2023年1月29日日曜日

白石詩015昔遊詩⑥

昔遊詩

其六

1天寒白馬渡、〈漢川県界〉
2落日山陽村。
3是時無霜雪、
4万里風奔奔。
5外旃吹已透、
6内纊氷不温。
7吹馬馬欲倒、
8吹笠任飛翻。
9不見行路人、
10但見草木蕃。
11忽看野焼起、
12大焔焼乾坤。
13声如震雷震、
14勢若江湖吞。
15虎豹走散乱、
16麋鹿不足言。
17夜投野店宿、
18無壁亦無門。
19此行値三厄、
20幸得軀命存。
21明発見老姊、
22斗酒為招魂。

 

(そら)が寒い、白馬の(わたし)、〈漢川県界〉

落日(ゆうぐれ)の山の(みなみ)の村。

()の時、霜も雪も無く、

4万里を風が奔奔(ふきすさ)んでいた。

外旃(がいとう)は吹かれて(すで)(しみとお)り、

内纊(わたいれ)は氷で不温(つめた)い。

7馬に吹けば、馬は倒れそう()

8笠に吹けば、飛翻(ひるがえ)るが(まま)に。

行路(みちゆ)く人は不見(みえな)い、

10()だ草木の(しげ)るのだけが見える。

11(ふっ)と野焼が起こるのが()えた、

12大きな(ほのお)乾坤(てんち)を焼く。

13(おと)震雷(かみなり)の震える(よう)

14勢いは江湖を吞むが(ごと)く。

15虎や豹は(にげ)散乱(ちりぢり)に、

16(おおじか)や鹿は言うまでもな(不足)い。

17夜に野店(はたご)に投宿したが、

18壁は無く()た門も無い。

19()(たび)では三つの(わざわい)()ったが、

20幸いにも軀命(いのち)(のこ)すことができ()た。

21(あす)()(あね)()い、

22斗酒(さけ)でわたしの(ため)招魂(ねぎら)ってくれるだろう。


1白馬渡:原注にいう漢川県は、漢陽軍(湖北省武漢市)の県。 5外旃:毛織の外套。「旃」は毛織物。 6内纊:内側に着る綿入れ。 19三厄:大風に遭い、野火に遭い、あばら同然の宿に泊まったこと。 20軀命:生命。 21明発:朝に旅路につくこと。 22斗酒為招魂:旅の苦労をねぎらう。杜甫「彭衙行」に「故人有孫宰、高義薄曾雲。延客已曛黒、張灯啓重門。煖湯濯我足、剪紙招我魂」とある。

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