2023年2月24日金曜日

白石歌018酔吟商小品

酔吟商小品

石湖老人謂予云、琵琶有四曲、今不伝矣。曰濩索〈一曰濩弦〉梁州、転関緑腰、酔吟商湖渭州、歴弦薄媚也。予毎念之。辛亥之夏、予謁楊廷秀丈於金陵邸中、遇琵琶工解作酔吟商湖渭州、因求得品弦法、訳成此譜、実双声耳。

1又正是春帰、細柳暗黄千縷、暮鴉啼処。
2夢逐金鞍去。
3一点芳心休訴、琵琶解語。

石湖老人が予(わたし)に謂(い)うに、「琵琶に四曲が有り、今は不伝(つたわらな)いのだ(矣)。曰く、濩索〈一に濩弦と曰う〉梁州、転関緑腰、酔吟商湖渭州、歴弦薄媚である(也)」と云(い)う。予(わたし)は毎(いつ)も之(これ)を念(おも)った。辛亥の(之)夏、予(わたし)は楊廷秀丈(どの)に金陵邸中(やしきちゅう)で(於)謁(おめにかか)い、「酔吟商湖渭州」を解作(わか)る琵琶工に遇(あ)い、因(そこ)で品弦法(ゆびづかい)を求得(もと)めて、訳して此の譜が成(でき)た、実(ほんとう)は双声(にだん)だった(耳)。

 

1又(ま)た正に是(こ)れ春が帰(さ)ろうとしている、細い柳の暗い黄の千縷(えだ)、暮れの鴉が啼く処。

2夢であのひとの金鞍(うま)を逐去(おいかけ)る。

3一点(ささやか)な芳心(こころ)を訴えるのは休(やめ)よう、琵琶は語(ことば)を解(わか)るから。


紹熙二年(1191)、三十七歳の作。 0石湖老人:范成大、字は致能、号は石湖居士。白石より三十歳ほど年長で、この詞を書いた時、石湖は六十五歳。 琵琶有四曲:范成大「復用韻記昨日坐中劇談及趙家琵琶之妙」に「転関濩索都伝得、想見飛凰舞緑糸」とあり、自注に「正之云、転関六么濩索・梁州歴統薄媚……此四曲、承平時専入琵琶、今不復有能伝者」とある。 楊廷秀:楊万里、字は廷秀。 金陵邸:金陵の官府。この時、楊万里は江東漕だった。

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