予女須家沔之山陽、左白湖、右雲夢。春水方生、浸数千里、冬寒沙露、衰草入雲。丙午之秋、予与安甥或蕩舟採菱、或挙火罝兔、或観魚簺下。山行野吟、自適其適、憑虚悵望、因賦此闋。
1著酒行行満袂風、草枯霜鶻落晴空。
2銷魂都在夕陽中。
3恨入四弦人欲老、夢尋千駅意難通。
4当時何似莫匆匆。
予の女須の家は沔の山陽(村)で、左は白湖、右は雲夢。春になると水が方に生じ、数千里を浸し、冬は寒く沙には露がおり、衰草が雲に入る。丙午の秋、予は甥の安と或は舟を蕩べて菱を採り、或は火を挙げて兔を罝え、或は簺の下の魚を観にいった。山を行いて野で吟じ、其の適を自ら適しみ、虚に憑って悵望し、因で此の闋を賦った。
1酒(気)を著て行行くと袂満に風、草は枯れ、霜の鶻は晴れた空を落てくる。
2銷しい魂は都て夕陽の中に在る。
3恨みを四弦に入て人は老いようとしている、夢で千の駅を尋ねても意は通じ難い。
4当時、匆匆しく(別れ)なければ何似のに。
淳熙十三年(1186)、三十二歳の作。 0女須:姉。楚の人は姉を「嬃」という。『楚辞』「離騒」に「女嬃之嬋媛兮、申申其詈予」とあり、王逸の注に「女嬃、屈原姊也」という。 沔:沔州(湖北武漢市漢陽)。古くは楚国に属した。 山陽:村の名。九真山(漢陽西南)の南にあった。 白湖:別名を太白湖といい、漢陽の西にある。 雲夢:雲夢沢。洞庭湖周辺の湖沼群。 丙午:淳熙十三年。 安甥:姉の子、名を安という。 罝:網をしかけて捕らえる。『詩経』周南「兔罝」に「粛粛兔罝、施于中林」とある。 簺:竹や木で作った柵、水中にしかけて魚を捕る。 自適其適:悠々自適に暮らすさま。 虚:「墟」に同じ。大きな丘。「憑虚」は広々とした処に立つさま。 1霜鶻:秋のハヤブサ。 3四弦:琵琶をいう。梁・簡文帝「生別離」に「別離四弦声、相思双笛引」とある。 4何似:「如何」、どのように。反語の語気で、「不如」の意。宋・朱淑真「愁懐」に「東君不与花為主、何似休生連理枝」とある。
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