北固楼次稼軒韻
1雲隔迷楼、苔封很石、人向何処。
2数騎秋烟、一篙寒汐、千古空来去。
3使君心在、蒼厓緑嶂、苦被北門留住。
4有尊中酒・差可飲、大旗尽繡熊虎。
5前身諸葛、来遊此地、数語便酬三顧。
6楼外冥冥、江皋隠隠・認得征西路。
7中原生聚、神京耆老、南望長淮金鼓。
8問当時・依依種柳、至今在否。
北固楼、稼軒の韻に次す
1雲は迷楼を隔て、苔は很石を封じ、あのころの人は何処に。
2数騎は秋の烟に、一篙は寒々しい汐に、千古も空しく来去して。
3使君の心は蒼厓緑嶂に在り、(身は)北門に留住められて苦しむ。
4尊中に酒が有り、差に飲めるし、大旗には熊虎を繡い尽くした。
5前身の諸葛は、此の地に来て遊び、数語で便ち三顧に酬いた。
6楼の外は冥冥く、江の皋は隠隠しているが、征西の路が認得る。
7中原の生聚、神京の耆老、南にむかって長(江)・淮(水)の金鼓を望んでいる。
8問たい、当時の依依い(あなたが自ら)種えた柳は、今に至っても在るかどうか。
嘉泰四年(1204)、五十歳の作。 0辛棄疾「永遇楽 京口北固楼懐古」詞に次韻したもの。北固楼は鎮江城北の北固山にあり、長江に臨み、三方を川が廻っている。辛棄疾はこの年の秋に鎮江に来て、詞を作り、白石が和した。 1迷楼:隋の煬帝が建てた楼の名。揚州にあり、鎮江の北固山と長江を隔てて対峙する。 很石:北固山の甘露寺にある奇石、形が伏した羊に似ている。劉備(一説に諸葛亮)がこの石に座り、孫権と曹操を論じた、と伝えられる。 3使君:漢代の州郡の刺史の呼称。ここは辛棄疾をいう。 蒼厓緑嶂:青々とした山々。 北門:北辺を守る門、京口をいう。 4尊中酒:桓温の故事。『晋書』「郄超伝」に桓温が「京口酒可飲、兵可用」と言った、とある。ここは辛棄疾をいう。 差可:なんとかできる。『世説新語』「品藻」に「人問撫軍、殷浩談竟何如。答曰、不能勝人、差可献酬群心」とある。 熊虎:猛将の喩え。 5数語便酬三顧:三顧の礼で迎えられた諸葛亮は、たった数語の軍事指南で、礼に酬いた。辛棄疾も同じように活躍するだろう、の意。 6征西路:諸葛亮は西へ益州を取りに行った。東晋の桓温は征西大将軍として京口一帯で軍を率いた。ここは辛棄疾が北伐することを喩える。 7生聚:人民。 長淮:長江と淮水。 金鼓:軍隊で軍令に用いる。 8依依種柳:『晋書』「桓温伝」に「桓温自江陵北行、経少時所種柳樹、皆十囲、蹴然歎曰、木猶如此、人何以堪」とある。
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