1与客携壺、梅花過了、夜来風雨。
2幽禽自語、啄香心、度牆去。
3春衣都是柔荑剪、尚沾惹・残茸半縷。
4悵玉鈿似掃、朱門深閉、再見無路。
5凝竚、曾遊処。
6但繫馬垂楊、認郎鸚鵡。
7揚州夢覚、彩雲飛過何許。
8多情須倩梁間燕、問吟袖・弓腰在否。
9怎知道・悞了人、年少自恁虚度。
1客と壺を携ってでかけると、梅の花は過了っていた、夜来の風雨で。
2幽禽は自り語り、香心を啄み、牆を度って去く。
3春の衣は都是が柔荑で剪ったもの、尚だ沾惹いている、残茸の半縷。
4悵しい、玉鈿は掃かれた似、朱門は深く閉ざされ、再び見いたくても路は無い。
5凝と竚む、曾て遊んだ処。
6但だ馬を繫いだ垂楊と、郎を認めてくれる鸚鵡だけ。
7揚州の夢は覚め、彩雲が飛過って何許にいるのだろう。
8多情は須と梁の間の燕に倩んで、吟袖の弓腰は(健)在か否か問ねてもらおう。
9(あのころ)怎て知道っただろう、人を悞了て、年少を自ら恁に虚しく度すことになろう、とは。
慶元三年(1197)、四十三歳の作。 2幽禽:幽谷の鳥。 3柔荑:白く柔らかい茅の芽。美人の手の喩え。『詩経』衛風「碩人」に「手如柔荑、膚如凝脂」とある。 残茸:刺繍した針の糸口。 4玉鈿:女性の首飾り。ここは散った梅の花の喩え。 6鸚鵡:人の言葉をよく真似るので、人を覚えているだろう、の意。劉禹錫「詠鸚鵡」に「頻学喚人縁性慧、偏能識主為情通」とある。 7揚州夢覚:若いころの奔放な色恋。杜牧「遣懐」に「十年一覚揚州夢、贏得青楼薄幸名」とある。 彩雲:美しい事物や薄命な佳人の象徴。李白「宮中行楽詞」に「只愁歌舞散、化作彩雲飛」とある。 8吟袖:詩人の袖。ここは作者をいう。 弓腰:女性の弓のような腰つき。舞の上手な美女。唐・段成式『酉陽雑俎』前集に、士人が酔って寝てしまい、目が覚めてみると女性が「舞袖弓腰渾忘却、蛾眉空帯九秋霜」と歌っていた、とある。 9恁:このように。
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