1契丹家住雲沙中、
2耆車如水馬若龍。
3春来草色一万里、
4芍薬牡丹相間紅。
5大胡牽車小胡舞、
6弾胡琵琶調胡女。
7一春浪蕩不帰家、
8自有穹廬障風雨。
9平沙軟草天鵝肥、
10胡児千騎暁打囲。
11皁旗低昂囲漸急、
12驚作羊角凌空飛。
13海東健鶻健如許、
14韝上風生看一挙。
15万里追奔未可知、
16劃見紛紛落毛羽。
17平章俊味天下無、
18年年海上駆群胡。
19一鵝先得金百両、
20天使走送賢王廬。
21天鵝之飛鉄為翼、
22射生小児空看得。
23腹中驚怪有新薑、
24元是江南経宿食。
契丹の歌〈都下で蕭総管が其の風土は此の如だと自ら説るのを聞いた〉
1契丹では家は(白)雲と(黄)沙の中に住み、
2耆車は水の如、馬は龍の若。
3春が来ると草色が一万里、
4芍薬や牡丹が相間と紅い。
5大胡は車を牽き、小胡は舞い、
6胡琵琶を弾いて胡女と調れる。
7一春浪蕩して家に不帰い、
8自ら穹廬が有り、風雨を障ぐ。
9平らな沙と軟かい草、天鵝は肥り、
10胡児は千騎で暁に打囲にゆく。
11皁旗が低く昂く、囲みが漸に急くなり、
12驚いて羊角を作てて、空を凌いて飛んでゆく。
13海の東の健鶻は、如許に健で、
14韝の上に風が生じ、看れば一挙に(舞い上がっている)。
15万里を追奔ること未可知か、
16劃見れば紛紛と毛羽が落ちている。
17俊しい味を平章すると、天下にふたつと無い、
18年年、海の上に群胡を駆らせる。
19一鵝を先に得たものは、金百両、
20天使が走って賢王の廬に送る。
21天鵝の飛ぶや、鉄を翼と為し、
22射生の小児は空しく看得るだけ。
23腹中に新しい薑が有って驚怪いたそうだが、
24元は是れ江南で経宿して食べたもの。
淳熙十四年(1187)、三十三歳の作か。 0蕭総管:蕭鷓巴(扎八)か。紹興末年に宋に投降した契丹人。 2耆車:未詳。 7浪蕩:あちこち放牧すること。 8穹廬:遊牧民族の天幕。 10打囲:大勢でしかける狩り。 11皁旗:黒い旗。 12羊角:旋風。『荘子』「逍遥遊」に「摶扶揺羊角而上者九万里」とあり、注に「旋風曲戻、猶如羊角」とある。 13健鶻:獰猛な鶻(ハヤブサ、クマタカ)。 14韝:たかたぬき。鷹狩りで、鷹を腕にとまらせるときに用いた革製の手袋。 17平章:評定する。 18海上:湖のほとり。 20天使:天子の使者。 賢王:匈奴の貴族の封号。左賢王、右賢王があり、大単于の国事を補佐した。『史記』「匈奴列伝」に「置左右賢王」とある。 22射生:射手。
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