題銭氏渓月
1与鷗為客、緑野留吟屐。
2両行柳垂陰、是当日・仙翁手植。
3一亭寂寞、烟外帯愁横。
4荷苒苒、展涼雲・横臥虹尺。
5才因老尽、秀句君休覔。
6万緑正迷人、更愁入・山陽夜笛。
7百年心事、惟有玉闌知。
8吟未了、放船回、月下空相憶。
銭氏の渓月に題いた
1鷗と客と為り、緑野に吟屐を留めた。
2両行に柳が陰を垂らしている、是は当日、仙翁が手づから植えたもの。
3一亭は寂寞しげに、烟の外に愁いを帯びて横ぶ。
4荷が苒苒と、涼しい雲が展り、虹尺に横臥く。
5才は老いに因って尽きた、秀句を君よ、覔るのは休てほしい。
6万緑は正に人を迷わせる、更に愁いて山陽の夜笛を入けば。
7百年の心事を、惟だ玉闌だけが知って有る。
8吟じ未了って、船を放回す、月の下、空しく相憶しながら。
嘉泰三年(1203)、四十九歳の作。 0銭氏渓月:銭良臣の園林。銭良臣、字は友魏、紹興二十四年(1154)の進士。華亭(いまの上海市松江区)に邸宅と庭園があった。十五年前に范成大に引き合わされて、銭良臣と交流があった。 1緑野:唐の裴度の別荘の名。ここは銭氏渓月を指す。 吟屐:詩を吟じる人の歩く音。「屐」は木製の下駄だが、ここは広く靴をいう。 4苒苒:草木が茂るさま。 虹:橋の美称。 5才因老尽:南朝の江淹が晩年に文才が尽きたとして、人々が「江郎才尽」と言った故事。 6山陽夜笛:魏晋の時、向秀が山陽の旧居で隣人の笛の音を聞き、亡友の嵇康・呂安を思い出して「思旧譜」を作った故事。 7玉闌:亭の欄干。ここにもたれた人々の愁いを、手すりだけが知っている、の意。
0 件のコメント:
コメントを投稿