淳熙丙申至日、余過維揚。夜雪初霽、萕麦弥望。入其城則四顧蕭条、寒水自碧、暮色漸起、戌角悲吟。余懐愴然、感慨今昔、因自度此曲。千岩老人以為有黍離之悲也。
1淮左名都、竹西佳処、解鞍少駐初程。
2過春風十里、尽萕麦青青。
3自胡馬窺江去後、廃池喬木、猶厭言兵。
4漸黄昏、清角吹寒、都在空城。
5杜郎俊賞、算而今・重到須驚、縦豆蔻詞工、青楼夢好、難賦深情。
6二十四橋仍在、波心蕩・冷月無声。
7念橋辺紅葉、年年知為誰生。
淳熙丙申の至日、余は維揚を過った。夜に雪が初ど霽み、萕や麦が弥く望せた。其の城に入ると則は四顧も蕭条しく、寒たい水は自が碧で、暮色が漸に起ち、戌角が悲しげに吟いた。余は懐が愴然して、今昔を感慨し、因で自ら此の曲を度った。千岩老人は黍離之悲しみが有ると以為ったそうだ。
1淮左の名都、竹西の佳き処、鞍を解いて少らく初程を駐む。
2春風十里を過ぎる、尽も萕と麦が青青として。
3胡馬が江を窺いて去ってから後、廃れた池の喬木は、猶も兵を言うのは厭しげ。
4漸に黄昏て、清角が寒々と吹る、空した城の都在に。
5杜郎は俊賞たが、算く而今重び到たら驚くに須い、縦え豆蔻の詞の工みさ、青楼の夢の好しさでも、深い情を賦むのは難しかろう。
6二十四橋は仍だ在る、波の心が蕩い、冷たい月は無声い。
7念う、橋の辺の紅葉は、くる年もくる年も誰の為に生くのか知っているのか、と。
淳熙三年(1176)、二十二歳の作。
⇒『宋詞三百首』190揚州慢(姜夔)
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