2022年8月31日水曜日

140蘇武慢(蔡伸)

蘇武慢  蔡伸

1雁落平沙、煙籠寒水、古壘鳴笳声断。
2青山隠隠、敗葉蕭蕭、天際暝鴉零乱。
3楼上黄昏、片帆千里帰程、年華将晚。
4望碧雲空暮、佳人何処、夢魂俱遠。

5憶旧遊・邃館朱扉、小園香径、尚想桃花人面。
6書盈錦軸、恨満金徽、難写寸心幽怨。
7両地離愁、一樽芳酒淒涼、危闌倚遍。
8尽遅留・憑仗西風、吹乾涙眼。

1雁は岸に下り、もやは寒々しい川に立ちこめ、砦に響いていた葦笛の音がやんだ。
2青山はぼんやり、落ち葉はざわざわ、空の果てを夕暮れの烏が乱れ飛んでいる。
3たかどのは黄昏、帆をはって舟が千里のかなたを帰ってゆく、年も暮れようとしている。
4眺める、雲の流れる暮れの空、あの人はいづこ、夢でも魂はすべて遠い。

5思い出す、思い出の館の扉、庭の小径、また思う、桃の花とあの人の顔。
6手紙は机にあふれ、恨みは琴に満ち、ちょっとの心、ひそかな怨みも、表せない。
7二つの地に離ればなれの愁い、一樽の酒のわびしさ、手すりにあちこちもたれて。
8できるかぎり留まって、秋風を頼りに、涙に濡れた眼を吹き乾かしてもらいたい。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
4「望碧雲」二句:江淹「休上人怨別」詩に「日暮碧雲合、佳人殊未来(日暮れ碧雲合い、佳人 殊に未だ来らず)」とある。 5桃花人面:崔護が門に詩を書いた故事。晏殊013「清平楽(紅箋小字)」の「人面」の注、参照。 6書盈錦軸:秦(五胡十六国時代の前秦)の竇滔夫妻の故事。柳永032「曲玉管」の「別来」の注、参照。 金徽:琴をいう。※

※「徽:本琴上繋弦之縄」と原注にあるが、不明。「徽」は琴面に埋め込まれている丸い印。弦を押さえる勘所の印。

1雁は平沙(きし)()り、(もや)寒水(かわ)(たちこ)め、古壘(とりで)(ひび)(あしぶえ)(おと)()む。

青山(やま)隠隠(ぼんやり)敗葉(おちば)蕭蕭(ざわざわ)天際(そらのはて)(ゆうぐれ)の鴉が零乱(みだれと)ぶ。

楼上(たかどの)黄昏(たそがれ)片帆(ふね)千里(かなた)帰程(かえってゆ)く、年華(とし)(くれよ)うとして

(ながめ)る、碧雲(くも)空暮(くれのそら)佳人(あのひと)何処(いづこ)、夢でも魂は(すべ)

 

(おもいだ)す、旧遊(おもいで)邃館(やかた)朱扉(とびら)小園(にわ)香径(みち)()た想う、桃の花と(あのひと)(かお)

(てがみ)錦軸(つくえ)()ち、恨みは金徽(こと)に満ち、(ちょっと)の心、(ひそ)かな怨みも(あらわ)し難い。

(ふた)つの地に離れた愁い、一(たる)芳酒(さけ)淒涼(わびし)さ、危闌(てすり)(もた)(つく)して。

(できるかぎ)遅留(とどま)って、西風(あきのかぜ)憑仗(たよ)って、涙の眼を吹き乾かしてもらいたい。


sū wǔ màn

1 yàn luò píng shā,yān lǒng hán shuǐ,gǔ lěi míng jiā shēng duàn.
2 qīng shān yǐn yǐn,bài yè xiāo xiāo,tiān jì mìng yā líng luàn.
3 lóu shàng huáng hūn,piàn fān qiān lǐ guī chéng,nián huá jiāng wǎn.
4 wàng bì yún kōng mù,jiā rén hé chù,mèng hún jù yuǎn.

5 yì jiù yóu、suì guǎn zhū fēi,xiǎo yuán xiāng jìng,shàng xiǎng táo huā rén miàn.
6 shū yíng jǐn zhóu,hèn mǎn jīn huī,nán xiě cùn xīn yōu yuàn.
7 liǎng dì lí chóu,yì zūn fāng jiǔ qī liáng,wēi lán yǐ biàn.
8 jìn chí liú、píng zhàng xī fēng,chuī gàn lèi yǎn.

139臨江仙(陳与義)

臨江仙  陳与義

夜登小閣憶洛中旧遊

1憶昔午橋橋上飲、坐中多是豪英。
2長溝流月去無声、杏花疏影裏、吹笛到天明。

3二十余年如一夢、此身雖在堪驚。
4閑登小閣看新晴、古今多少事、漁唱起三更。

夜にたかどのに登って洛中での昔の遊びを思い出す

1昔、午橋の端の上で飲んだことを思い出す、坐中はほとんど豪傑ばかり。
2長い堀には月が音もなく光を照らし、杏の花のまばらな影の中、夜明けまで笛が吹かれていた。

3二十余年が一夜の夢のよう、この身はまだあるが、とても驚く。
4しずかに楼にのぼって雨上がりを見る、古今のあれやこれや、漁師の唱が夜中に伝わってくる。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1午橋:洛陽の城南にある。 2溝:城(まち)の周囲をめぐる堀。

夜に小閣(たかどの)に登って洛中での(むかし)の遊びを(おも)

 

1昔、午橋の端の上で飲んだことを(おも)う、坐中は多是(ほとんど)豪英(ごうけつ)ばかり。

2長い(ほり)には月が無声(おともな)流去(なが)れ、杏の花の(まばら)な影の(なか)天明(よあけ)に到るまで笛が()った。

 

3二十余年が(ひとよ)の夢の(よう)、此の身は(まだ)()るが(ただただ)驚く。

(しず)かに小閣(たかどの)に登って新晴(あめあがり)()る、古今の多少事(あれやこれや)(りょうし)(うた)三更(よなか)(ひび)く。


lín jiāng xiān

yè dēng xiǎo gé yì luò zhōng jiù yóu

1 yì xī wǔ qiáo qiáo shàng yǐn,zuò zhōng duō shì háo yīng.
2 cháng gōu liú yuè qù wú shēng,xìng huā shū yǐng lǐ,chuī dí dào tiān míng.

