括蒼煙雨楼、石湖居士所造也。風景似越之蓬萊閣、而山勢環繞・峰嶺高秀過之。観居士題顔、且歌其所作虞美人、夔亦作一解。
1闌干表立蒼龍背、三面攙天翠。
2東遊纔上小蓬萊、不見此楼煙雨未応回。
3而今指点来時路、却是冥濛処。
4老仙鶴馭幾時帰、未必山川城郭是耶非。
括蒼の煙雨楼は、石湖居士が造ったものである。風景は越の蓬萊閣に似て、而て山の(気)勢は環繞り、峰嶺は高秀く之を過ぎる。居士の題いた顔を観て、且く其が所作った「虞美人」を歌い、夔も亦た一解を作った。
1闌干は蒼龍の背に表立ち、三面に天の翠を攙える。
2東へ遊んで小さな蓬萊(閣)に纔く上った、此の楼の煙雨を不見ければ未応回い。
3而今、来た時の路を指点すと、却ず是も冥濛した処。
4老仙は鶴に馭って幾時帰るだろう、未必も山川の城郭は是かどうか(きっと昔のままだ)。
嘉泰四年(1204)、五十歳の作。 0括蒼:県名。処州(浙江麗水東南)にあり、括蒼山から名前がついた。 煙雨楼:『浙江通志』処州「喩良能旧州治記」に「由好渓堂層級三休至煙雨楼。憑闌四顧、目与天遠」とある。 石湖居士:范成大、字は致能。『石湖詩集』「桂林中秋賦」に「戊子守括蒼」の句がある。戊子は孝宗の乾道四年(1168)。 蓬萊閣:会稽の臥龍山にある。 居士題顔:范成大が煙雨楼の額を書いたこと。『浙江通志』に『方輿勝覧』を引いて「煙雨楼在州治、范致能書」とある。 一解:一首に同じ。范成大に「虞美人」四首があるが、煙雨楼には言及されていない。 4老仙:范成大をいう。 鶴馭:鶴に乗って飛ぶ。死ぬこと。 「山川城郭」句:丁令威の故事。遼東の人で、仙術を霊虚山に学び、のちに鶴に化して遼東へ帰り、城門の華柱に止まった。ある若者が弓をひいて射ようとすると、空中を舞いながら「鳥あり、鳥あり、丁令威。家を去ること千年、今始めて帰る。城廓は故の如くにして人民は非なり。なんぞ仙を学ばざるか、塚々たり」と言って、飛び去った。『捜神後記』に見える。
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