其七
1揚舲下大江、
2日日風雨雪。
3留滞鼇背洲、
4十日不得発。
5岸氷一尺厚、
6刀剣触舟楫。
7岸雪一丈深、
8屹如玉城堞。
9同舟二三士、
10頗壮不恐懾。
11蒙氊閉篷臥、
12波裏任傾側。
13晨興視氊上、
14積雪何皎潔。
15欲上不得梯、
16欲留岸頻裂。
17扳授始得上、
18幸有人見椄。
19荒村両三家、
20寒苦衣食缺。
21買豬祭波神、
22入市路已絶。
23如今得安坐、
24閑対妻児説。
其七
1揚舲で大江を下る、
2くる日もくる日も、風と雨と雪と。
3鼇背洲に留滞り、
4十日も発つことが不得かった。
5岸の氷は一尺の厚さ、
6刀剣が舟の楫に触るよう。
7岸の雪は一丈の深さ、
8屹ること如で玉の城の堞。
9同舟する二、三の士、
10頗る壮しく、不恐懾い。
11氊を蒙り篷を閉じて臥り、
12波の裏で傾側くに任せている。
13晨に興て氊の上を視ると、
14雪が積もって何と皎潔かったことか。
15上がろうにも梯が不得く、
16留まろうにも岸は頻りに(氷が)裂ける。
17扳授って始めて上ることができ、
18幸いにも人が有て椄られた。
19荒村に両、三の家、
20寒さに苦しみ衣食を缺いている。
21豬を買って波神を祭ろうとしたが、
22市に入るも路は已に絶えていた。
23如今は安らかに坐ることができ、
24閑かに妻と児に対って説っている。
1揚舲:「揚帆」に同じ。「舲」は窓のついた小さな船。やかた船。 3鼇背洲:范成大『呉船録』下に「九月丁酉朔泊江州、風作、終日不行、戊戌風小止、巳時発江州、……九十里至交石夾宿、己亥、発交夾宿、……又行食頃、通行八十里、泊鼇背洲、欲泊馬当、風甚不可前」とある。「鼇背」は大亀の背中。 11氊:毛氈。毛の敷物。 17扳授:他の物につかまりながら前へ進むさま。 21波神:水の神。
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