3 èr shí yú nián rú yí mèng,cǐ shēn suī zài kān jīng.
4 xián dēng xiǎo gé kàn xīn qíng,gǔ jīn duō shǎo shì,yú chàng qǐ sān gēng.

138臨江仙(陳与義)

臨江仙  陳与義

1高詠楚詞酬午日、天涯節序匆匆。
2榴花不似舞裙紅、無人知此意、歌罷満簾風。

3万事一身傷老矣、戎葵凝笑牆東。
4酒杯深浅去年同、試澆橋下水、今夕到湘中。

1高々と『楚辞』を詠じて端午の節句を記念する、天涯で節句はあわただしく過ぎる。
2石榴は舞姫のスカートの赤には及ばない、この意味を知る人のいないまま、歌がおわり簾に風が満ちる。

3万事、わが一身に悲しく老いて、戎葵が垣根の東で笑っている。
4酒杯の量は去年と同じ、試しに橋の下の川に澆いでみたら、今宵は湘中まで届くだろう。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1楚詞:『楚辞』のこと。 酬午日:端午の節句を記念する。 節序:節気、時候。 3戎葵:蜀葵・胡葵・呉葵・一丈紅ともいう。花はモクレンに似て、赤、紫、白などの色がある。向日葵(ヒマワリ)とは異なる。

 

1高く楚詞を詠じて午日(たんご)(むく)いる、天涯で節序(せっく)匆匆(あわただ)しい。

榴花(ざくろ)舞裙(まいひめのすそ)(あか)不似(およばな)い、此の意を知る人は(いな)い、歌が()み簾に風が満ちる。

 

3万事一身に(かな)しく老矣()い、戎葵(あおい)(かきね)の東で凝笑(わら)っている。

4酒杯の深浅(りょう)は去年と同じ、試しに橋の下の(かわ)に澆げば、今夕(こよい)は湘中まで(とど)くだろう。


Lín jiāng xiān

1 gāo yǒng chǔ cí chóu wǔ rì,tiān yá jié xù cōng cōng.
2 liú huā bú sì wǔ qún hóng,wú rén zhī cǐ yì,gē bà mǎn lián fēng.

3 wàn shì yì shēn shāng lǎo yǐ,róng kuí níng xiào qiáng dōng.
4 jiǔ bēi shēn qiǎn qù nián tóng,shì jiāo qiáo xià shuǐ,jīn xī dào xiāng zhōng.

137漢宮春(李邴)

漢宮春  李邴

1瀟灑江梅、向竹梢疏処、横両三枝。
2東君也不愛惜、雪圧霜欺。
3無情燕子、怕春寒・軽失花期。
4却是有・年年塞雁、帰来曾見開時。

5清浅小渓如練、問玉堂何似、茅舍疏籬。
6傷心故人去後、冷落新詩。
7微雲淡月、対江天・分付他誰。
8空自憶・清香未減、風流不在人知。

1洒落た江梅が、竹の梢のまばらなところで、二・三の枝を横に伸ばしている。
2春の主もまた惜しまない、雪につぶされ霜に虐められている。
3無情な燕は、春の寒さを恐れてあっさりと花の時期を失った。
4思いがけないことに、毎年やってくる辺塞の雁だけが、帰って来て花咲く時をかつて見ていた。

5浅い川は絹のよう、聞いてみよう、お屋敷はどうしてあばら家の垣根と比べられようか、と。
6悲しい、友が去った後は、新しい詩にもしょんぼりとして。
7うすい雲と淡い月のもと、川と空に向かっているこの梅の花を、他の誰に任せようか。
8むなしく独りで思う、香りは残っている、風流を分かる人はいないかも知れないが。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
5玉堂:富裕貴族の邸宅。古楽府に「黄金為君門、白玉為君堂(黄金もて君が門と為し、白玉もて君が堂と為す)」とある。 7分付:始末する、処分する。誰に処分させようか、の意。

瀟灑(しゃれ)た江梅が、竹の梢の(まばら)な処()、両・三の枝を横たえる。

東君(はるのぬし)()不愛惜(おしまな)い、雪に(つぶ)され霜に(いじめ)られる。

3無情な燕子(つばめ)は、春の寒さを(おそ)れて(あっさり)と花の(とき)を失った。

却是(おもいがけ)年年(まいとし)塞雁(かり)だけが()て、帰って来て(かつ)()く時を見る。

 

清浅(あさ)小渓(かわ)(きぬ)(よう)()く、玉堂(おやしき)(どうし)茅舍(あばらや)疏籬(かきね)(くらべ)られようか、と。

傷心(かなし)い、故人(とも)が去った後、新詩にも冷落(しょんぼり)として。

(うす)い雲と淡い月、(かわ)(そら)(むか)って、他の誰に分付(まか)せようか。

(むな)しく(ひとり)(おも)う、清香(かおり)未減(のこ)っている、風流を(わか)る人は不在(いな)い。


hàn gōng chūn

1 xiāo sǎ jiāng méi,xiàng zhú shāo shū chù,héng liǎng sān zhī.
2 dōng jūn yě bú ài xī,xuě yā shuāng qī.
3 wú qíng yàn zǐ,pà chūn hán、qīng shī huā qī.
4 què shì yǒu、nián nián sè yàn,guī lái céng jiàn kāi shí.

5 qīng qiǎn xiǎo xī rú liàn,wèn yù táng hé sì,máo shè shū lí.
6 shāng xīn gù rén qù hòu,lěng luò xīn shī.
7 wēi yún dàn yuè,duì jiāng tiān、fēn fù tā shéi.
8 kōng zì yì、qīng xiāng wèi jiǎn,fēng liú bú zài rén zhī.

