黄木香贈辛稼軒
1花中慣識、圧架玲瓏雪、乍見緗蕤間琅葉。
2恨春風将了、染額人帰、留得箇・裊裊垂香帯月。
3鵞児真似酒、我愛幽芳、還比酴醿又嬌絶。
4自種古松根、待看黄龍、乱飛上・蒼髯五鬛。
5更老仙・添与筆端春、敢喚起桃花、問誰優劣。
黄木香を辛稼軒に贈る
1花の中で識慣れている、架を圧する玲瓏い雪、乍と見える緗蕤の間の琅葉。
2春風が将了って、染額人が帰るのを恨み、裊裊と香りを垂れ月を帯びたのが箇つ留得っている。
3鵞児は真に酒に似て、我は幽芳を愛するが、還た酴醿と比べても又た嬌絶しい。
4古い松の根に種えてから、看るのを待っていた、黄龍が、蒼髯五鬛に乱れ飛び上がるのを。
5更に老仙が筆端で春を添えて、敢えて桃花を喚起んだら、誰に優劣を問いましょうか。
嘉泰四年(1204)、五十歳の作。 0黄木香:モッコウ。蔓生植物で、晩春に開花し、色は白か黄で、香りが強い。 1緗蕤:淡い黄色の花の蕊が下に垂れている。「緗」は淡い黄色。「蕤」は草木の花が垂れ下がるさま。 琅葉:玉のように美しい葉。「琅玕」は玉(ぎょく)のような石。 2染額人:美女のこと。額に黄色い化粧をする風習があった。 3「鵞児」句:モッコウの淡い黄色が、鵞黄酒の色に似ている。杜甫「舟前小鵞児」に「鵞児黄似酒、対酒愛新鵞」とある。 酴醿:トキンイバラ、ボタンイバラ。初夏に開花し、香りが強い。もとは酒の名。蘇軾「酴醿花菩薩泉」に「酴醿不争春、寂寞開最晩」とある。 4黄龍:咲き茂る黄木香を喩える。 蒼髯五鬛:松の葉を喩える。「蒼髯」は青いヒゲ。「五鬛」は五鬛松。馬の鬛(たてがみ)のように細い松の針。『酉陽雑俎』に段成式が私邸を建て、「大堂前有五鬛松」とある。
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