2022年9月27日火曜日

198霓裳中序第一(姜夔)

霓裳中序第一  姜夔

丙午歳、留長沙、登祝融、因得其祠神之曲、曰黄帝塩・蘇合香。又於楽工故書中得商調霓裳曲十八闋、皆虚譜無辞。按沈氏楽律、霓裳道調、此乃商調。楽天詩云、散序六闋、此特両闋。未知孰是。然音節閑雅、不類今曲。予不暇尽作、作中序一闋伝於世。余方羈遊、感此古音、不自知其辞之怨抑也。

1亭皋正望極、乱落江蓮帰未得。
2多病却無気力。
3況紈扇漸疏、羅衣初索。
4流光過隙、嘆杏梁、双燕如客。
5人何在。
6一簾淡月、仿佛照顔色。

7幽寂。
8乱蛩吟壁、動庾信・清愁似織。
9沈思年少浪跡、笛裏関山、柳下坊陌。
10墜紅無信息、漫暗水・涓涓溜碧。
11飄零久、而今何意、酔臥酒壚側。

丙午の歳、長沙に留まり、祝融山に登って、そこでその祠神の曲を得た、「黄帝塩」「蘇合香」という。また楽工の持っていた古い書物の中に商調の「霓裳」曲十八闋を得たが、いずれも譜面のみで歌辞はなかった。沈氏の楽律によれば、「霓裳」は道調であるが、これはというと商調である。白楽天の詩に「散序六闋」とあるが、これはただ二闋しかない。いずれが正しいか分からない。だがメロディが雅びで、今曲の類ではない。私はすべて作るいとまはないので、「中序一闋」を作って世に伝える。私はちょうど旅をしていて、この古びた音色に感じ、思わずその歌辞もまた沈んだ感じになった。

1岸に立って、いましも遠く眺めれば、乱れ散る川の蓮の花、まだ帰郷することはできない。
2多病な身は、むしろ気力も無くて。
3まして団扇が使われることも次第にまれとなり、薄絹の衣も畳まれようかという頃。
4隙を通って流れる光陰、軒のつがいの燕さえ客人のようなのが、嘆かれる。
5あの人はいずこに。
6簾の上にかかる淡い月、まるであの人の姿を照らしているような。

7寂しい。
8むやみにコオロギが壁の辺りで鳴いている。「愁賦」を作った庾信のように心動かされる、愁いは織(はた)でも織るようだ。
9若い頃を思い出す、笛の音の中の関山、柳の下の路。
10散り落ちた花びらのように消息はなく、漫然と暗く川はさらさらと青く流れる。
11長らくさまよい、いまどのような思いか、彼女が酒を温める壚のそばに酔って臥した、あの頃。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
0丙午:淳熙十三年(1186)。 祝融:衡山七十二峰の最高峰。 黄帝塩:古楽府の中の羯鼓の遺曲。「塩」は「艶」に通じる。曲名で、たとえば楽府に「昔昔塩」がある。 蘇合香:唐の「大曲」に四曲あり、「蘇合香」はその一つ。「軟舞曲」に属するという。 商調:夷則商の俗名、商七調の一つ。 霓裳曲:「霓裳羽衣曲」のこと。盛唐の宮廷の楽曲。 十八闋:「霓裳曲」はあわせて三十六遍(片、段)あり、二遍を一闋とし、計十八闋。 沈氏楽律:沈括『夢渓筆談』「楽律」に「霓裳曲」は道調とあるが、実は商調で、沈氏の誤記。白石はたまたま考察を欠いた。 楽天詩云、散序六闋:白居易「和元微之霓裳羽衣歌」に「散序六奏未動衣、陽台宿雲慵不飛(散序の六奏 未だ衣を動かさず、陽台の宿雲 慵く飛ばず)」とある。「六奏」は「六遍」、三闋、白石の「これはただ両闋のみ」と異なる。 作中序一闋:「霓裳」は全曲が「散序」「中序」「破」の三段に分かれる。各段とも数闋あり、調名から判断するに、この曲は「中序」の第一闋の曲に詞を作ったものと分かる。 1亭皋:水辺の平地。 3索:束ねる。 4杏梁:屋根の美称。司馬相如「長門賦」に「刻木蘭以為榱、飾文杏以為梁(木蘭を刻して以て榱と為し、文杏を飾り以て梁と為す)」とある。 6「一簾」二句:杜甫「夢李白」詩に「落月満屋梁、猶疑照顔色(落月 屋梁に満ち、猶お疑う 顔色を照らすかと)」とある。 10墜紅:杜甫「秋興」詩に「露冷蓮房墜粉紅(露は蓮房に冷やかにして粉紅を墜とす)」とある。 暗水涓涓溜碧:杜甫「夜宴左氏荘」詩に「暗水流花径(暗水 花径に流る)」とある。 11酔臥酒壚側:『世説新語』に「阮公(籍)の隣家の婦に美色有り、壚に当たり酒を沽う。阮……常に婦に従い酒を飲み、阮 酔えば、便ち其の婦の側に眠臥す。夫 始めは殊に之を疑うも、伺察し、終に他意無しとす」とある。