136高陽台(韓疁)

高陽台  韓疁

除夜

1頻聴銀簽、重燃絳蠟、年華袞袞驚心。
2餞旧迎新、能消幾刻光陰。
3老来可慣通宵飲。
4待不眠・還怕寒侵。
5掩清樽・多謝梅花、伴我微吟。

6鄰娃已試春妝了、更蜂腰簇翠、燕股横金。
7勾引東風、也知芳思難禁。
8朱顔那有年年好、逞艶遊・贏取如今。
9恣登臨・残雪楼台、遅日園林。

除夜

1しきりに水時計の音を聴き、また蠟燭を燃やす、年がずんずん過ぎて驚く。
2旧い年に別れを告げ、新しい年を迎えて、どれほどの時を費やすことができるのだろう。
3老いて、夜通し飲むことに慣れた。
4待っても眠れない、また寒さが忍び込むのが怖い。
5酒を片づける、梅の花よ、ありがとう、私がそっと吟ずるのにつきあってくれて。

6鄰の娘はもう春の化粧を試すようになり、さらに翠色の蜜蜂や黄金色の燕の飾りもしている。
7春風を誘いつつ、また思いを押さえがたいことも知っている。
8若々しい顔は、くる年もくる年も素晴らしい、なんてことはどうしてあろうか。艶めかしさをひけらかして遊んで、いまの楽しさを取ったほうがよい。
9心のままに高いところに上って見てごらん、残雪のたかどの、のどかな園林を。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1銀簽:「更漏(みずどけい)」をいう。「簽」に時刻が記されている。 絳蠟:赤い蝋燭。 袞袞:連続して途絶えないこと。「滾滾」に通じる。 6蜂腰・燕股:ミツバチやツバメの形に紙を切って鬢に飾る。 ミツバチは腰が細く、燕の尾はハサミのような形をしている。 9遅日:春の陽ざし。『詩経』豳風「七月」に「春日遅遅(春日遅遅たり)」とある。

除夜

 

(しきり)銀簽(みずどけい)を聴き、()(ろうそく)を燃やす年華(とし)袞袞(ずんずん)すぎて驚心(おどろ)く。

2旧に(わか)れ新を迎えて、幾刻(どれほど)光陰(とき)(ついや)すことが(でき)るのだろう。

老来(おい)通宵(よどお)し飲むことに可慣(なれ)た。

4待っても不眠(ねむれな)い、()た寒さが(しのびこ)むのが(こわ)い。

清樽(さけ)(しま)う、梅の花よ、多謝(ありがと)う、(わたし)(そっ)と吟ずるのに(つきあ)てくれて。

 

6鄰の(むすめ)()う春の(けしょう)試了(ため)す、更に蜂腰(みつばち)簇翠(みどり)燕股(つばめ)横金(こがねいろ)

東風(はるかぜ)勾引(さそ)い、()芳思(おもい)難禁(おさえがた)いことを知っている。

朱顔(かお)はくる年もくる年も(すばら)しいなんてことが(どうし)て有ろうか、(なまめかしさ)(ひけらか)して遊んで、如今(いま)贏取()ったほうがよい。

(こころのまま)登臨(ごらん)なさい、残雪の楼台(たかどの)遅日(のどか)な園林を。


gāo yang tái

chú yè

1 pín tīng yín qiān,zhòng rán jiàng là,nián huá gǔn gǔn jīng xīn.
2 jiàn jiù yíng xīn,néng xiāo jǐ kè guāng yīn.
3 lǎo lái kě guàn tōng xiāo yǐn.
4 dài bù mián、hái pà hán qīn.
5 yǎn qīng zūn、duō xiè méi huā,bàn wǒ wēi yín.

6 lín wá yǐ shì chūn zhuāng liǎo,gèng fēng yāo cù cuì,yàn gǔ héng jīn.
7 gōu yǐn dōng fēng,yě zhī fāng sī nán jìn.
8 zhū yán nà yǒu nián nián hǎo,chěng yàn yóu、yíng qǔ rú jīn.
9 zì dēng lín、cán xuě lóu tái,chí rì yuan lín.

2022年8月30日火曜日

135喜遷鶯(劉一止)

喜遷鶯  劉一止

暁行

1暁光催角、聴宿鳥未驚、鄰鶏先覚。
2迤邐煙村、馬嘶人起、残月尚穿林薄。
3涙痕帯霜微凝、酒力衝寒猶弱。
4嘆倦客、悄不禁重染、風塵京洛。

5追念人別後、心事万重、難覓孤鴻托。
6翠幌嬌深、曲屏香暖、争念歳華飄泊。
7怨月恨花煩悩、不是不曾経著。
8者情味・望一成消減、新来還悪。

暁の旅立ち

1暁の光が角笛を促し、耳をすます、巣のある鳥はまだ起きていないのに、鄰の鶏が先に目覚めた。
2うねうねと靄にけぶる村、馬が嘶いて人々が起き、残月はまだ林やススキに光を差している。
3涙の痕が霜を帯びてかすかに凍り、酒の力は寒さに当たってまだ弱い。
4ああ、旅に疲れた私は、また染まるのには耐えられない、埃まみれの都には。

5思い出す、あの人と別れた後、思いは幾重にもなって、群れにはぐれた雁を探して托すのも難しい。
6カーテンの揺れる部屋の奥では、屏風と暖かい香があった。どうしてあのとき想像できただろう、いまの漂泊の日々を。
7月を怨み花を恨んで悩む、かつて覚えがないわけではないけれど。
8こんな味わいは、さっと消えて欲しいのに、新たにまた酷くなろうとは。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2林薄:草木が茂っているところ。『楚辞』王逸注に「叢木を林と曰い、草木の交錯するを薄と曰う」とある。 4風塵京洛:晋の陸機「為願彦先贈婦」詩に「京洛多風塵、素衣化為緇(京洛 風塵多く、素衣 化して緇と為る)」とある。のちに、世俗の汚れにまみれる喩え。 8者:「這(これ)」。

暁の(たびだち)

 

1暁の光が(つのぶえ)(うなが)し、聴く、宿()のある鳥が未驚(おきていな)いのに、鄰の鶏が先に(めざめ)た。

迤邐(うねうね)(けぶ)る村、馬が嘶いて人が起き、残月は()(はやし)(すすき)穿()している。

3涙の痕が霜を帯びて(かす)かに(こお)り、酒の力は寒さに(あた)って()だ弱い。

4嘆く、倦客(わたし)()た染るのは悄不禁(たえられな)い、風塵(ほこりまみれ)京洛(みやこ)に。

 

