2023年2月28日火曜日

白石歌008鬲渓梅令

鬲渓梅令〈仙呂調〉

丙辰冬、自無錫帰、作此寓意。

1好花不与殢香人、浪𥻘𥻘。
2又恐春風帰去緑成隂、玉鈿何処尋。

3木蘭双槳夢中雲、水横陳。
4謾向孤山山下覔盈盈、翠禽啼一春。

丙辰の冬、無錫から()帰り、(これ)を作って意を(よせ)る。

 

好花(うめ)は香りに(よいしれ)(わたし)不与(あいてにしな)い、(なみ)𥻘𥻘(きらきら)して。

2又た恐れる、春風が帰去()って緑が(こかげ)を成したら、玉鈿(くびかざり)何処(どこ)(さが)そうか、と。

 

3木蘭の(ふた)つの(かい)横陳(よこたわ)る。

(みだり)に孤山の山下(むもと)()盈盈(あのひと)(さが)せば翠禽(カワセミ)一春(はるのひかり)()いた。


慶元二年(1196)、四十二歳の作。 1殢香人:花の香りに陶酔する人。 2「又恐春風」句:杜牧「歎花」に「自恨尋芳到已遅、往年曾見未開時。如今風擺花狼藉、緑葉成蔭子満枝」とある。 3横陳:横に寝る。宋玉「諷賦」に「内怵惕兮徂玉床、横自陳兮君之旁」とある。 4孤山:杭州西湖の孤山。梅の樹がたくさん植えられていた。 盈盈:たおやかな姿。ここは美人で梅を喩える。 翠禽:カワセミ。童子に化した伝説が『龍城録』に見える。白石047「疏影」の注、参照。

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