2023年2月27日月曜日

白石歌025斉天楽

斉天楽

丙辰歳、与張功甫会飲張達可之堂、聞屋壁間蟋蟀有声、功甫約余同賦、以授歌者。功父先成、辞甚美、予徘徊茉莉花間、仰見秋月、頓起幽思、尋亦得此。蟋蟀、中都呼為促織、善斗、好事者或以二三十万銭致一枚、鏤象歯為楼観以貯之。

1庾郎先自吟愁賦、淒淒更聞私語。
2露湿銅鋪、苔侵石井、都是曾聴伊処。
3哀音似訴、正思婦無眠、起尋機杼。
4曲曲屏山、夜涼独自甚情緒。

5西窓又吹暗雨。
6為誰頻断続、相和砧杵。
7候館迎秋、離宮吊月、別有傷心無数。
8豳詩漫与、笑籬落呼灯、世間児女。
9写入琴糸、一声声更苦。

 

丙辰の歳、張功甫と与(とも)に張達可の(之)堂に会(あつま)って飲んだ、屋(へや)の壁の間から蟋蟀が有声(な)くのが聞こえ、功甫は余(わたし)と同(いっしょ)に賦(つく)って、以(そし)て歌者(かしゅ)に授けようと約(やくそく)した。功父が先に成(でき)て、辞(ことば)は甚だ美しく、予(わたし)は茉莉(ジャスミン)の花の間を徘徊し、秋の月を仰ぎ見て、頓起(しばし)幽思(だまってかんがえ)ては、尋(ある)いて亦(ま)た此(これ)を得た。蟋蟀は、中都(みやこ)では促織と呼為(よ)んで、善(よ)く斗(たたか)うので、好事者は或いは二三十万銭で(以)一枚(いっぴき)を致(もとめ)るし、象歯(ぞうげ)を鏤(ほ)って楼観(たかどの)に為(つく)って以(そし)て之(これ)を貯(たくわえ)る。

 

1庾郎(ゆしん)は先ず自(みずか)ら愁賦を吟じ、淒淒(さび)しくも更に私語(ひそひそばなし)を聞いた。

2露が銅の鋪(わ)を湿らせ、苔が石の井(いど)に侵(の)びている、都是(すべ)て曾(かつ)て伊(こおろぎ)を聴いた処。

3哀しい音(こえ)は訴えている似(よう)、正(ちょう)ど思(ものおも)う婦(じょせい)が無眠(ねむれな)くて、起きて機杼(はた)を尋ねる。

4曲曲(おりかさな)る屏山(びょうぶ)、夜は涼(つめ)たく、独自(ひと)りで甚(なん)たる情緒(おもい)。

 

5西の窓に又た暗く雨が吹く。

6誰の為(せい)で頻(しきり)に断続(とぎれ)れるのか、砧杵(きぬた)が相和(こたえ)る。

7候館(たびやど)は秋を迎え、離宮に月が吊(かか)り、別(ほか)に傷心(かなしみ)が無数に有る。

8豳詩(コオロギのうた)は漫(うっかり)と与(つくら)れた、笑(おか)しい、籬(まがき)の落(した)で灯を呼ぶ、世間の児女(こども)たちは。

9琴糸(ことのね)に写入(のせ)よう、一声声(どのおと)も更に苦しい。


寧宗慶元二年(1196)、四十二歳の作。

⇒『宋詞三百首』186斉天楽(姜夔)

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