧遊無処不堪尋、無尋処、惟有少年心。

1柳は暗く花は明るく、春は深い、小さな手すりに赤い芍薬、すでに簪のような芽を出して。
2雨のあとには風軟らかく鳥の声を砕き、のんびりした春の日は、なお一分の陰を帯びている。

3過ぎたことは悩むなかれ、この身は暇で、季節はすばらしい、しばらく楽しもう。
4むかし遊んだのはどこもかしこも尋ねるに価するところ、いま尋ねるところはなく、ただ若者の心だけが有る。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2碎鳴禽:杜荀鶴「春宮怨」に「風暖鳥声砕、日高花影重(風暖かにして鳥声砕き、日高くして花影重し)」とある。 遅遅日:『詩経』豳風「七月」に「春日遅遅、采蘩祁祁(春日遅遅たり、蘩を采ること祁祁たり)」とある。

1柳は暗く花は明るく、春事(はる)は深い、小さな(てすり)(あか)い芍薬、(すで)()()して。

2雨の(あと)に風軟らかく鳴禽(とりのこえ)を碎き、遅遅(のんびり)した(はるのひ)は、()お一分の(かげ)を帯びている。

 

往事(すぎしこと)沈吟(なや)(なか)れ、身は(ひま)時序(きせつ)(よろ)しい、(しばら)登臨(たのし)もう。

(むかし)遊んだのは無処不(どこもかしこ)も尋ねるに(あたいす)る、いま尋ねる処は無く、()少年(わかもの)の心だけが有る。


xiǎo chóng shān

1 liǔ àn huā míng chūn shì shēn,xiǎo lán hóng sháo yào,yǐ chōu zān.
2 yǔ yú fēng ruǎn suì míng qín,chí chí rì,yóu dài yì fēn yīn.

3 wǎng shì mò chén yín,shēn xián shí xù hǎo,qiě dēng lín.
4 jiù yóu wú chù bù kān xún,wú xún chǔ,wéi yǒu shào nián xīn.

2022年9月27日火曜日

198霓裳中序第一(姜夔)

霓裳中序第一  姜夔

丙午歳、留長沙、登祝融、因得其祠神之曲、曰黄帝塩・蘇合香。又於楽工故書中得商調霓裳曲十八闋、皆虚譜無辞。按沈氏楽律、霓裳道調、此乃商調。楽天詩云、散序六闋、此特両闋。未知孰是。然音節閑雅、不類今曲。予不暇尽作、作中序一闋伝於世。余方羈遊、感此古音、不自知其辞之怨抑也。

1亭皋正望極、乱落江蓮帰未得。
2多病却無気力。
3況紈扇漸疏、羅衣初索。
4流光過隙、嘆杏梁、双燕如客。
5人何在。
6一簾淡月、仿佛照顔色。

7幽寂。
8乱蛩吟壁、動庾信・清愁似織。
9沈思年少浪跡、笛裏関山、柳下坊陌。
10墜紅無信息、漫暗水・涓涓溜碧。
11飄零久、而今何意、酔臥酒壚側。

丙午の歳、長沙に留まり、祝融山に登って、そこでその祠神の曲を得た、「黄帝塩」「蘇合香」という。また楽工の持っていた古い書物の中に商調の「霓裳」曲十八闋を得たが、いずれも譜面のみで歌辞はなかった。沈氏の楽律によれば、「霓裳」は道調であるが、これはというと商調である。白楽天の詩に「散序六闋」とあるが、これはただ二闋しかない。いずれが正しいか分からない。だがメロディが雅びで、今曲の類ではない。私はすべて作るいとまはないので、「中序一闋」を作って世に伝える。私はちょうど旅をしていて、この古びた音色に感じ、思わずその歌辞もまた沈んだ感じになった。

1岸に立って、いましも遠く眺めれば、乱れ散る川の蓮の花、まだ帰郷することはできない。
2多病な身は、むしろ気力も無くて。
3まして団扇が使われることも次第にまれとなり、薄絹の衣も畳まれようかという頃。
4隙を通って流れる光陰、軒のつがいの燕さえ客人のようなのが、嘆かれる。
5あの人はいずこに。
6簾の上にかかる淡い月、まるであの人の姿を照らしているような。

