丙午人日、余客長沙別駕之観政堂。堂下曲沼、沼西負古垣、有盧橘幽篁、一径深曲。穿径而南、官梅数十株、如椒如菽、或紅破白露、枝影扶疏。着屐蒼苔細石間、野興横生、亟命駕登定王台、乱湘流入麓山。湘雲低昂、湘波容与、興尽悲来、酔吟成調。
1古城陰、有官梅幾許、紅萼未宜簪。
2池面冰膠、牆腰雪老、雲意還又沈沈。
3翠藤共・閑穿径竹、漸笑語、驚起臥沙禽。
4野老林泉、故王台榭、呼喚登臨。
5南去北来何事、蕩湘雲楚水、目極傷心。
6朱戸黏鶏、金盤簇燕、空嘆時序侵尋。
7記曾共・西楼雅集、想垂柳・還裊万糸金。
8待得帰鞍到時、只怕春深。
丙午の人日、余は長沙の別駕の観政堂に客となった。堂の下は曲沼で、沼の西は古い垣を負にし、盧橘と幽篁が有り、一径は深まで曲がっていく。径を穿って而ま南へいくと、官梅が数十株、「如椒」や「如菽」、或いは「紅破白露」が、枝影も扶疏にあった。屐で蒼苔や細石の間を着むと、野興が横生れ、亟に駕に命じて定王台に登り、湘流を乱って麓山に入った。湘の雲は低く昂く、湘の波は容与として、興が尽き悲しく来ったので、醉って吟じて調が成きた。
1古城の陰、官梅は幾許有るのか、紅萼は簪には未宜い。
2池面は冰が膠り、牆腰には雪が老り、雲の意も還又た沈沈。
3翠の藤と共じ径竹を閑かに穿けると、漸く笑語で、臥ていた沙の禽が驚起た。
4野老の林や泉は、故の王の台榭、呼喚いながら登って臨めた。
5南北へ去来するのは何事、蕩々たる湘の雲、楚の水、目極やれば傷心しい。
6朱戸に黏られた鶏、金盤に簇められた燕、時序が侵尋れるのを空しく嘆く。
7記す、曾て共に西楼で雅集った、想う、垂柳が還り万の糸金を裊らしていた。
8鞍を帰して到く時を待得ってほしい、只だ怕く春は深ろうとしているだろう。
淳熙十三年(1186)、三十二歳の作。
⇒『宋詞三百首』197一萼紅(姜夔)
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