2023年3月2日木曜日

白石歌056念奴嬌

念奴嬌

毀舎後作

1昔遊未遠、記湘皋聞瑟、澧浦捐褋。
2因覔孤山林処士、来踏梅根残雪。
3獠女供花、傖児行酒、臥看青門轍、一邱吾老、可憐情事空切。

4曾見海作桑田、仙人雲表、笑汝真癡絶。
5説与依依王謝燕、応有涼風時節。
6越只青山、呉惟芳草、万古皆沈滅。
7繞枝三匝、白頭歌尽明月。

 

(いえ)()いた後に作る

 

(むかし)遊んだのはつい未遠(このまえ)(おもいだ)す、湘(水)の(きし)で瑟を聞き、澧(水)の(いりえ)(ひとえ)()てた。

2孤山に林処士を(さが)そうと()、ここへ来て、梅の根に残る雪を踏んだ。

獠女(げじょ)傖児(げぼく)(そそ)ぐ、臥して青門の(わだち)()れば、一邱(おか)(わたし)は老い、可憐な情事は(むな)しく(とだ)えた。

 

4海は桑田(くわばたけ)()るのを(かつ)て見た、仙人は雲の(そと)で、汝は(まこと)癡絶(せけんしらず)よと、笑った。

依依(ぐずぐず)と王謝の燕に説与(かた)る、(きっ)と涼風の時節が有ろう、と。

6越には()だ青山、呉には()だ芳草、万古、皆な沈滅(ほろ)んだ。

7枝を三(かい)(めぐ)って、白頭(しらがあたま)で明月を歌い尽くす。


嘉泰四年(1204)、五十歳の作。 0毀舎:この年、杭州の住居が火災で焼失したことを言う。『宋史』巻六十三「五行志」に、この年三月「行都大火、燔尚書省、枢密院、六部、右丞相府。火作時、分数道、燔二千七十余家」とある。 1湘皋:湘水の浜。 聞瑟:屈原「遠遊」に「使湘霊鼓瑟兮、令海若舞馮夷」とある。蕭徳藻が姪を白石に嫁がせたことをいう。 澧浦:澧水の浜。澧水は湖南四大水系の一つで、東へ流れて洞庭湖に入る。『楚辞』「湘夫人」に「捐余袂兮江中、遺余褋兮澧浦」とある。 捐褋:単衣を捨てること。「褋」は単衣。。ここは妻子と別れたことをいう。 2林処士:北宋の林逋。西湖孤山に隠棲した。 3獠女:醜い侍女。 傖児:粗暴な童僕。 青門:杭州の城東門、俗称は菜市門。 一邱:身をかくす粗末な地。『太平御覧』巻七十九「苻子」に、黄帝が容成子に「吾将釣於一壑、棲於一邱」と言った、とある。 4海作桑田:世事の変化の大きいこと。葛洪『神仙伝』「王遠」に「麻姑自説云、接待以来、已見東海三為桑田」とある。 癡絶:《『晋書』「顧愷之伝」に「愷之在桓温府、常云、愷之体中痴黠各半、合而論之、正得平耳。故俗伝愷之有三絶、才絶、画絶、痴絶」とある。のちに「痴絶」は拙をかくす、世俗に合流しない、の意。底抜けの痴。 5王謝燕:東晋時代の貴族、王導や謝安が大家族で南京の烏衣巷に住み、後にそこを訪れた唐の劉禹錫が「烏衣巷」で「旧時王謝堂前燕、飛入尋常百姓家」と詠んだ。 7繞枝三匝:曹操「短歌行」に「月明星稀、烏鵲南飛。繞樹三匝、何枝可依」とある。

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