2023年2月26日日曜日

白石歌023霓裳中序第一

霓裳中序第一

丙午歳、留長沙、登祝融、因得其祠神之曲、曰黄帝塩・蘇合香。又於楽工故書中得商調霓裳曲十八闋、皆虚譜無辞。按沈氏楽律、霓裳道調、此乃商調。楽天詩云、散序六闋、此特両闋。未知孰是。然音節閑雅、不類今曲。予不暇尽作、作中序一闋伝於世。余方羈遊、感此古音、不自知其辞之怨抑也。

1亭皋正望極、乱落江蓮帰未得。
2多病却無気力。
3況紈扇漸疏、羅衣初索。
4流光過隙、嘆杏梁、双燕如客。
5人何在。
6一簾淡月、仿佛照顔色。

7幽寂。
8乱蛩吟壁、動庾信・清愁似織。
9沈思年少浪跡、笛裏関山、柳下坊陌。
10墜紅無信息、漫暗水・涓涓溜碧。
11飄零久、而今何意、酔臥酒壚側。

丙午の歳、長沙に(とど)まり、祝融に登って、(そこ)で其の祠神()曲を得た、黄帝塩・蘇合香と()う。又た楽工の(ふる)い書の中()商調の「霓裳」曲十八闋を得たが、()虚譜(おんぷのみ)(うた)が無い。沈氏の楽律に()れば、「霓裳」は道調で、(これ)は乃ち商調である。楽天の詩には「散序六闋」と云うが、此れは()だ両闋である。(いず)れが(ただしい)未知(わからな)い。(けれど)音節(メロディ)閑雅(みやび)で、今曲には不類(にていな)い。(わたし)(すべ)て作る不暇(ひまがな)いので、中序一闋を作って世()伝える。(わたし)(ちょう)羈遊(たび)をしていて、此の(いにしえ)の音に感じ、不自知(おもわ)ず其の(うた)()怨抑(しず)()

 

亭皋(きし)(ちょう)望極(とおくなが)めれば、乱れ()(かわ)の蓮、帰ることは未得(まだできな)い。

2多病で(むし)ろ気力も無くて。

(まし)紈扇(うちわ)(しだい)(まれ)となり、羅衣(うすぎぬ)初索(たたまれよ)うとして。

流光(つきひ)は隙を(とお)って、杏梁(のき)双燕(つばめ)(たびびと)(よう)なのが嘆かれる。

(あのひと)何在(いずこ)

一簾(すだれ)に淡い月、仿佛(まる)顔色(すがた)を照らすような。

 

幽寂(さび)しい。

(むやみ)(コオロギ)が壁でき()き、庾信(わたし)(こころうご)かされる、清愁(うれい)(はたお)(よう)

年少(わか)浪跡(ころ)沈思(おもいだ)す、(ふえのね)(なか)の関山、柳の下の坊陌(みち)

10()った(はな)のように信息(しらせ)は無く、(みだり)に暗く水は涓涓(さらさら)溜碧(なが)れる。

11久しく飄零(さまよ)い、而今(いま)(どのよう)(おもい)か、酒の()(そば)に酔って臥す。


淳熙十三年(1186)、三十二歳の作。

⇒『宋詞三百首』198霓裳中序第一(姜夔)

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