追念(おもいだ)す、(あのひと)と別れた後、心事(おもい)万重(いくえ)孤鴻(かり)(さが)して托すのも難しい。

翠幌(カーテン)()れる(おく)曲屏(びょうぶ)と暖かい香、(どうし)(わか)ったろうか、歳華(いま)の飄泊を。

7月を怨み花を恨んで煩悩(なや)む、曾て経著(おぼえ)不是不(ないわけではな)い。

()んな情味(あじわ)いは、一成()っと消減(きえ)()しいのに、新たに()(ひど)()る。


xǐ qiān yīng

xiǎo xíng

1 xiǎo guāng cuī jiǎo,tīng sù niǎo wèi jīng,lín jī xiān jué.
2 yǐ lǐ yān cūn,mǎ sī rén qǐ,cán yuè shàng chuān lín bó.
3 lèi hén dài shuāng wēi níng,jiǔ lì chòng hán yóu ruò.
4 tàn juàn kè,qiǎo bùj īn zhòng rǎn,fēng chén jīng luò.

5 zhuī niàn rén bié hòu,xīn shì wàn zhòng,nán mì gū hóng tuō.
6 cuì huǎng jiāo shēn,qǔ píng xiāng nuǎn,zhēng niàn suì huá piāo bó.
7 yuàn yuè hèn huā fán nǎo,bú shì bù céng jīng zháo.
8 zhě qíng wèi、wàng yì chéng xiāo jiǎn,xīn lái hái è.

134点絳唇(汪藻)

点絳唇  汪藻

1新月娟娟、夜寒江静山銜斗。
2起来搔首、梅影横窓瘦。

3好箇霜天、閑却伝杯手。
4君知否。
5乱鴉啼後、帰興濃如酒。

1新月が冴え冴えとしている、夜の冷たい川、静かな山に北斗七星が垂れて咥えているよう。
2起きて頭を搔く、梅の影が窓に細く横たわっている。

3すばらしい霜満ちる空、杯を伝える手をもてあます。
4君は知っているかどうか。
5うるさく鴉が啼いた後、帰りたい思いは酒のように濃くなったことを。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1斗:北斗七星。また広く星をいう。 3閑却伝杯手:楽しむ酒のないことをいう。

1新月が娟娟(さえざえ)と、夜の(つめ)たい江、静かな山が(ほし)(くわ)えて。

起来(おき)(あたま)を搔く、梅の影が窓に(よこたわ)って(ほそ)い。

 

好箇(すばら)しい霜の(そら)(さかづき)を伝える手を閑却(もてあま)す。

4君は知っているか(どう)か。

(うるさ)く鴉が啼いた後、帰りたい(おもい)は酒の(よう)に濃かった。


diǎn jiàng chún

1 xīn yuè juān juān,yè hán jiāng jìng shān xián dòu.
2 qǐ lái sāo shǒu,méi yǐng héng chuān shòu.

3 hǎo gè shuāng tiān,xián què chuán bēi shǒu.
4 jūn zhī fǒu.
5 luàn yā tí hòu,guī xìng nóng rú jiǔ.

133虞美人(葉夢得)

虞美人  葉夢得

雨後同幹誉・才卿置酒来禽花下作

1落花已作風前舞、又送黄昏雨。
2暁来庭院半残紅、惟有遊糸、千丈裊晴空。

3殷勤花下同携手、更尽杯中酒。
4美人不用斂蛾眉、我亦多情、無奈酒闌時。

雨の後に幹誉・才卿と一緒に酒をリンゴの花の下に酌んで作った

1散る花はすでに風前に舞いをなし、また黄昏の雨が通り過ぎる。
2朝の庭は半ば花を残して、ただ蜘蛛の糸だけが有る、千丈も晴れた空に揺れて。

3殷勤に花の下でともに手を取り、さらに更に杯中の酒を尽くす。
4美人は蛾眉をひそめなくてよい、私もまた多情、酒宴はたけなわ、もう終わろうとしている、どうしようもない。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
0来禽:植物の名。林檎(ワリンゴ)。落葉の喬木で、花のあとに実がつき、甘くて少し酸っぱい。リンゴに似て小さく、現代では「沙花」、北方では「沙果」と呼ばれる。 1「落花」句:李賀「残糸曲」に「花台欲暮春辞去、落花起作回風舞(花台暮れんと欲す 春 辞し去り、落花起りて廻風の舞を作す)」とある。

雨の後に幹誉・才卿と(とも)に酒を来禽(ワリンゴ)の花の下に()んで作る

 

()る花は已に風前に舞いを()し、又た黄昏の雨が()ぎる。

暁来(あさ)庭院(にわ)は半ば(はな)を残し、惟だ遊糸(くものいと)だけが有る、千丈も晴空(そら)()れて

 

3殷勤に花の下で(とも)に手を()り、更に杯中の酒を尽くす。

4美人は蛾眉(まゆ)(ひそ)不用(なくてよ)い、(わたし)()た多情、酒の(たけなわ)なる時を無奈(どうしようもな)く。


yú měi rén

yǔ hòu tóng gàn yù、gái qīng zhì jiǔ lái qín huā xià zuò

1 luò huā yǐ zuò fēng qián wǔ,yòu sòng huáng hūn yǔ.
2 xiǎo lái tíng yuàn bàn cán hóng,wéi yǒu yóu mì,qiān zhàng niǎo qíng kōng.

3 yīn qín huā xià tóng xié shǒu,gèng jìn bēi zhōng jiǔ.
4 měi rén bú yòng liǎn é méi,wǒ yì duō qíng,wú nài jiǔ lán shí.

