2023年2月28日火曜日

白石歌015鷓鴣天⑦

鷓鴣天

十六夜出

1輦路珠簾両行垂、千枝銀燭舞僛僛。
2東風歴歴紅楼下、誰識三生杜牧之。

3歓正好、夜何其、明朝春過小桃枝。
4鼓声漸遠行人散、惆悵帰来有月知。

 

十六夜に(でかけ)

 

輦路(おおどおり)は珠簾が両行(にれつ)に垂れ、千枝(たくさん)銀燭(ちょうちん)に舞は僛僛(ゆらゆら)

東風(はるかぜ)歴歴(あかる)い、紅楼(たかどの)の下、誰が()ろう、三生の杜牧之を。

 

3歓びが(まさ)(すばら)しいとき、夜は何其(どのくらい)、明朝は春が小さな桃の枝を(とおりすぎ)るだろう。

4鼓の(おと)(しだい)に遠くなり、(みちゆ)く人は散り、惆悵(さび)しく帰来(かえ)ってきた、月は知って()る。


慶元三年(1197)、四十三歳の作。 1輦路:天子の車が通る大通り。 僛僛:酔って舞が傾くさま。『詩経』小雅「賓之初筵」に「賓既酔止、載号載呶。乱我籧豆、屡舞僛僛」とあり、毛伝に「僛僛、舞不能自正也」とある。のちにゆらゆら舞うさま。 2歴歴:はっきりしている。 紅楼:華麗な建物。多くは女性がいるところ。 三生:仏教語で前生・今生・来生の三生。ここは前生をいう。 杜牧之:唐の杜牧、字は牧之。白石は033「琵琶仙」でも「十里揚州、三生杜牧、前事休説」と、杜牧に自分をなぞらえている。 3夜何其:夜はどれほど深いのか。『詩経』に見える語。「其」は語尾助詞。

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