7寂しい。
8むやみにコオロギが壁の辺りで鳴いている。「愁賦」を作った庾信のように心動かされる、愁いは織(はた)でも織るようだ。
9若い頃を思い出す、笛の音の中の関山、柳の下の路。
10散り落ちた花びらのように消息はなく、漫然と暗く川はさらさらと青く流れる。
11長らくさまよい、いまどのような思いか、彼女が酒を温める壚のそばに酔って臥した、あの頃。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
0丙午:淳熙十三年(1186)。 祝融:衡山七十二峰の最高峰。 黄帝塩:古楽府の中の羯鼓の遺曲。「塩」は「艶」に通じる。曲名で、たとえば楽府に「昔昔塩」がある。 蘇合香:唐の「大曲」に四曲あり、「蘇合香」はその一つ。「軟舞曲」に属するという。 商調:夷則商の俗名、商七調の一つ。 霓裳曲:「霓裳羽衣曲」のこと。盛唐の宮廷の楽曲。 十八闋:「霓裳曲」はあわせて三十六遍(片、段)あり、二遍を一闋とし、計十八闋。 沈氏楽律:沈括『夢渓筆談』「楽律」に「霓裳曲」は道調とあるが、実は商調で、沈氏の誤記。白石はたまたま考察を欠いた。 楽天詩云、散序六闋:白居易「和元微之霓裳羽衣歌」に「散序六奏未動衣、陽台宿雲慵不飛(散序の六奏 未だ衣を動かさず、陽台の宿雲 慵く飛ばず)」とある。「六奏」は「六遍」、三闋、白石の「これはただ両闋のみ」と異なる。 作中序一闋:「霓裳」は全曲が「散序」「中序」「破」の三段に分かれる。各段とも数闋あり、調名から判断するに、この曲は「中序」の第一闋の曲に詞を作ったものと分かる。 1亭皋:水辺の平地。 3索:束ねる。 4杏梁:屋根の美称。司馬相如「長門賦」に「刻木蘭以為榱、飾文杏以為梁(木蘭を刻して以て榱と為し、文杏を飾り以て梁と為す)」とある。 6「一簾」二句:杜甫「夢李白」詩に「落月満屋梁、猶疑照顔色(落月 屋梁に満ち、猶お疑う 顔色を照らすかと)」とある。 10墜紅:杜甫「秋興」詩に「露冷蓮房墜粉紅(露は蓮房に冷やかにして粉紅を墜とす)」とある。 暗水涓涓溜碧:杜甫「夜宴左氏荘」詩に「暗水流花径(暗水 花径に流る)」とある。 11酔臥酒壚側:『世説新語』に「阮公(籍)の隣家の婦に美色有り、壚に当たり酒を沽う。阮……常に婦に従い酒を飲み、阮 酔えば、便ち其の婦の側に眠臥す。夫 始めは殊に之を疑うも、伺察し、終に他意無しとす」とある。

※白居易の詩の自注に「散序六遍無拍、故不舞也(散序六遍は拍無し、故に舞わざるなり)」とある。

丙午の歳、長沙に(とど)まり、祝融に登って、(そこ)で其の祠神()曲を得た、黄帝塩・蘇合香と()う。

又た楽工の(ふる)い書の中()商調の「霓裳」曲十八闋を得たが、()虚譜(おんぷのみ)(うた)が無い。

沈氏の楽律に()れば、「霓裳」は道調で、(これ)は乃ち商調である。

楽天の詩には「散序六闋」と云うが、此れは()だ両闋である。

(いず)れが(ただしい)未知(わからな)い。

(けれど)音節(メロディ)閑雅(みやび)で、今曲には不類(にていな)い。

(わたし)(すべ)て作る不暇(ひまがな)いので、中序一闋を作って世()伝える。

(わたし)(ちょう)羈遊(たび)をしていて、此の(いにしえ)の音に感じ、不自知(おもわ)ず其の(うた)()怨抑(しず)()

 

亭皋(きし)(ちょう)望極(とおくなが)めれば、乱れ()(かわ)の蓮、帰ることは未得(まだできな)い。

2多病で(むし)ろ気力も無くて。

(まし)紈扇(うちわ)(しだい)(まれ)となり、羅衣(うすぎぬ)初索(たたまれよ)うとして。

流光(つきひ)は隙を(とお)って、杏梁(のき)双燕(つばめ)(たびびと)(よう)なのが嘆かれる。

(あのひと)何在(いずこ)

一簾(すだれ)に淡い月、仿佛(まる)顔色(すがた)を照らすような。

 

幽寂(さび)しい。

(むやみ)(コオロギ)が壁でき()き、庾信(わたし)(こころうご)かされる、清愁(うれい)(はたお)(よう)

年少(わか)浪跡(ころ)沈思(おもいだ)す、(ふえのね)(なか)の関山、柳の下の坊陌(みち)

10()った(はな)のように信息(しらせ)は無く、(みだり)に暗く水は涓涓(さらさら)溜碧(なが)れる。

11久しく飄零(さまよ)い、而今(いま)(どのよう)(おもい)か、酒の()(そば)に酔って臥す。


ní cháng zhōng xù dì yī

bǐng wǔ suì,liú cháng shā,dēng zhù róng,yīn dé qí cí shén zhī qǔ,yuē huáng dì yán、sū hé xiāng.
yòu yú yuè gōng gù shū zhōng děi shāng diào ní cháng qǔ shí bā què,jiē xū pǔ wú cí.
àn shěn shì yuè lǜ,ní cháng dào diào,cǐ nǎi shāng diào.
lè tiān shī yún,sàn xù liù què,cǐ tè liǎng què.
wèi zhī shú shì.
rán yīn jié xián yǎ,bú lèi jīn qǔ.
yǔ bù xiá jìn zuò,zuò zhōng xù yí què chuán yú shì.
yú fāng jī yóu,gǎn cǐ gǔ yīn,bú zì zhī qí cí zhī yuàn yì yě.

1 tíng gāo zhèng wàng jí,luàn luò jiāng lián guī wèi dé.
2 duō bìng què wú qì lì.
3 kuàng wán shàn jiàn shū,luó yī chū suǒ.
4 liú guāng guò xì,tàn xìng liáng,shuāng yàn rú kè.
5 rén hé zài.
6 yì lián dàn yuè,fǎng fú zhào yán sè.

7 yōu jì.
8 luàn qióng yín bì,dòng yǔ xìn、qīng chóu sì zhī.
9 chén sī nián shào làngj ì,dí lǐ guān shān,liǔ xià fáng mò.
10 zhuì hóng wú xìn xī,màn àn shuǐ、juān juān liū bì.
11 piāo líng jiǔ,ér jīn hé yì,zuì wò jiǔ lú cè.