辛亥之冬、予載雪詣石湖。止既月、授簡索句。且徴新声。作此両曲。石湖把玩不已、使工妓肄習之、音節諧婉、乃名之曰暗香・疎影。
1旧時月色、算幾番照我、梅辺吹笛。
2喚起玉人、不管清寒与攀摘。
3何遜而今漸老、都忘却春風詞筆。
4但怪得・竹外疏花、香冷入瑤席。
5江国、正寂寂。
6嘆寄与路遙、夜雪初積。
7翠尊易泣、紅萼無言耿相憶。
8長記曾携手処、千樹圧・西湖寒碧。
9又片片・吹尽也、幾時見得。
辛亥の冬、予は雪を載して石湖を詣ねた。止ど既月たち、簡を授されて句を索められた。且で新声を徴った。此の両曲が作た。石湖は不已も把玩しみ、工妓に之を肄習わせた、音節は諧婉く、乃で之を名づけて暗香・疎影と曰う。
1旧時の月の色、算い幾番我を照らしたろう、梅の辺で笛を吹くとき。
2玉人を喚び起こし、清寒さも不管いで与に攀摘った。
3何遜も而今は漸に老いて、都て忘却れた、春風のような詞筆も。
4但だ怪得るだけ、竹の外の疏な花は、香りも冷たく瑤席に入る。
5江べの国は、正ど寂寂。
6嘆く、寄与そうにも路は遙く、夜には雪も初めて積って。
7翠尊に易泣く、紅萼に無言で相憶を耿らかにする。
8長も記えている、曾て手を携えた処、千もの樹が圧していた、西湖の寒々した碧を。
9又た片片と吹き尽くされてしまった、幾時また見得るだろう。
紹熙二年(1191)、三十七歳の作。
⇒『宋詞三百首』193暗香(姜夔)
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