其十一
1昔遊衡山上、
2未暁入幽谷。
3欲識所坐輿、
4横板挂両竹。
5状如秋千垂、
6高下不傾覆。
7登山九千丈、
8中道多仏屋。
9一峰高一峰、
10峰峰秀林木。
11仰看同来客、
12木末見冠服。
13高台石橋路、
14尋常雲所宿。
15下方雷雨時、
16此上自晴旭。
17紫蓋何突兀、
18万里在一目。
19余峰六七十、
20僅如翠浪矗。
21北有嬾瓚巌、
22大石庇樵牧。
23下窺半厓花、
24杯盂𤥨紅玉。
25飛雲身畔遇、
26攪之不盈掬。
27祝融最高絶、
28紫蓋不足録。
29俯視同仰観、
30蒼蒼万形伏。
31惟余岣嶁峰、
32南睇半空緑。
33髣髴認瀟湘、
34向嶽流屈曲。
35高処驚我魂、
36翻思宅平陸。
37其東有雷穴、
38霊異謹勿触。
39雲来綿世界、
40雲去一峰独。
41僧窓或留罅、
42雲入不可逐。
43絶頂横石梁、
44仙人有遺躅。
45山多金光草、
46夜半如列燭。
47霊薬不可尋、
48吁嗟帰太速。
其十一
1昔、衡山の上に遊び、
2未暁に幽谷に入った。
3所坐る輿を識ろうとしたら、
4横板を両ほんの竹に挂けたものだった。
5状は秋千が垂れている如で、
6高くなったり下くなったりしても不傾覆い。
7山を登ること九千丈、
8中道には仏屋が多い。
9一峰は高一峰くなり、
10峰峰も秀しい林木。
11同に来た客を仰ぎ看ると、
12木末に冠服が見える。
13高台に石橋の路、
14尋常に雲の宿る所。
15下方が雷雨の時も、
16此の上は自も晴旭れている。
17紫蓋(峰)は何と突兀え、
18万里が一目に在る。
19余の峰は六、七十、
20僅かに翠い浪が矗っている如。
21北には嬾瓚巌が有り、
22大石が樵や牧を庇っている。
23下を窺うと半厓に花があり、
24紅玉を琢いた杯盂のよう。
25飛雲が身の畔に遇るが、
26之を攪もうとしても不盈掬い。
27祝融(峰)は最も高絶く、
28紫蓋(峰)も録るに不足い。
29俯して視ても同じく仰ぎ観ても、
30蒼蒼と万形で伏している。
31惟だ余る岣嶁峰は、
32南へ半空の緑を睇せている。
33髣髴で認るようだ、瀟湘が、
34嶽に向って屈曲して流れてくるのが。
35高処は我の魂を驚かせ、
36翻って平陸に宅たいと思わせる。
37其の東には雷穴があり、
38霊異なので謹んで触れてはいけない。
39雲が来れば世界に綿り、
40雲が去れば一峰が独と。
41僧窓には或は罅が留って、
42雲が入っても逐うことができない。
43絶頂には石の梁が横り、
44仙人の遺躅が有る。
45山には金光草が多く、
46夜半は燭を列べたかの如。
47霊薬は不可尋い、
48吁嗟ながら太速と帰ったから。
17紫蓋:紫蓋峰。『水経注』巻三十八に「湘水又北逕衡山県東、山在西南、有三峰、一名紫蓋、一名石囷、一名芙蓉」とある。「紫蓋」は赤紫色の車蓋で、帝王の儀仗の一つ。帝王の車をいう。 21嬾瓚巌:黄庭堅「次韻元実病目」に「君不見、岳頭懶瓚一生禅、鼻涕垂頤渠不管」とあり、任淵注に「潭州南岳福巌寺、有懶残巌。按唐高僧号懶瓚、隠居衡山之頂石窟中」とある。 32睇:流し目。 44遺躅:遺跡。 45金光草:伝説の仙草で、食べると長寿になるという。
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