余客武陵、湖北憲治在焉。古城野水、喬木参天、余与二三友日蕩舟其間、薄荷花而飲、意象幽閑、不類人境。秋水且涸、荷葉出地尋丈、因列坐其下、上不見日、清風徐来、緑雲自動、間于疏処窺見遊人画船、亦一楽也。朅来呉興、数得相羊荷花中。又夜泛西湖、光景奇絶、故以此句写之。
1鬧紅一舸、記来時・嘗与鴛鴦為侶。
2三十六陂人未到、水佩風裳無数。
3翠葉吹涼、玉容消酒、更灑菰蒲雨。
4嫣然搖動、冷香飛上詩句。
5日暮、青蓋亭亭、情人不見、争忍凌波去。
6只恐舞衣寒易落、愁入西風南浦。
7高柳垂陰、老魚吹浪、留我花間住。
8田田多少、幾回沙際帰路。
余が武陵に客したとき、湖北の憲治が焉に在った。古城と野水、喬木は天を参き、余は二三の友と与に日がな舟を其の間に蕩べ、荷の花に薄而っては飲み、意象は幽閑、人境とは不類かった。秋の水は且涸うとして、荷の葉が地を出ること尋丈、因で列んで其の下に坐ると、上は日が不見い、清風が徐と来て、緑雲が自動れ、疏な処の間于は遊ぶ人の画船が窺見かれて、亦た一楽であった。呉興を朅来し、荷花の中を数得も相羊した。又た夜には西湖に泛び、光景は奇絶しく、故に此の句で之に写す。
1鬧紅い一舸、記す、来た時、嘗て鴛鴦と与に侶と為った。
2三十六陂に人は未到い、水を佩とし風を裳とする、無数を。
3翠葉は涼に吹かれ、玉容は酒から消め、更に菰や蒲を灑らす雨。
4嫣然に搖れ動き、冷たい香りが飛んで詩句に上る。
5日が暮れ、青い蓋が亭亭ち、情人は不見い、争て凌波を去ることが忍ようか。
6只だ恐れる、舞衣が寒さで落り易く、愁いが西風のふく南浦に入ることを。
7高い柳が垂らす陰、老えた魚が浪を吹きあげ、我を花の間に留住る。
8田田は多少か、幾も沙際の帰り路を回った。
淳熙十六年(1189)、三十五歳の作。
⇒『宋詞三百首』189念奴嬌(姜夔)
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