2023年2月21日火曜日

白石歌022浣渓沙①

浣溪沙

予女須家沔之山陽、左白湖、右雲夢。春水方生、浸数千里、冬寒沙露、衰草入雲。丙午之秋、予与安甥或蕩舟採菱、或挙火罝兔、或観魚簺下。山行野吟、自適其適、憑虚悵望、因賦此闋。

1著酒行行満袂風、草枯霜鶻落晴空。
2銷魂都在夕陽中。

3恨入四弦人欲老、夢尋千駅意難通。
4当時何似莫匆匆。

予(わたし)の女須(あね)の家は沔の(之)山陽(村)で、左は白湖、右は雲夢。春になると水が方(まさ)に生じ、数千里を浸し、冬は寒く沙(きし)には露がおり、衰草(かれくさ)が雲に入(つらな)る。丙午の(之)秋、予(わたし)は甥の安と(与)或(あるとき)は舟を蕩(うか)べて菱を採り、或(あるとき)は火を挙げて兔を罝(とら)え、或(あるとき)は簺(やな)の下の魚を観にいった。山を行(ある)いて野で吟じ、其の適(きままさ)を自ら適(たの)しみ、虚(おか)に憑(よ)って悵望(ながめわた)し、因(そこ)で此の闋(し)を賦(つく)った。

 

1酒(気)を著(おび)て行行(あるいてい)くと袂(たもと)満(いっぱい)に風、草は枯れ、霜(あき)の鶻(ハヤブサ)は晴れた空を落(おり)てくる。

2銷(さび)しい魂は都(すべ)て夕陽の中に在(あ)る。

 

3恨みを四弦(びわ)に入(のせ)て人は老いよう(欲)としている、夢で千の駅を尋ねても意(きもち)は通じ難い。

4当時(あのとき)、匆匆(あわただ)しく(別れ)なければ(莫)何似(よかった)のに。


淳熙十三年(1186)、三十二歳の作。 0女須:姉。楚の人は姉を「嬃」という。『楚辞』「離騒」に「女嬃之嬋媛兮、申申其詈予」とあり、王逸の注に「女嬃、屈原姊也」という。 沔:沔州(湖北武漢市漢陽)。古くは楚国に属した。 山陽:村の名。九真山(漢陽西南)の南にあった。 白湖:別名を太白湖といい、漢陽の西にある。 雲夢:雲夢沢。洞庭湖周辺の湖沼群。 丙午:淳熙十三年。 安甥:姉の子、名を安という。 罝:網をしかけて捕らえる。『詩経』周南「兔罝」に「粛粛兔罝、施于中林」とある。 簺:竹や木で作った柵、水中にしかけて魚を捕る。 自適其適:悠々自適に暮らすさま。 虚:「墟」に同じ。大きな丘。「憑虚」は広々とした処に立つさま。 1霜鶻:秋のハヤブサ。 3四弦:琵琶をいう。梁・簡文帝「生別離」に「別離四弦声、相思双笛引」とある。 4何似:「如何」、どのように。反語の語気で、「不如」の意。宋・朱淑真「愁懐」に「東君不与花為主、何似休生連理枝」とある。

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