132賀新郎(葉夢得)

賀新郎  葉夢得

1睡起流鶯語、掩蒼苔・房櫳向晚、乱紅無数。
2吹尽残花無人見、惟有垂楊自舞。
3漸暖靄・初回軽暑。
4宝扇重尋明月影、暗塵侵・上有乗鸞女。
5驚旧恨、遽如許。

6江南夢断横江渚、浪黏天・葡萄漲緑、半空煙雨。
7無限楼前滄波意。
8誰采蘋花寄取。
9但悵望、蘭舟容与。
10万里雲帆何時到。
11送孤鴻・目断千山阻。
12誰為我、唱金縷。

1眠りから覚めると鶯のさえずりが聞こえる、苔におおわれて部屋は夕暮れ、散る花が無数に。
2残りの花を吹き尽くしても見る人はいない、ただ柳が舞っているだけ。
3次第に暖かい靄がめぐってきて、すこし暑くなってきた。
4扇でまた明月の影を探そうとすると、扇にはいつの間にか塵が積もっている、そこには鸞に乗る女が描かれていて。
5昔の恨みにはっとさせられる、どれほどだったかと驚かされる。

6江南で夢はよこたわる川に断たれ、波が空に粘りつくよう、醸したばかりの葡萄酒のように水が漲り、空の半分はけぶる雨。
7かぎりなくたかどのの前には青い波。
8誰か蘋の花を採って寄こす人はいるだろうか。
9ただ悲しく眺める、船はゆっくりと進んでいる。
10万里のかなた、帆をあげていつになったら着くのやら。
11群からはぐれた雁を見送る、千山に阻まれたかなたを眺めて。
12誰か私のために「金縷」を唱ってくれまいか。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
4明月影・乗鸞女:『龍城録』に「九月望日、明皇月宮に遊び、素娥千余人の、皆な皓衣にて白鸞に乗るを見る」とある。 6葡萄漲緑:李白「襄陽歌」に「遙看漢水鴨頭緑、恰似葡萄初醗醅(遥かに看る 漢水鴨頭の緑、恰も似たり 葡萄の初めて醗醅するに)」とある。 8采蘋花:柳惲が呉興太守となり、「江南曲」を作って「汀洲采白蘋、落日江南春(汀洲 白蘋を采る、落日 江南の春)」と言った、と『南史』に見える。柳宗元「酬曹侍御過象県見寄」詩に「春風無限瀟湘意、欲采蘋花不自由(春風 限り無し 瀟湘の意、蘋花を采らんと欲すれども自由ならず)」とある。 9容与:ゆるやかで進まないようす。『楚辞』「渉江」に「船容与而不進兮、淹回水而凝滞(船 容与として進まず、回水に淹まりて凝滞す)」とある。 12金縷:杜牧「杜秋娘詩」に「秋持玉斝酔、与唱金縷衣(秋 玉斝を持って酔い、与に唱う 金縷の衣)」とあり、原注に「『勧君莫惜金縷衣、勧君須惜少年時。花開堪折直須折、莫待無花空折枝(君に勧む 金縷の衣を惜しむ莫れ、君に勧む 須らく少年の時を惜しむべし。花開きて折るに堪えば直ちに須く折るべし、花無きを待って空しく枝を折る莫れ)』、李錡〔按ずるに、杜秋娘は李錡の妾たり〕長に此の辞を唱う」とある。

 

睡起(おき)ると流鶯(うぐいす)(さえずり)蒼苔(こけ)に掩われて(へや)(ゆうぐれ)乱紅(ちるはな)が無数。

2残りの花を吹き尽くして見る人は無く、()垂楊(やなぎ)自舞()って()る。

(しだい)に暖かい(もや)が回り初めて(すこ)し暑い。

宝扇(おうぎ)で重た明月の影を(さが)すと、(ひそ)かに塵が(つも)り、上に鸞に乗る女が()る。

(むかし)の恨みに驚かされる、如許(どれほど)(おどろ)かされる。

 

6江南で夢は横わる江渚(かわ)に断たれ、浪が(そら)(はりつ)き、葡萄(みなも)(なみ)が漲り、半ば空は(けぶ)る雨。

7限り無く(たかどの)の前に(あお)波意(なみ)

8誰か蘋花を()って寄取(よこ)すのか。

9但だ(かな)しく(なが)める、蘭舟(ふね)容与(ゆっくり)

10万里の雲帆()何時(いつ)()くだろう。

11孤鴻(かり)(みおく)る、千山に阻まれるのを目断(なが)めて。

12誰か(わたし)の為に、「金縷」を唱ってくれ。


hè xīn láng

1 shuì qǐ liú yīng yǔ,yǎn cāng tái ・ fáng lóng xiàng wǎn,luàn hóng wú shù.
2 chuī jìn cán huā wú rén jiàn,wéi yǒu chuí yáng zì wǔ.
3 jiàn nuǎn ǎi、chū huí qīng shǔ.
4 bǎo shàn chóng xún míng yuè yǐng,àn chén qīn、shàng yǒu chéng luán nǚ.
5 jīng jiù hèn,jù rú xǔ.

6 jiāng nán mèng duàn héng jiāng zhǔ,làng nián tiān、pú táo zhàng lǜ,bàn kōng yān yǔ.
7 wú xiàn lóu qián cāng bō yì.
8 shéi cǎi pín huā jì qǔ.
9 dàn chàng wàng,lán zhōu róng yǔ.
10 wàn lǐ yún fān hé shí dào.
11 sòng gū hóng、mù duàn qiān shān zǔ.
12 shéi wèi wǒ,chàng jīn lǚ.

131蘭陵王(張元幹)

蘭陵王  張元幹

1巻珠箔、朝雨軽陰乍閣。
2欄杆外・煙柳弄晴、芳草侵階映紅薬。
3東風妬花悪、吹落梢頭嫩萼。
4屏山掩・沈水倦熏、中酒心情怯杯勺。

5尋思旧京洛、正年少疏狂、歌笑迷著。
6障泥油壁催梳掠、曾馳道同載、上林携手、灯夜初過早共約。
7又争信飄泊。

8寂寞、念行楽。
9甚粉淡衣襟、音断弦索。
10瓊枝璧月春如昨。
11悵別後華表、那回双鶴。
12相思除是、向酔裏、暫忘却。

1珠の簾を巻きあげる、朝の雨が薄曇りとなり、ちょうど止んだ。
2欄杆の向こうでは、靄にけぶる柳が晴れを弄び、若草が階段にのびて芍薬が映える。
3春風が花を妬んで意地悪をし、梢の柔らかい花を吹き散らす。
4屏風に囲まれた部屋で、沈水香がゆらめき、二日酔いでもう酒杯はいやだ。

