十六夜出
1輦路珠簾両行垂、千枝銀燭舞僛僛。
2東風歴歴紅楼下、誰識三生杜牧之。
3歓正好、夜何其、明朝春過小桃枝。
4鼓声漸遠行人散、惆悵帰来有月知。
十六夜に出た
1輦路は珠簾が両行に垂れ、千枝の銀燭に舞は僛僛。
2東風が歴歴い、紅楼の下、誰が識ろう、三生の杜牧之を。
3歓びが正に好しいとき、夜は何其、明朝は春が小さな桃の枝を過るだろう。
4鼓の声が漸に遠くなり、行く人は散り、惆悵しく帰来ってきた、月は知って有る。
慶元三年(1197)、四十三歳の作。 1輦路:天子の車が通る大通り。 僛僛:酔って舞が傾くさま。『詩経』小雅「賓之初筵」に「賓既酔止、載号載呶。乱我籧豆、屡舞僛僛」とあり、毛伝に「僛僛、舞不能自正也」とある。のちにゆらゆら舞うさま。 2歴歴:はっきりしている。 紅楼:華麗な建物。多くは女性がいるところ。 三生:仏教語で前生・今生・来生の三生。ここは前生をいう。 杜牧之:唐の杜牧、字は牧之。白石は033「琵琶仙」でも「十里揚州、三生杜牧、前事休説」と、杜牧に自分をなぞらえている。 3夜何其:夜はどれほど深いのか。『詩経』に見える語。「其」は語尾助詞。
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