2023年2月22日水曜日

白石歌045石湖仙

石湖仙〈越調〉

    寿石湖居士

1松江烟浦、是千古三高、遊衍佳処。
2須信石湖仙、似鴟夷翩然引去。
3浮雲安在、我自愛緑香紅舞。
4容与。
5看世間幾度今古。

6盧溝旧曾駐馬、為黄花閑吟秀句。
7見説胡児、也学綸巾欹雨。
8玉友金蕉、玉人金縷、緩移箏柱。
9聞好語、明年定在槐府。

 

石湖居士を寿(おいわい)する

 

1松江の(けぶ)(いりえ)(ここ)千古(むかし)の三高が、遊衍(あそ)んだ()(ところ)

須信(きっ)と石湖仙が、鴟夷の(よう)翩然(さっそう)引去(いんきょ)している

3浮雲は(どこ)()るやら、(わたし)緑香紅舞(ハスのはな)を自愛する。

容与(ゆったり)と。

5世間の幾度もの今古(としつき)を看ながら。

 

6盧溝では旧曾(むかし)駐めて、黄花(きく)の為に秀句を閑吟()んだ。

見説()いたところでは胡児(えびす)も、()綸巾(ずきん)で雨を()けることを(まね)た、とか。

玉友(さけ)金蕉(さかずき)玉人(びじょ)金縷(きょく)(ゆっくり)箏柱(ことじ)(うご)かす。

()(はなし)を聞きました、明年には(きっ)と槐府に()ることでしょう。


淳熙十四年(1187)、三十三歳。 0石湖居士:范成大の号。 1松江:呉淞江の古称。蘇州河ともいう。黄浦江の主要な支流で、太湖の瓜涇口を源として発し、黄浦江に合流する。 三高:呉江に三高祠がある。春秋時代の越の范蠡、晋の張翰、唐の陸亀蒙、三人の呉の人を祀る。宋代に建てられ、范成大に「三高祠記」がある。白石の詩066「三高祠」、参照。 遊衍:思うままに遊ぶこと。『詩経』大雅「板」に「昊天曰旦、及爾游衍」とあり、毛伝に「游、行。衍、溢也」という。 2鴟夷:范蠡の号。越王勾践を輔けて呉を滅ぼした後、退いて斉で鴟夷子皮と名前を変えて商売を行い、巨万の富を得た。 3浮雲:関心に値しないものの喩え。『論語』「述而」に「不義而富且貴、於我如浮雲」とある。 6「盧溝」二句:孝宗乾道六年(1170)、范成大は使者として金へ行った。当時、金は北京に都を置いていた。盧溝は北京にある橋。范成大の「水調歌頭(燕山九日作)」詞に「黄花為我、一笑不管鬢霜羞」とある。また「盧溝燕賓館」詩には「雪満西山把菊看」の句がある。 7「見説胡児」二句:金の人々が范成大の文人たる姿に感化されて頭巾を真似した故事。『宋史』巻三八六「范成大伝」に見える。「欹雨」は、郭泰(字は林宗)が雨に遇い、頭巾の一角が折れたが、郭泰を慕う人々がそれを真似てわざと一角を折って「林宗巾」と称した故事。『後漢書』「郭泰伝」に見える。 8玉友:酒の名。 金蕉:酒杯の名。 玉人:美人。 金縷:曲調の名。梅堯臣「一日曲」に「東風若見郎、重為歌金縷」とある。 緩移箏柱:柱(ことじ)を動かして調弦し、箏曲を弾く。弾かない時は、弦が緩むのを避けるために柱は外しておく。 9槐府:学士院の中にある槐庁。『夢渓筆談』に「学士院第三庁学士閤子、当前有一巨槐、素号槐庁。旧伝居此閤者、多至入相」とある。

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