5昔いた都を思い出す、ちょうど年若くやんちゃで、歌い笑ってばかりいた頃。
6馬と車で化粧するあの人を急がせ、かつて都大路を帯同して、宮殿の庭で手を携え、元宵の夜がやっと過ぎた頃に、早くも次の逢瀬の約束をした。
7いま飄泊することになろうなんて、あの時どうして信じられただろう。

8寂しい、楽しかったあの時を懐かしむ。
9なぜに襟に残った白粉は淡くなり、琴の弦は断たれて聞こえないのか。
10月は枝に白く明るく、春はかつてのまま。
11嘆く、別れた後、華表につがいの鶴が戻ってくるなんてことは、ない。
12思いは酔いの中で、しばし忘れるほかはない。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1乍閣:やんだばかり。 4屏山:屏風。 沈水:高貴な香料の一種。 中酒:酒のために身体の具合が悪い。二日酔い。杜牧「鄭瓘協律」詩に「自説江湖不帰事、阻風中酒過年年(自ずから説く 江湖に帰ざる事を、風に阻ばれ酒に中り年年を過ぐ)」とある。 杯勺:酒を盛る器。酒をさす。 6障泥:馬の背にのせて泥を防ぐ敷物。馬をさす。 油壁:油壁車(油や漆で壁面を飾った車。婦人が乗る)。 馳道:秦代、帝王の馬車専用の道路。ここは御街(都のメインストリート)をいう。 上林:皇帝の苑林の名。 11華表・双鶴:046王安石「千秋歳引」の「華表語」の注、参照。

珠箔(たまのすだれ)を巻く、朝の雨が軽陰(うすぐもり)となり(ちょう)()んだ。

2欄杆の(むこう)(けぶ)る柳が晴れを弄び、芳草(わかくさ)(きざはし)()びて紅薬(しゃくやく)が映える。

東風(はるかぜ)が花を(ねた)んで(いじわる)く、梢頭(こずえ)(やわらか)(はな)吹落(ふきちら)らす。

屏山(びょうぶ)(おお)われ、沈水(こう)倦熏(ゆら)めき、中酒(ふつかよい)心情(こころ)杯勺(さけ)(おそ)れる。

 

(むかし)京洛(みやこ)尋思(おも)う、(ちょう)年少(わか)疏狂(やんちゃ)で、歌い笑って迷著(ばかり)いた。

障泥(うま)油壁(くるま)梳掠(けしょう)(いそ)がせ、(かつ)馳道(みやこおおじ)同載()せて、上林(にわ)で手を携え、灯夜(よる)(やっ)と過ぎると早くも共約(やくそく)をした。

()(どう)して飄泊を信じたろう。

 

寂寞(さびし)い、行楽(たのしみ)(おも)う。

(なぜ)衣襟(えり)(おしろい)は淡く、音弦(ことのいと)断索(たた)れたのか。

10瓊枝(えだ)(しろ)い月、春は(むかし)(よう)

11(なげ)く、別れた後、華表(はしら)に、(どうし)双鶴(つがいのつる)(もど)ってくるものかと。

12相思(おもい)は酔いの(なか)()(しばし)忘却(わす)れる除是(ほか)はない。


lán líng wáng

1 juǎn zhū bó,cháo yǔ qīng yīn zhà gé.
2 lán gān wài、yān liǔ nòng qíng,fāng cǎo qīn jiē yìng hóng yào.
3 dōng fēng dù huā è,chuī luò shāo tóu nèn è.
4 píng shān yǎn、chén shuǐ juàn xūn,zhōng jiǔ xīn qíng qiè bēi sháo.

5 xún sī jiù jīng luò,zhèng nián shào shū kuáng,gē xiào mí zhe.
6 zhàng ní yóu bì cuī shū lüè,céng chí dào tóng zǎi,shàng lín xié shǒu,dēng yè chū guò zǎo gòng yuē.
7 yòu zhēng xìn piāo bó.

8 jìmò,niàn xíng lè.
9 shèn fěn dàn yī jīn,yīn duàn xián suǒ.
10 qióng zhī bì yuè chūn rú zuó.
11 chàng bié hòu huá biǎo,nà huí shuāng hè.
12 xiāng sī chú shì,xiàng zuì lǐ,zàn wàng què.

2022年8月29日月曜日

130石州慢(張元幹)

石州慢  張元幹

1寒水依痕、春意漸回、沙際煙闊。
2渓梅晴照生香、冷蕊数枝争発。
3天涯旧恨、試看幾許消魂。
4長亭門外山重畳。
5不尽眼中青、是愁来時節。

6情切。
7画楼深閉、想見東風、暗消肌雪。
8孤負枕前雲雨、尊前花月。
9心期切処、更有多少淒涼、殷勤留与帰時説。
10到得再相逢、恰経年離別。

1寒水は岸についている痕に沿って流れ、春の気配がしだいに戻ってくる、水際のもやの広がる辺りに。
2岸の梅は照らされて香りを生じ、冷たい蕊の数枝が争って開く。
3天の果てで昔の恨みに、どれほど悲しんでいるか、試しに見てくれ。
4駅の門外に、山々が重なっている。
5目に入る緑は尽きない、いまや愁いの来る時節。

6切ない。
7たかどのは深く閉ざされている、春風に会い、ひそかに若さは雪のような若い肌は消えているだろう。
8枕もとの雲雨の歓び、尊前の花月に背いてしまった。
9会いたいと切に思うとき、さらにどれほどのわびしさがあるのだろう。慇懃に留めて、ともに帰った時に話そう。
10また会うことができるのは、ちょうど別れて一年がたつころだ。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1寒水依痕:杜甫「冬深」詩に「早霜随涙影、寒水各依痕(早霜 涙影に随い、寒水 各々痕に依る)」とある。 「春意」二句:杜甫「閬水歌」に「正憐日破浪花出、更復春従沙際回(正に憐れむ 日の浪花を破りて出づるを、更に復た春 沙際より帰る)」とある。

