越中歳暮、聞簫鼓感懐。
1畳鼓夜寒、垂灯春浅、匆匆時事如許。
2倦遊歓意少、俛仰悲今古。
3江淹又吟恨賦、記当時・送君南浦。
4万里乾坤、百年身世、唯有此情苦。
5揚州柳垂官路、有軽盈換馬、端正窺戸。
6酒醒明月下、夢逐潮声去。
7文章信美知何用、謾贏得・天涯羈旅。
8教説与、春来要・尋花伴侶。
越中での歳の暮れ、簫鼓を聞いて懐いを感じた。
1畳なる鼓のおとに夜は寒々しい、灯を垂らして春は浅い、匆匆と時事は如許。
2遊び倦れて歓意は少なく、俛仰と今古を悲しむ。
3江淹も又た「恨賦」を吟じた、記す、当時、君を南浦で送った。
4万里の乾坤、百年の身世、唯だ此の苦しい情だけが有る。
5揚州は柳が官路に垂れ、軽盈な換馬、端正な窺戸が有る。
6酒は明月の下で醒め、夢は潮の声逐って去る。
7文章が信に美しいとて、何の用があろうか、謾に贏得す、天涯での羈旅。
8説与せてくれ、春が来たら、花を尋ねて伴侶にしよう、と。
紹熙四年(1193)、三十九歳の作。 0詞題注に、「此の曲は双調。世に別に大石調一曲有り」という。 越中:浙江紹興、春秋時代の越国が会稽(紹興)に都を置いた。 1畳鼓:鳴り続ける鼓の音。 垂灯:彩灯を掛けて新年を迎える準備をする。 2俛仰:王羲之「蘭亭集序」に「向之所欣、俯仰之間、已為陳跡、猶不能不以之興懐」とある。 3江淹:字は文通。「恨賦」「別賦」などを作った。 南浦:送別の地をいう。江淹「別賦」に「春草碧色、春水緑波。送君南浦、傷如之何」とある。 5軽盈:ここは、たおやかな女性をいう。 換馬:妓女のこと。古楽府に「愛妾換馬」があり、魏の曹彰に愛妾を駿馬と交換した故事がある。 端正:顔立ちの美しい女性。 窺戸:戸口から顔をのぞかせている。周邦彦「瑞龍吟」詞に「因念個人癡小、乍窺門戸」とある。
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