※白居易の詩の自注に「散序六遍無拍、故不舞也(散序六遍は拍無し、故に舞わざるなり)」とある。

丙午の歳、長沙に(とど)まり、祝融に登って、(そこ)で其の祠神()曲を得た、黄帝塩・蘇合香と()う。

又た楽工の(ふる)い書の中()商調の「霓裳」曲十八闋を得たが、()虚譜(おんぷのみ)(うた)が無い。

沈氏の楽律に()れば、「霓裳」は道調で、(これ)は乃ち商調である。

楽天の詩には「散序六闋」と云うが、此れは()だ両闋である。

(いず)れが(ただしい)未知(わからな)い。

(けれど)音節(メロディ)閑雅(みやび)で、今曲には不類(にていな)い。

(わたし)(すべ)て作る不暇(ひまがな)いので、中序一闋を作って世()伝える。

(わたし)(ちょう)羈遊(たび)をしていて、此の(いにしえ)の音に感じ、不自知(おもわ)ず其の(うた)()怨抑(しず)()

 

亭皋(きし)(ちょう)望極(とおくなが)めれば、乱れ()(かわ)の蓮、帰ることは未得(まだできな)い。

2多病で(むし)ろ気力も無くて。

(まし)紈扇(うちわ)(しだい)(まれ)となり、羅衣(うすぎぬ)初索(たたまれよ)うとして。

流光(つきひ)は隙を(とお)って、杏梁(のき)双燕(つばめ)(たびびと)(よう)なのが嘆かれる。

(あのひと)何在(いずこ)

一簾(すだれ)に淡い月、仿佛(まる)顔色(すがた)を照らすような。

 

幽寂(さび)しい。

(むやみ)(コオロギ)が壁でき()き、庾信(わたし)(こころうご)かされる、清愁(うれい)(はたお)(よう)

年少(わか)浪跡(ころ)沈思(おもいだ)す、(ふえのね)(なか)の関山、柳の下の坊陌(みち)

10()った(はな)のように信息(しらせ)は無く、(みだり)に暗く水は涓涓(さらさら)溜碧(なが)れる。

11久しく飄零(さまよ)い、而今(いま)(どのよう)(おもい)か、酒の()(そば)に酔って臥す。


ní cháng zhōng xù dì yī

bǐng wǔ suì,liú cháng shā,dēng zhù róng,yīn dé qí cí shén zhī qǔ,yuē huáng dì yán、sū hé xiāng.
yòu yú yuè gōng gù shū zhōng děi shāng diào ní cháng qǔ shí bā què,jiē xū pǔ wú cí.
àn shěn shì yuè lǜ,ní cháng dào diào,cǐ nǎi shāng diào.
lè tiān shī yún,sàn xù liù què,cǐ tè liǎng què.
wèi zhī shú shì.
rán yīn jié xián yǎ,bú lèi jīn qǔ.
yǔ bù xiá jìn zuò,zuò zhōng xù yí què chuán yú shì.
yú fāng jī yóu,gǎn cǐ gǔ yīn,bú zì zhī qí cí zhī yuàn yì yě.

1 tíng gāo zhèng wàng jí,luàn luò jiāng lián guī wèi dé.
2 duō bìng què wú qì lì.
3 kuàng wán shàn jiàn shū,luó yī chū suǒ.
4 liú guāng guò xì,tàn xìng liáng,shuāng yàn rú kè.
5 rén hé zài.
6 yì lián dàn yuè,fǎng fú zhào yán sè.

7 yōu jì.
8 luàn qióng yín bì,dòng yǔ xìn、qīng chóu sì zhī.
9 chén sī nián shào làngj ì,dí lǐ guān shān,liǔ xià fáng mò.
10 zhuì hóng wú xìn xī,màn àn shuǐ、juān juān liū bì.
11 piāo líng jiǔ,ér jīn hé yì,zuì wò jiǔ lú cè.

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