2022年8月31日水曜日

140蘇武慢(蔡伸)

蘇武慢  蔡伸

1雁落平沙、煙籠寒水、古壘鳴笳声断。
2青山隠隠、敗葉蕭蕭、天際暝鴉零乱。
3楼上黄昏、片帆千里帰程、年華将晚。
4望碧雲空暮、佳人何処、夢魂俱遠。

5憶旧遊・邃館朱扉、小園香径、尚想桃花人面。
6書盈錦軸、恨満金徽、難写寸心幽怨。
7両地離愁、一樽芳酒淒涼、危闌倚遍。
8尽遅留・憑仗西風、吹乾涙眼。

1雁は岸に下り、もやは寒々しい川に立ちこめ、砦に響いていた葦笛の音がやんだ。
2青山はぼんやり、落ち葉はざわざわ、空の果てを夕暮れの烏が乱れ飛んでいる。
3たかどのは黄昏、帆をはって舟が千里のかなたを帰ってゆく、年も暮れようとしている。
4眺める、雲の流れる暮れの空、あの人はいづこ、夢でも魂はすべて遠い。

5思い出す、思い出の館の扉、庭の小径、また思う、桃の花とあの人の顔。
6手紙は机にあふれ、恨みは琴に満ち、ちょっとの心、ひそかな怨みも、表せない。
7二つの地に離ればなれの愁い、一樽の酒のわびしさ、手すりにあちこちもたれて。
8できるかぎり留まって、秋風を頼りに、涙に濡れた眼を吹き乾かしてもらいたい。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
4「望碧雲」二句:江淹「休上人怨別」詩に「日暮碧雲合、佳人殊未来(日暮れ碧雲合い、佳人 殊に未だ来らず)」とある。 5桃花人面:崔護が門に詩を書いた故事。晏殊013「清平楽(紅箋小字)」の「人面」の注、参照。 6書盈錦軸:秦(五胡十六国時代の前秦)の竇滔夫妻の故事。柳永032「曲玉管」の「別来」の注、参照。 金徽:琴をいう。※

※「徽:本琴上繋弦之縄」と原注にあるが、不明。「徽」は琴面に埋め込まれている丸い印。弦を押さえる勘所の印。

1雁は平沙(きし)に落(お)り、煙(もや)は寒水(かわ)に籠(たちこ)め、古壘(とりで)に鳴(ひび)く笳(あしぶえ)の声(おと)が断(や)む。

2青山(やま)は隠隠(ぼんやり)、敗葉(おちば)は蕭蕭(ざわざわ)、天際(そらのはて)を暝(ゆうぐれ)の鴉が零乱(みだれと)ぶ。

3楼上(たかどの)の黄昏(たそがれ)、片帆(ふね)が千里(かなた)を帰程(かえってゆ)く、年華(とし)も将晚(くれよ)うとして。

4望(ながめ)る、碧雲(くも)の空暮(くれのそら)、佳人(あのひと)は何処(いづこ)、夢でも魂は俱(すべ)て遠い。

 

5憶(おもいだ)す、旧遊(おもいで)の邃館(やかた)の朱扉(とびら)、小園(にわ)の香径(みち)、尚(ま)た想う、桃の花と人(あのひと)の面(かお)。

6書(てがみ)は錦軸(つくえ)に盈(み)ち、恨みは金徽(こと)に満ち、寸(ちょっと)の心、幽(ひそ)かな怨みも写(あらわ)し難い。

7両(ふた)つの地に離れた愁い、一樽(たる)の芳酒(さけ)の淒涼(わびし)さ、危闌(てすり)は倚(もた)れ遍(つく)して。

8尽(できるかぎ)り遅留(とどま)って、西風(あきのかぜ)を憑仗(たよ)って、涙の眼を吹き乾かしてもらいたい。


sū wǔ màn

1 yàn luò píng shā,yān lǒng hán shuǐ,gǔ lěi míng jiā shēng duàn.
2 qīng shān yǐn yǐn,bài yè xiāo xiāo,tiān jì mìng yā líng luàn.
3 lóu shàng huáng hūn,piàn fān qiān lǐ guī chéng,nián huá jiāng wǎn.
4 wàng bì yún kōng mù,jiā rén hé chù,mèng hún jù yuǎn.

5 yì jiù yóu、suì guǎn zhū fēi,xiǎo yuán xiāng jìng,shàng xiǎng táo huā rén miàn.
6 shū yíng jǐn zhóu,hèn mǎn jīn huī,nán xiě cùn xīn yōu yuàn.
7 liǎng dì lí chóu,yì zūn fāng jiǔ qī liáng,wēi lán yǐ biàn.
8 jìn chí liú、píng zhàng xī fēng,chuī gàn lèi yǎn.

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