己酉歳客呉興、收灯夜闔戸無聊、兪商卿呼之不出、因記所見。
1春点疎梅雨後枝、剪灯心事峭寒時、市橋携手歩遅遅。
2蜜炬来時人更好、玉笙吹徹夜何其、東風落靨不成帰。
己酉の歳、呉興に客としていて、收灯の夜に戸を闔じて無聊だった、兪商卿は之を呼んだが不出いので、因で見た所を記す。
1春が疏な梅を点る、雨の後の枝に、灯(の芯)を剪りながらの心事、峭寒い時、市橋で手を携る、歩みは遅遅として。
2蜜炬が来る時、人々は更に好しむ、玉笙を吹き徹し、夜は何其る、東風が靨を落らしても(繰り出した人々は)不成帰い。
淳熙十六年(1189)、三十五歳の作。 0呉興:浙江湖州。 收灯:元宵節が過ぎた後、すなわち正月十六日の夜。孟元老『東京夢華録』に「至十九日収灯」とある。呉自牧『夢粱録』には「正月十五日元夕節……至十六夜収灯、舞隊方散」とある。 兪商卿:兪灝(1146~1231)、字は商卿、代々杭州にいたが、湖州烏程に移った。理宗宝慶二年に致仕し、西湖九里松に室を築いた。著に『青松居士集』がある。 1剪灯心事:灯のもとで昔話をする。李商隠「夜雨寄北」に「何当共翦西窓燭、却話巴山夜雨時」とある。 峭寒:春風が、肌にうすら寒く感じられるさま。「料」はなでる、「峭」はきびしい、の意。 2蜜炬:蠟燭。「蜜炬来時」は、蠟燭を手にして遊びに行く時、の意。 玉笙吹徹:笙を吹く音が已まない、の意。南唐・李璟「山花子」に「小楼吹徹玉笙寒」とある。 夜何其:夜はどのくらい更けたのか。『詩経』小雅「庭燎」に「夜如何其、夜未央」とある。 東風落靨:春風が梅の花びらを散らす喩え。「靨」は、えくぼ。
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