2023年2月21日火曜日

白石歌029眉嫵

眉嫵〈一名百宜嬌〉

    戯仲遠

1看垂楊連苑、杜若侵沙、愁損未帰眼。
2信馬青楼去、重簾下、娉婷人妙飛燕。
3翠樽共款、聴艶歌・郎意先感。
4便携手・月地雲階裏、愛良夜微暖。

5無限風流疎散、有暗蔵弓履、偸寄香翰。
6明日聞津鼓、湘江上・催人還解春纜。
7乱紅万点、悵断魂・烟水遙遠。
8又争似相携、乗一舸鎮長見。

 

仲遠に戯れる

 

垂楊(やなぎ)(にわ)に連なり、杜若(かきつばた)(きし)を侵すのが()る、未帰(かえらな)い(あの人を待つ)眼は愁いて損ねる。

2馬に(まか)せて青楼に()ったのだ、重なる簾の(もと)(うつく)しい人妙(たおやか)飛燕(まいひめ)のもとへ

翠樽(さけ)を共に(たの)しみ、艶っぽい歌を聴いて、(おとこ)(きもち)が先に(うご)かされ

便(そこ)で手を()り、月地雲階(せんきょう)(なか)良夜(よる)微暖(ぬくもり)を愛した。

 

無限(かぎりな)い風流も疎散()き、(ひそか)弓履(くつ)(かく)し、(こっそり)香翰(ラブレター)を寄せて()る。

6明日(の夕暮れ)には(わたしば)の鼓を聞いて、湘江の(ほとり)で、人を(せきたて)()た春の(ともづな)を解かせる。

万点(いくつ)もの()(はなびら)悵断(かな)しい魂、(けぶ)(かわ)は遙か遠い。

()争似(どうして)相携(てをとりあ)って、一舸(ふね)に乗り鎭長(とこしえ)()いましょう、と。


淳熙十三年(1186)、三十二歳の作。 0眉嫵:別名を百宜嬌という。 仲遠:白石の友人、呉興(浙江湖州)の人。 1杜若:香草の名。別名を杜蘅という。カキツバタ。『楚辞』「九歌・湘君」に「采芳洲兮杜若、将以遺兮下女」とある。 2青楼:妓楼をいう。 飛燕:趙飛燕。漢の成帝の皇后で、舞を善くした。 4月地雲階:仙境をいう。唐・牛僧孺「周秦行紀」に「香風引到大羅天、月地雲階拝洞仙」とある。 5弓履:女性の履く刺繍のある靴。 香翰:香りのある書簡。ラブレターをいう。 6春纜:船を繋ぐともづな。 8舸:大きな船。 鎮長:久しい。石孝友「洞仙歌(芙蓉院宇)」に「尽従他、烏兔促年華、看緑鬢朱顔、鎮長依旧」とある。

0 件のコメント:

コメントを投稿