2023年2月26日日曜日

白石歌046暗香

暗香

辛亥之冬、予載雪詣石湖。止既月、授簡索句。且徴新声。作此両曲。石湖把玩不已、使工妓肄習之、音節諧婉、乃名之曰暗香・疎影。

1旧時月色、算幾番照我、梅辺吹笛。
2喚起玉人、不管清寒与攀摘。
3何遜而今漸老、都忘却春風詞筆。
4但怪得・竹外疏花、香冷入瑤席。

5江国、正寂寂。
6嘆寄与路遙、夜雪初積。
7翠尊易泣、紅萼無言耿相憶。
8長記曾携手処、千樹圧・西湖寒碧。
9又片片・吹尽也、幾時見得。

辛亥の(之)冬、予(わたし)は雪を載(お)して石湖を詣(たず)ねた。止(ちょう)ど既月(ひとつき)たち、簡(かみ)を授(わた)されて句を索(もと)められた。且(そこ)で新声(しんきょく)を徴(つく)った。此の両(に)曲が作(でき)た。石湖は不已(いつまで)も把玩(たの)しみ、工妓(がくじん)に之(これ)を肄習(なら)わせ(使)た、音節(メロディ)は諧婉(ここちよ)く、乃(そこ)で之を名づけて暗香・疎影と曰(い)う。

 

1旧時(むかし)の月の色、算(いった)い幾番(いくど)我(わたし)を照らしたろう、梅の辺(そば)で笛を吹くとき。

2玉人(あのひと)を喚び起こし、清寒(さむ)さも不管(かまわな)いで与(とも)に攀摘(たお)った。

3何遜(わたし)も而今(いま)は漸(しだい)に老いて、都(すべ)て忘却(わす)れた、春風のような詞筆(うた)も。

4但(た)だ怪得(いぶか)るだけ、竹の外(むこう)の疏(まばら)な花は、香りも冷たく瑤席(えんせき)に入る。

 

5江(かわ)べの国(まち)は、正(ちょう)ど寂寂(ひっそり)。

6嘆く、寄与(たく)そうにも路は遙(とお)く、夜には雪も初めて積って。

7翠尊(さけ)に易泣(なみだもろ)く、紅萼(はな)に無言で相憶(おもいで)を耿(あき)らかにする。

8長(いつまで)も記(おぼ)えている、曾(かつ)て手を携えた処、千もの樹が圧していた、西湖の寒々した碧(みず)を。

9又(ま)た片片(ひらひら)と吹き尽くされてしまった(也)、幾時(いつ)また見得(みられ)るだろう。


紹熙二年(1191)、三十七歳の作。

⇒『宋詞三百首』193暗香(姜夔)

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