2023年3月6日月曜日

白石歌060永遇楽

永遇楽

次韻辛克清先生

1我与先生、夙期已久、人間無此。
2不学楊郎、南山種豆、十一徵微利。
3雲霄直上、諸公袞袞、乃作道辺李。
4五千言・老来受用、肯教造物児戯。

5東岡記得、同来胥宇、歳月幾何難計。
6柳老悲桓、松高対阮、未辦為鄰地。
7長干白下、青楼朱閣、往往夢中槐蟻。
8却不如・窪尊放満、老夫未酔。

 

辛克清先生に次韻する

 

1我と(与)先生は、夙期(つと)に(知り合い)已に久しいこと、人間(このよ)で此(これ)よりほかは無い。

2楊郎が、南山に豆を種え、十に一の微(わず)かな利を徵することは不学(まなばな)い。

3雲霄(くも)は直(まっす)ぐに上り、諸公は袞袞(たくさん)、乃(そこ)で(私たちは)道辺(みちばた)の苦い李と作(な)った。

4五千言は老来(お)いて受用(やくにた)つ、造物の児戯にさせ(教)ることを肯(よし)としようか(しない)。

 

5東岡(おか)で記得(おもいだ)す、同(いっしょ)に来て宇(やしき)を胥(み)た、歳月は幾何(どれほど)か計り難い。

6柳は老いて桓(温)を悲しませ、松は高く阮(籍ら)に対(むか)うが、(あなたの)鄰地(となり)に為(な)る未辦(すべがな)い。

7長干白下(みやこ)の、青楼朱閣(おやしき)は、往往にして夢の中の槐蟻(ありづか)。

8却(むし)ろ窪尊(さかずき)を放満(みた)したほうが不如(まし)だが、老夫(おいぼれ)は未酔(よえな)い。


制作年、未詳。 0辛克清:名は泌、漢陽の詩人。白石の詩001「以長歌意無極好為老夫聴為韻奉別沔鄂親友」其四、参照。 1夙期:早くから親交があった。 2楊郎:漢代の楊惲。司馬遷の外孫で、強直な性格で、誣告されて処刑された。『漢書』「楊敞伝」に見える。 「南山種豆」二句:楊惲が免職された後、彼に戒めの手紙を書いた友人がいたが、その返事として「報孫会宗書」で牢屋での不満を書き、「田彼南山、蕪穢不治、種一頃豆、落而為萁」「幸有余禄、方糴賤販貴、遂什一之利」などとある。 3諸公袞袞:宦官が多いこと。「袞袞」は多いさま。 道辺苦李:道ばたで誰にも採られない李はきっと苦い、という故事。『晋書』「王戎伝」に見える。 4五千言:『老子』を指す。『史記』「老子韓非伝」に「於是老子乃著書上下篇、言道徳之意五千余言而去」とある。 造物:万物を創造する天地宇宙。『荘子』に見える言葉。 5東岡:広く山の丘をいう。 胥宇:屋敷を観察する。『詩経』大雅「綿」に「爰及 姜女、聿来胥宇」とあり、毛伝に「胥、相。宇、居也」、孔穎達疏に「自来相土地之可居者」という。 6柳老悲桓:『世説新語』に見える桓温が柳を植えた故事。 松高対阮:竹林の七賢。杜甫「絶句四首」其一に「梅熟喜同朱老喫、松高擬対阮生論」とある。 7長干:金陵の地名。李白に「長干行」がある。 白下:南京の別称。唐代に金陵を白下と呼んだ。 夢中槐蟻:『南柯太守伝』の故事。夢で槐安国に行き、栄華を極めたが、目覚めてみると槐樹の下の蟻の穴だった話。 8窪尊:酒器。唐の李適之が峴山に登り、山頂の石が酒器に似ていたので、窪尊亭を建てた。

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