2023年3月3日金曜日

白石歌061虞美人

虞美人

括蒼煙雨楼、石湖居士所造也。風景似越之蓬萊閣、而山勢環繞・峰嶺高秀過之。観居士題顔、且歌其所作虞美人、夔亦作一解。

1闌干表立蒼龍背、三面攙天翠。
2東遊纔上小蓬萊、不見此楼煙雨未応回。

3而今指点来時路、却是冥濛処。
4老仙鶴馭幾時帰、未必山川城郭是耶非。

括蒼の煙雨楼は、石湖居士が造ったもの()ある()。風景は越()蓬萊閣に似て、(そし)て山の(気)勢は環繞(めぐ)り、峰嶺(みね)高秀(たか)(これ)を過ぎる。居士の()いた(がく)を観て、(しばら)(そのひと)所作(つく)った「虞美人」を歌い、(わたし)()一解(いっしゅ)を作った。

 

1闌干は蒼龍(みね)の背に表立()ち、三面に天の(みどり)(ささ)える。

2東へ遊んで小さな蓬萊(閣)に(ようや)く上った、此の楼の煙雨を不見(みな)ければ未応回(もどれな)い。

 

而今(いま)来た時の路を指点(ゆびさ)すと、(おもいがけ)(これ)冥濛(ぼんやり)した処。

老仙(あのかた)は鶴に()って幾時(いつ)帰るだろう、未必(かならずし)も山川の城郭は(むかしのまま)()どう()(きっと昔のままだ)。


嘉泰四年(1204)、五十歳の作。 0括蒼:県名。処州(浙江麗水東南)にあり、括蒼山から名前がついた。 煙雨楼:『浙江通志』処州「喩良能旧州治記」に「由好渓堂層級三休至煙雨楼。憑闌四顧、目与天遠」とある。 石湖居士:范成大、字は致能。『石湖詩集』「桂林中秋賦」に「戊子守括蒼」の句がある。戊子は孝宗の乾道四年(1168)。 蓬萊閣:会稽の臥龍山にある。 居士題顔:范成大が煙雨楼の額を書いたこと。『浙江通志』に『方輿勝覧』を引いて「煙雨楼在州治、范致能書」とある。 一解:一首に同じ。范成大に「虞美人」四首があるが、煙雨楼には言及されていない。 4老仙:范成大をいう。 鶴馭:鶴に乗って飛ぶ。死ぬこと。 「山川城郭」句:丁令威の故事。遼東の人で、仙術を霊虚山に学び、のちに鶴に化して遼東へ帰り、城門の華柱に止まった。ある若者が弓をひいて射ようとすると、空中を舞いながら「鳥あり、鳥あり、丁令威。家を去ること千年、今始めて帰る。城廓は故の如くにして人民は非なり。なんぞ仙を学ばざるか、塚々たり」と言って、飛び去った。『捜神後記』に見える。

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