2023年2月26日日曜日

白石歌033琵琶仙

琵琶仙

呉都賦云、戸蔵煙浦、家具画船。惟呉興為然、春遊之盛、西湖未能過也。己酉歳、余与蕭時父載酒南郭、感遇成歌。

1双槳来時、有人似・旧曲桃根桃葉。
2歌扇軽約飛花、蛾眉正奇絶。
3春漸遠、汀洲自緑、更添了・幾声啼鴃。
4十里揚州、三生杜牧、前事休説。

5又還是・宮燭分煙、奈愁裏匆匆換時節。
6都把一襟芳思、与空階楡莢。
7千万縷・蔵鴉細柳、為玉尊、起舞回雪。
8想見西出陽関、故人初別。

 

「呉都賦」に「戸は煙浦を蔵し、家は画船を具う」と云う。惟(た)だ呉興だけは為然(そのとおり)で、春遊の(之)盛んなさまは、西湖も未能過(およばな)いのだ(也)。己酉の歳(とし)、余(わたし)は蕭時父と与(とも)に酒を載(も)って南郭へいき、感遇(かんじることがあ)って歌を成(つく)った。

 

1双(ふたつ)の槳(かい)で来た時、旧(むかし)の曲(はなまち)の桃根・桃葉の似(よう)な人が有(い)た。

2歌扇(おうぎ)で軽(そっ)と飛花(やなぎのわた)を約(おさ)え、蛾眉が正(まこと)に奇絶(すばら)しかった。

3春は漸(しだい)に遠のき、汀洲(みぎわ)は自緑(あお)く、更に幾声か啼く鴃(カッコウ)が添了(くわわ)った。

4十里の揚州、三生の杜牧、前事(むかしのこと)は休説(いうま)い。

 

5又還是(また)も宮(きゅうでん)の燭(ひ)で煙を分かつ、愁いの裏(うち)に匆匆(そそくさ)と時節を換(あらため)めることを奈(どうしようもな)い。

6一襟(むね)の芳思(おもい)を都(すべ)て把(と)って、空(ひっそり)した階(きざはし)の楡の莢に与えよう。

7千万の縷(えだ)で鴉を蔵(かく)す細い柳は、玉尊(さかだる)の為に、起舞(まいだ)して雪を回(めぐ)らす。

8想見(まる)で西へと陽関を出る、故人と初めて別れるよう。


淳熙十六年(1189)、三十五歳の作。

⇒『宋詞三百首』187琵琶仙(姜夔)

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