2023年2月6日月曜日

白石詩024契丹歌

契丹歌〈都下聞蕭総管自説其風土如此〉

1契丹家住雲沙中、
2耆車如水馬若龍。
3春来草色一万里、
4芍薬牡丹相間紅。
5大胡牽車小胡舞、
6弾胡琵琶調胡女。
7一春浪蕩不帰家、
8自有穹廬障風雨。
9平沙軟草天鵝肥、
10胡児千騎暁打囲。
11皁旗低昂囲漸急、
12驚作羊角凌空飛。
13海東健鶻健如許、
14韝上風生看一挙。
15万里追奔未可知、
16劃見紛紛落毛羽。
17平章俊味天下無、
18年年海上駆群胡。
19一鵝先得金百両、
20天使走送賢王廬。
21天鵝之飛鉄為翼、
22射生小児空看得。
23腹中驚怪有新薑、
24元是江南経宿食。

 

契丹の歌〈都下(みやこ)で蕭総管が其(かれら)の風土は此(こ)の如(よう)だと自ら説(かた)るのを聞いた〉

 

1契丹では家は(白)雲と(黄)沙の中に住み、

2耆車(くるま)は水の如(よう)、馬は龍の若(よう)。

3春が来ると草色(みどり)が一万里、

4芍薬や牡丹が相間(ぽつぽつ)と紅(あか)い。

5大胡(おとな)は車を牽き、小胡(わかもの)は舞い、

6胡琵琶を弾いて胡女(おんな)と調(たわむ)れる。

7一春(はるじゅう)浪蕩して家に不帰(かえらな)い、

8自(みずか)ら穹廬(てんまく)が有り、風雨を障(ふせ)ぐ。

9平らな沙(すな)と軟かい草、天鵝(コハクチョウ)は肥(ふと)り、

10胡児(おとこ)は千騎(うま)で暁(あけがた)に打囲(かり)にゆく。

11皁旗(くろはた)が低く昂(たか)く、囲みが漸(しだい)に急(きつ)くなり、

12驚いて羊角(つむじかぜ)を作(た)てて、空を凌(つ)いて飛んでゆく。

13海(みずうみ)の東の健鶻(ハヤブサ)は、如許(このように)に健(どうもう)で、

14韝(たかたぬき)の上に風が生じ、看(み)れば一挙に(舞い上がっている)。

15万里を追奔(おいかけ)ること未可知(どのくらい)か、

16劃見(み)れば紛紛(ぱらぱら)と毛羽(はね)が落ちている。

17俊(すばら)しい味を平章(ひょうてい)すると、天下にふたつと無い、

18年年(まいとし)、海(みずうみ)の上(ほとり)に群胡(おとこたち)を駆(はし)らせる。

19一鵝(コハクチョウ)を先(さいしょ)に得たものは、金百両、

20天使(つかい)が走って賢王(おう)の廬(てんまく)に送(とどけ)る。

21天鵝(コハクチョウ)の(之)飛ぶや、鉄を翼と為(な)し、

22射生(いて)の小児(こども)は空しく看得(み)るだけ。

23腹中に新しい薑(はじかみ)が有って驚怪(おどろ)いたそうだが、

24元は是(こ)れ江南で経宿(ひとやすみ)して食べたもの。


淳熙十四年(1187)、三十三歳の作か。 0蕭総管:蕭鷓巴(扎八)か。紹興末年に宋に投降した契丹人。 2耆車:未詳。 7浪蕩:あちこち放牧すること。 8穹廬:遊牧民族の天幕。 10打囲:大勢でしかける狩り。 11皁旗:黒い旗。 12羊角:旋風。『荘子』「逍遥遊」に「摶扶揺羊角而上者九万里」とあり、注に「旋風曲戻、猶如羊角」とある。 13健鶻:獰猛な鶻(ハヤブサ、クマタカ)。 14韝:たかたぬき。鷹狩りで、鷹を腕にとまらせるときに用いた革製の手袋。 17平章:評定する。 18海上:湖のほとり。 20天使:天子の使者。 賢王:匈奴の貴族の封号。左賢王、右賢王があり、大単于の国事を補佐した。『史記』「匈奴列伝」に「置左右賢王」とある。 22射生:射手。

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