1古簾空、墜月皎。
2坐久西窓人悄。
3蛩吟苦・漸漏水丁丁、箭壺催暁。
4引涼颸、動翠葆。
5露脚斜飛雲表。
6因嗟念・似去国情懐、暮帆烟草。
7帯眼銷磨、為近日愁多頓老。
8衛娘何在、宋玉帰来、両地暗縈繞。
9揺落江楓早。
10嫩約無憑、幽夢又杳、但盈盈、涙灑単衣、今夕何夕恨未了。
1古い簾は空しくかかる、月は皎く墜ちて。
2久らく西の窓に坐っている人は悄している。
3蛩の吟は苦しげ、漸に漏の水が丁丁、箭壺は暁を催す。
4涼颸を引きこみ、翠葆を動かす。
5露脚が斜めに飛ぶ、雲の表。
6因で嗟念く、似で国を去る情懐、暮れの帆は烟る草に。
7帯眼が銷磨い、近日の多い愁いの為に頓に老いてしまった。
8衛娘は何在だろう、宋玉は帰って来たのに、両地で暗と縈繞る。
9江の楓は早と揺落る。
10嫩約は無憑く、幽夢も又た杳い、但だ盈盈と、涙は単衣を灑らす、今夕何夕に恨みは未了い。
紹熙二年(1191)、三十七歳の作。 2悄:憂うさま。『詩経』陳風「月出」に「月出皎兮、佼人僚兮。舒窈糾兮、労心悄兮」とある。 3漏:水時計。 丁丁:水の垂れる音。 箭:時間を刻んだものさし。 4涼颸:涼風。 翠葆:翠の羽で飾った車蓋。ここは青竹をいう。周邦彦「隔浦蓮近拍」に「新篁揺動翠葆」とある。 5露脚:雨のこと。李賀「李憑箜篌引」に「呉質不眠倚桂樹、露脚斜飛湿寒兔」とある。 雲表:雲の外。 7帯眼:帯にある孔。帯の目。 8衛娘:漢の武帝の皇后、衛子夫。のちに美女をいう。ここは白石が想っていた合肥の女性。 宋玉:戦国の辞賦家。「高唐賦」「登徒子好色賦」などがある。 10嫩約:はじめの約束。 今夕何夕:今夜はどのような夜だろう。良い夜だ、の意。『詩経』唐風「綢繆」に「今夕何夕、見此良人」とある。
0 件のコメント:
コメントを投稿