2023年2月4日土曜日

白石詩016送王孟玉帰山陰

送王孟玉帰山陰

1淮南雪落雲繞戍、
2王郎鳴鞭獵狐兎。
3問君本是山陰人、
4何不扁舟剡渓去。
5人生楽事将無同、
6知君此心如太空。
7只今去踏龍尾道、
8也似寒江蓑笠翁。
9鑑湖一曲荷花浦、
10君不帰来花有語。
11旧宅応添竹幾竿、
12到家不覚秋如許。
13十年雪裏看淮南、
14聚米能作淮南山。
15籌辺妙処須急吐、
16政自不容修竹閑。
17人道長江無六月、
18日光正射青蘆葉。
19何以贈君濯炎熱、
20雪即是詩詩是雪。

 

王孟玉が山陰に帰るのを(みおく)

 

1淮南では雪が()り、雲が(とりで)(かこ)んでいる、

2王(くん)は鞭を鳴らして狐や兎を()る。

3君に(たずね)るが、「(もと)(きみ)は山陰の人、

(どうし)扁舟(こぶね)で剡渓に不去(いかな)いのか」と。

5「人生の楽しみ事は、将無同(にたようなもの)だよ」という、

6君の()の心は太空の(よう)なものだと(わか)った。

只今(いま)()って龍尾のような道を踏み、

()た寒江の蓑笠の翁の(よう)

9鑑湖の一曲(いちぐう)(ハス)の花さく(いりえ)

10君が不帰来(かえってこな)と、花は(いいたいこと)が有るだろう。

11旧宅には竹が幾竿か(ふえ)ているにちがいない()

12家に到れば秋は如許(いかばかり)であるか不覚(わからな)い。

13十年を雪の(なか)、淮南を看たから、

14米を(あつ)めて淮南山を作ることができる()だろう。

15籌辺(へんきょう)の妙処は(すぐ)(はきだ)べき()で、

16政自(まさ)修竹(ちくりん)(しず)けさを不容(ゆるさな)い。

17人は長江に六月は無いと()うが、

18日光は(まさ)に青い蘆の葉を射る。

19何を以て君に贈り、炎熱を濯いでもらおうか、

20雪は即ち()れ詩、詩は()れ雪だ。


紹熙元年(1190)、三十六歳の作。 0王孟玉:王璆、南宋の医家。字は孟玉、号は是斎、山陰(浙江省)の人。。淮南幕官、漢陽太守を歴任し、公務のあいまに医薬を学び、『是斎百一選方』二十巻を刊行した。いま抄本が伝わる。 1淮南:淮河以南、長江以北の地域。 4扁舟剡渓去:晋の王徽之の故事。山陰に住んでいたが、冬のある雪の夜、興がわいて小舟で剡渓まで戴安道を訪ねたが、門まで来て会わずに引き返した。理由を聞かれて、「一緒に月を見ようとやってきたが、興が尽きた」と答えた。『世説新語』「任誕篇」に見える。 5将無同:たぶん同じようなものだろう、の意。阮修(字は宣子。阮籍の甥)が、老荘と聖教の違いを尋ねられた時に答えた言葉。『世説新語』「文学篇」に見える。 7龍尾道:山陰(紹興)にある臥龍山。白石詩028「同朴翁登卧龍山」に「龍尾回平野」とある。 8寒江蓑笠翁:柳宗元「江雪」に「孤舟蓑笠翁、独釣寒江雪」とある。 9鑑湖:鏡湖・南湖・長湖ともいう。山陰にある。 14聚米:馬援が米をあつめて山や谷を作って形勢を示し、作戦を伝えた故事。『後漢書』「馬援伝」に見える。 15籌辺:辺境の軍事を画策する。 17長江無六月:長江流域が涼しく、夏がないこと。楊万里「初二月苦熱」詩に「人言長江無六月、我言六月無長江」とある。

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