1寒水は(あと)()い、春意(はるのけはい)(しだい)(もど)り、沙際(みずぎわ)(もや)(ひろ)がる。

(きし)の梅は晴照()らされて香りを生じ、冷たい蕊の数枝が争って(ひら)く。

天涯(そらのはて)(むかし)の恨みに、幾許(どれほど)消魂(かなし)んでいるか試しに看てくれ。

長亭(えき)の門外に山が重畳(かさな)っている。

眼中()(みどり)不尽(つきな)い、(いま)や愁いの来る時節(ころ)

 

情切(せつな)い。

画楼(たかどの)は深く閉ざされ、東風(はるかぜ)想見()い、(ひそ)かに肌雪(わかさ)は消える。

枕前(まくらもと)雲雨(よろこび)尊前(さかだる)(ふうりゅう)孤負(そむ)いた。

心期(あいた)いと切なる(とき)、更に多少(どれほど)淒涼(わびしさ)が有るのか、殷勤に留めて(とも)に帰った時に(はな)そう

10再た相逢()うことが到得(でき)るのは、(ちょう)離別(わかれ)て年が()つころ。


shí zhōu màn

1 hán shuǐ yī hén,chūn yì jiàn huí,shā jì yān kuò.
2 xī méi qíng zhào shēng xiāng,lěng ruǐ shù zhī zhēng fā.
3 tiān yá jiù hèn,shì kàn jǐ xǔ xiāo hún.
4 cháng tíng mén wài shān chóng dié.
5 bú jìn yǎn zhōng qīng,shì chóu lái shí jié.

6 qíng qiè.
7 huà lóu shēn bì,xiǎng jiàn dōng fēng,àn xiāo jī xuě.
8 gū fù zhěn qián yún yǔ,zūn qián huā yuè.
9 xīn qī qiè chǔ,gèng yǒu duō shǎo qī liáng,yīn qín liú yǔ guī shí shuō.
10 dào dé zài xiāng féng,qià jīng nián lí bié.

129緑頭鴨(賀鋳)

緑頭鴨  賀鋳

1玉人家、画楼珠箔臨津。
2托微風・彩簫流怨、断腸馬上曾聞。
3宴堂開・艶妝叢裏、調琴思、認歌顰。
4麝蠟煙濃、玉蓮漏短、更衣不待酒初醺。
5繡屏掩・枕鴛相就、香気漸暾暾。
6回廊影・疏鐘淡月、幾許消魂。

7翠釵分・銀箋封涙、舞鞋従此生塵。
8任蘭舟・載将離恨、転南浦、背西曛。
9記取明年、薔薇謝後、佳期応未誤行雲。
10鳳城遠・楚梅香嫩、先寄一枝春。
11青門外、只憑芳草、尋訪郎君。

1あの人の家、たかどのに珠の簾がかかる、渡し場のそば。
2そよ風に托して、簫で怨みを送るのを、悲しみにくれながら馬上でかつて聞いた。
3堂で宴が開かれ、めかしこんだ女たちの中にあの人がいた、琴で思いを奏で、歌いながら眉をひそめる姿で分かった。
4香と蠟燭で煙は濃く、水時計に夜は更け、酒にちょっと酔うのも待てないで、衣を替える。
5屏風を閉じる、枕に縫い取りした鴛鴦が並ぶ、香りがゆっくりと立ちこめる。
6回廊の影、遠い鐘の音、淡い月、別れはどれほどか悲しくて。

7玉のかんざしを分かち、銀の手紙に涙を封じこめ、いまから舞の靴には塵が積もるでしょう。
8船に任せて、あの人は別れの恨みを載せて、南浦に向かい、夕陽を背にした。
9覚えていますよ、明年、薔薇が散った後、よい時を決して誤らないで会いましょう。
10都は遠く、南の梅は香りが柔らかいので、まず一枝の春を送ります。
11青門の外で、ただ若草をたよりに、貴方を探します。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1珠箔:珠の簾。 5暾暾:日光が満ちているようす。ここは香りが濃厚なさま。 8曛:夕陽のなごり。 9行雲:巫山雲雨のこと。男女の交歓をいう。 10鳳城:みやこ。 寄一枝春:陸凱が江南から長安の范曄へ梅の花と詩を送った故事。 11青門:むかし長安城を東へ出た南側に覇城門があり、青色だったので、青城門や青門と呼ばれた。

玉人(あのひと)の家、画楼(たかどの)珠箔(たまのすだれ)(わたしば)(そば)

微風(そよかぜ)に托して、彩簫(しょう)で怨みを(おく)るのを、断腸(かなし)く馬上で(かつ)て聞いた。

宴堂(えん)が開かれ、艶妝(めかしこ)んだ叢裏(おんなたち)、琴で思いを調(かな)で、歌って(ひそめ)るのが(わか)った。

(こう)(ろうそく)(もや)は濃く、玉蓮(みずどけい)(よる)()け、酒に(ちょっ)()うのも不待(まてな)いで衣を更える。

繡屏(びょうぶ)()じる、枕に(おしどり)相就(なら)ぶ、香気(かおり)(ゆっくり)暾暾(たちこめ)て。

6回廊の影、(とお)い鐘、淡い月、幾許(どれほど)消魂(かなし)くて。

 

翠釵(たまのかんざし)を分かち、銀の(てがみ)に涙を封じこめ、従此(いまから)舞鞋(くつ)に塵が(つも)るでしょう。

蘭舟(ふね)に任せて、離恨(わかれのうらみ)載将()せ、南浦に(むか)い、西(ゆうひ)を背にする

記取(おぼえ)ていますよ、明年、薔薇が()った後、佳期(よいとき)(けっし)未誤(あらまらな)いで行雲()いましょう。

10鳳城(みやこ)は遠く、楚梅(みなみのうめ)は香りが(やわらか)いので、先ず一枝の春を(おく)ります。

11青門の外で、()芳草(わかくさ)(たよ)りに、郎君(あなた)尋訪(さが)します。


Lǜ tóu yā

1 yù rén jiā,huà lóu zhū bó lín jīn.
2 tuō wēi fēng、cǎi xiāo liú yuàn,duàn cháng mǎ shàng céng wén.
3 yàn táng kā、yàn zhuāng cóng lǐ,diào qín sī,rèn gē pín.
4 shè là yān nóng,yù lián lòu duǎn,gēng yī bú dài jiǔ chū xūn.
5 xiù píng yǎn、zhěn yuān xiāng jiù,xiāng qì jiàn tūn tūn.
6 huí láng yǐng 、shū zhōng dàn yuè,jǐ xǔ xiāo hún.

