2023年2月25日土曜日

白石歌051秋宵吟

秋宵吟〈越調〉

1古簾空、墜月皎。
2坐久西窓人悄。
3蛩吟苦・漸漏水丁丁、箭壺催暁。
4引涼颸、動翠葆。
5露脚斜飛雲表。
6因嗟念・似去国情懐、暮帆烟草。

7帯眼銷磨、為近日愁多頓老。
8衛娘何在、宋玉帰来、両地暗縈繞。
9揺落江楓早。
10嫩約無憑、幽夢又杳、但盈盈、涙灑単衣、今夕何夕恨未了。

1古い簾は(むな)しくかかる、月は(しろ)()ちて。

(なが)らく西の(まどべ)(すわ)っている人は(ひっそり)している。

(こおろぎ)(こえ)は苦しげ、(しだい)(みずどけい)の水が丁丁(ぽたぽた)箭壺(じこく)は暁を(うなが)す。

(すずかぜ)きこみ翠葆(たけ)を動かす。

露脚(あめ)が斜めに飛ぶ、雲の(そと)

(そこ)嗟念(なげ)く、(まる)(ふるさと)を去る情懐(おもい)、暮れの帆は(けぶ)る草に。

 

帯眼(おびのめ)銷磨(ゆる)近日(ちかごろ)の多い愁いの為に(にわか)に老いてしまった。

衛娘(あのひと)何在(どこ)だろう、宋玉(わたし)は帰って来たのに、両地(はなればなれ)(ひっそり)縈繞(めぐ)

(かわ)の楓は(さっさ)揺落(かれおち)る。

10嫩約(やくそく)無憑(あてな)く、幽夢(ゆめ)()(くら)い、()盈盈(はらはら)と、涙は単衣(ひとえ)()らす、今夕何夕(すばらしいよる)に恨みは未了(つきな)い。


紹熙二年(1191)、三十七歳の作。 2悄:憂うさま。『詩経』陳風「月出」に「月出皎兮、佼人僚兮。舒窈糾兮、労心悄兮」とある。 3漏:水時計。 丁丁:水の垂れる音。 箭:時間を刻んだものさし。 4涼颸:涼風。 翠葆:翠の羽で飾った車蓋。ここは青竹をいう。周邦彦「隔浦蓮近拍」に「新篁揺動翠葆」とある。 5露脚:雨のこと。李賀「李憑箜篌引」に「呉質不眠倚桂樹、露脚斜飛湿寒兔」とある。 雲表:雲の外。 7帯眼:帯にある孔。帯の目。 8衛娘:漢の武帝の皇后、衛子夫。のちに美女をいう。ここは白石が想っていた合肥の女性。 宋玉:戦国の辞賦家。「高唐賦」「登徒子好色賦」などがある。 10嫩約:はじめの約束。 今夕何夕:今夜はどのような夜だろう。良い夜だ、の意。『詩経』唐風「綢繆」に「今夕何夕、見此良人」とある。

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