2023年3月3日金曜日

白石歌058洞仙歌

洞仙歌

黄木香贈辛稼軒

1花中慣識、圧架玲瓏雪、乍見緗蕤間琅葉。
2恨春風将了、染額人帰、留得箇・裊裊垂香帯月。

3鵞児真似酒、我愛幽芳、還比酴醿又嬌絶。
4自種古松根、待看黄龍、乱飛上・蒼髯五鬛。
5更老仙・添与筆端春、敢喚起桃花、問誰優劣。
 

黄木香辛稼軒に贈る

 

1花の中で()慣れている、(たな)を圧する玲瓏(きよ)い雪、(ふっ)と見える緗蕤(はなぶさ)琅葉()

2春風が将了(おわ)って染額人(びじょ)が帰るのを恨み、裊裊(なよなよ)垂れ帯びのが(ひと)留得(のこ)っている。

 

鵞児(はな)(まこと)に酒に似て、(わたし)幽芳(かおり)を愛するが、()た酴醿と比べても又た嬌絶(なまめか)しい

(ふる)い松の根に種えてから()()るのを待っていた、黄龍が、蒼髯五(まつのは)のを

5更に老仙(あなたさま)筆端(ふでさき)で春を添えて、敢えて桃花を喚起()んだら、誰に優劣を問いましょうか。


嘉泰四年(1204)、五十歳の作。 0黄木香:モッコウ。蔓生植物で、晩春に開花し、色は白か黄で、香りが強い。 1緗蕤:淡い黄色の花の蕊が下に垂れている。「緗」は淡い黄色。「蕤」は草木の花が垂れ下がるさま。 琅葉:玉のように美しい葉。「琅玕」は玉(ぎょく)のような石。 2染額人:美女のこと。額に黄色い化粧をする風習があった。 3「鵞児」句:モッコウの淡い黄色が、鵞黄酒の色に似ている。杜甫「舟前小鵞児」に「鵞児黄似酒、対酒愛新鵞」とある。 酴醿:トキンイバラ、ボタンイバラ。初夏に開花し、香りが強い。もとは酒の名。蘇軾「酴醿花菩薩泉」に「酴醿不争春、寂寞開最晩」とある。 4黄龍:咲き茂る黄木香を喩える。 蒼髯五鬛:松の葉を喩える。「蒼髯」は青いヒゲ。「五鬛」は五鬛松。馬の鬛(たてがみ)のように細い松の針。『酉陽雑俎』に段成式が私邸を建て、「大堂前有五鬛松」とある。

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