2023年2月26日日曜日

白石歌042揚州慢

揚州慢

淳熙丙申至日、余過維揚。夜雪初霽、萕麦弥望。入其城則四顧蕭条、寒水自碧、暮色漸起、戌角悲吟。余懐愴然、感慨今昔、因自度此曲。千岩老人以為有黍離之悲也。

1淮左名都、竹西佳処、解鞍少駐初程。
2過春風十里、尽萕麦青青。
3自胡馬窺江去後、廃池喬木、猶厭言兵。
4漸黄昏、清角吹寒、都在空城。

5杜郎俊賞、算而今・重到須驚、縦豆蔻詞工、青楼夢好、難賦深情。
6二十四橋仍在、波心蕩・冷月無声。
7念橋辺紅葉、年年知為誰生。

淳熙丙申の至日(とうじ)、余(わたし)は維揚を過(とお)った。夜に雪が初(ちょう)ど霽(や)み、萕(なずな)や麦が弥(とお)く望(みわた)せた。其(そ)の城(まち)に入ると則(そこ)は四顧(どこもかしこ)も蕭条(さび)しく、寒(つめ)たい水(かわ)は自(それだけ)が碧(みどり)で、暮色が漸(しだい)に起(た)ち、戌角(つのぶえ)が悲しげに吟(ひび)いた。余(わたし)は懐(きもち)が愴然(しょんぼり)して、今昔を感慨し、因(そこ)で自(みずか)ら此の曲を度(つく)った。千岩老人は黍離之(の)悲しみが有ると以為(おも)ったそうだ(也)。

 

1淮左(わいすいひがし)の名都、竹西の佳(よ)き処、鞍を解いて少(しば)らく初程(たびのはじめ)を駐(やす)む。

2春風十里を過ぎる、尽(どこ)も萕と麦が青青として。

3胡馬(えびす)が江(かわ)を窺いて去ってから(自)後、廃れた池の喬木は、猶(いま)も兵を言うのは厭(うとま)しげ。

4漸(しだい)に黄昏(たそがれ)て、清角(つのぶえ)が寒々と吹(わた)る、空(ひっそり)した城(まち)の都在(すみずみ)に。

 

5杜郎(さん)は俊賞(ほめ)たが、算(おそら)く而今(いま)重(ふたた)び到(き)たら驚くに須(ちがいな)い、縦(たと)え豆蔻(ナツメグ)の詞の工みさ、青楼(たかどの)の夢の好(すばら)しさでも、深い情(おもい)を賦(よ)むのは難しかろう。

6二十四橋は仍(ま)だ在(あ)る、波の心(ちゅうしん)が蕩(たゆた)い、冷たい月は無声(おともな)い。

7念(おも)う、橋の辺(そば)の紅葉(しゃくやく)は、くる年もくる年も誰の為に生(さ)くのか知っているのか、と。


淳熙三年(1176)、二十二歳の作。 

⇒『宋詞三百首』190揚州慢(姜夔)

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