7 cuì chāi fēn、yín jiān fēng lèi,wǔ xié cóng cǐ shēng chén.
8 rèn lán zhōu、zǎi jiāng lí hèn,zhuàn nán pǔ,bèi xī xūn.
9 jì qǔ míng nián,qiáng wēi xiè hòu,jiā qī yìng wèi wù xíng yún.
10 fèng chéng yuǎn、chǔ méi xiāng nèn,xiān jì yì zhī chūn.
11 qīng mén wài,zhǐ píng fang cǎo,xún fǎng láng jūn.

128望湘人(賀鋳)

望湘人  賀鋳

1厭鶯声到枕、花気動簾、酔魂愁夢相半。
2被惜余熏。
3帯驚剰眼、幾許傷春春晚。
4涙竹痕鮮、佩蘭香老、湘天濃暖。
5記小江・風月佳時、屢約非煙遊伴。

6須信鸞弦易断、奈雲和再鼓、曲終人遠。
7認羅襪無蹤、旧処弄波清浅。
8青翰棹艤、白蘋洲畔、尽目臨皋飛観。
9不解寄・一字相思、幸有帰来双燕。

1うんざりだね、鶯の声が枕もとまで来て、花の気が簾を動かし、酔いと愁いで夢が半分ずうだよ。
2布団には残り香がなごり惜しい。
3帯の余った孔には驚くね、どれくらい春を悲しんでも、春は暮れてゆく。
4涙で竹に痕が鮮やか、帯の蘭は香りがぬけて、湘の空は暖かい。
5覚えているさ、川に風月がすばらしかった時、しばしばあの娘と約束して遊んだこと。

6きっと、弦は切れやすく、どのように琴を弾いても、曲が終われば人は去って行く。
7分かった、絹のくつで歩いたところは跡もなく、そこには浅く波が立つだけだと。
8船は棹を休める、白いデンジソウの岸、丘のたかどのに目を凝らす。
9一字の思いさえ寄せるすべが分からない、幸いに帰ってきたつがいの燕がいるよ。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
3帯驚剰眼:帯の余った眼(孔)が多くて驚く。「衣帯日に以て寛し」の意。 4涙竹:『述異記』に「舜が南巡し、蒼桐に葬られた。堯の二人の娘、娥皇と女英(ともに舜の妃となった)は、あとを追ったが間に合わず、慟哭して、涙が竹を濡らし、竹にまだら模様ができた」とある。 佩蘭:『離騒』に「紉秋蘭以為佩(秋蘭を紉いで以て佩と為す)」とある。 5非煙:歩非煙、唐の武公業の妾、皇甫枚に「非煙伝」がある。ここは借りて、思いを寄せる女性。 6鸞弦:漢の武帝の時に、西海から鸞膠(鳳凰の嘴と麒麟の角を煎じて作った膠)が献上され、切れた弦を繋いだ故事。『漢武外伝』に見える。のちに後妻を迎えることを「続弦」という。二人の情が容易に切れる喩え。 「奈雲和」二句:「雲和」は琴瑟の名。楽器の首(あたま)の部分が雲のようになっている。唐の銭起「湘霊鼓瑟」詩に「曲終人不見、江上数峰青(曲終りて人見えず、江上 数峰青し)」とある。 7「認羅襪」二句:曹植「洛神賦」の「凌波微歩、羅襪生塵(凌波 微かに歩き、羅襪 塵を生ず)」を使っている。 8青翰:船。鳥の形に飾りを彫って、青く塗っていることから。『説苑』「善説」に「乗青翰之舟」とある。 艤:船が岸につけてあること。

(うんざり)だね、鶯の声が枕まで()て、花の気が簾を動かし、酔魂(よい)と愁いで夢が相半(はんぶんずつ)だよ。

(ふとん)には余熏(のこりが)が惜しい。

3帯の(あま)った(あな)には驚くね、幾許(どれくらい)春を(かな)しんでも春は(くれ)ていく。

4涙で竹に(あと)が鮮か、佩蘭(おびのらん)は香りが()けて、湘の(そら)濃暖(あたたか)い。

(おぼえ)ているさ、小江(かわ)に風月が(すばら)しかった時、(しばし)非煙(あのこ)()って遊伴(あそ)んだ。

 

須信(きっ)と、鸞弦(いと)()れ易く、(どのよう)雲和(こと)()()いても、曲が終れば人は()っていく。

(わか)った、羅襪(くつ)無蹤(あともな)く、旧処(そこ)には清浅(あさ)く波が()つだけだと。

青翰(ふね)は棹を(やす)める、白蘋(でんじそう)洲畔(みぎわ)臨皋(おか)飛観(たかどの)に目を(こら)す。

9一字の相思(おもい)さえ寄せるすべが不解(わから)い、幸いに帰って来た双燕(つがいのつばめ)()るよ


Wàng xiāng rén

1 yàn yīng shēng dào zhěn,huā qìdòng lián,zuì hún chóu mèng xiāng bàn.
2 bèi xī yú xūn.
3 dài jīng shèng yǎn,jǐ xǔ shāng chūn chūn wǎn.
4 lèi zhú hén xiān,pèi lán xiāng lǎo,xiāng tiān nóng nuǎn.
5 jì xiǎo jiāng、fēng yuè jiā shí,lǚ yuē fēi yān yóu bàn.

6 xū xìn luán xián yì duàn,nài yún hé zài gǔ,qǔ zhōng rén yuǎn.
7 rèn luó wà wú zōng,jiù chǔ nòng bō qīng qiǎn.
8 qīng hàn zhào yǐ,bái pín zhōu pàn,jìn mù lín gāo fēi guān.
9 bù jiě jì、yí zì xiāng sī,xìng yǒu guī lái shuāng yàn.