2023年2月25日土曜日

白石歌039解連環

解連環

1玉鞭重倚、却沈吟未上、又縈離思。
2為大喬能撥春風、小喬妙移箏、雁啼秋水。
3柳怯雲鬆、更何必・十分梳洗。
4道郎携羽扇、那日隔簾、半面曾記。

5西窓夜涼雨霽、歎幽歓未足、何事軽棄。
6問後約・空指薔薇、算如此溪山、甚時重至。
7水駅灯昏、又見在・曲屏近底。
8念唯有・夜来皓月、照伊自睡。

 

玉鞭(むち)に重ねて(もた)れ、(おもいがけ)ず沈吟して未上(すすめな)い、()(わか)れの思いを(めぐ)

2大喬は(うま)春風(びわ)()き、小喬は(じょうず)に箏を(ととの)え、雁啼(ねいろ)は秋の(かわ)だから()

3柳のような(こしつき)と雲のような(かみ)、更に(どうし)て十分に(くしけず)(あら)(ひつよう)があろうか。

4「(あなた)は羽扇を(てにと)って、()の日、簾を隔てていた、あの半面(すがた)曾記(おぼえ)ています」と()う。

 

5西の(まどべ)に夜は涼しく雨は()れた、幽歓(よろこび)未足(たりな)い、何事も軽々と棄てられたことを歎く。

6後の(やくそく)を問えば、空しく薔薇を指さして、(きっ)と此の(たに)や山の(よう)に、甚時(いつ)(ふたた)()る、という。

(かわぞい)の駅の灯は昏い、()見在(みえ)る、曲屏(びょうぶ)近底(めのまえ)に。

(おも)う、()だ夜に()って(しろ)い月が()て、(あのひと)(ひとり)(ねむ)っているのを照らしているのだろう、と。


紹熙二年(1191)、三十七歳の作。 2大喬・小喬:三国呉の二人の美女。大喬(橋)は孫策の妻、小喬(橋)は周瑜の妻。『三国志』呉志「周瑜伝」に「時得橋公両女、皆国色也。策自納大橋、瑜納小橋」とある。ここは合肥にいる白石の恋人をいう。 撥春風:琵琶を弾くこと。黄庭堅「次韻答曹子方雑言」に「侍児琵琶春風手」とある。 雁啼:古箏を弾くこと。柱(ことじ)が雁の群れのように並ぶことから。 3柳怯:たおやかな腰つき。 雲鬆:豊かな髪。 4半面曾記:初めて会った時の印象が深く忘れないこと。後漢の応奉が、扉の間から顔の半分をちらりと見ただけの人を、数十年後に道で会ったときに覚えていた故事。『後漢書』「応奉伝」注に見える。 6指薔薇:薔薇の花を指して期待する。杜牧「留贈」に「不用鏡前空有涙、薔薇花謝即帰来」とある。

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