其六
1天寒白馬渡、〈漢川県界〉
2落日山陽村。
3是時無霜雪、
4万里風奔奔。
5外旃吹已透、
6内纊氷不温。
7吹馬馬欲倒、
8吹笠任飛翻。
9不見行路人、
10但見草木蕃。
11忽看野焼起、
12大焔焼乾坤。
13声如震雷震、
14勢若江湖吞。
15虎豹走散乱、
16麋鹿不足言。
17夜投野店宿、
18無壁亦無門。
19此行値三厄、
20幸得軀命存。
21明発見老姊、
22斗酒為招魂。
其六
1天が寒い、白馬の渡、〈漢川県界〉
2落日の山の陽の村。
3是の時、霜も雪も無く、
4万里を風が奔奔んでいた。
5外旃は吹かれて已に透り、
6内纊は氷で不温い。
7馬に吹けば、馬は倒れそう、
8笠に吹けば、飛翻るが任に。
9行路く人は不見い、
10但だ草木の蕃るのだけが見える。
11忽と野焼が起こるのが看えた、
12大きな焔が乾坤を焼く。
13声は震雷の震える如、
14勢いは江湖を吞むが若く。
15虎や豹は走て散乱に、
16麋や鹿は言うまでもない。
17夜に野店に投宿したが、
18壁は無く亦た門も無い。
19此の行では三つの厄に値ったが、
20幸いにも軀命を存すことができた。
21明発てば老姊に見い、
22斗酒でわたしの為に招魂ってくれるだろう。
1白馬渡:原注にいう漢川県は、漢陽軍(湖北省武漢市)の県。 5外旃:毛織の外套。「旃」は毛織物。 6内纊:内側に着る綿入れ。 19三厄:大風に遭い、野火に遭い、あばら同然の宿に泊まったこと。 20軀命:生命。 21明発:朝に旅路につくこと。 22斗酒為招魂:旅の苦労をねぎらう。杜甫「彭衙行」に「故人有孫宰、高義薄曾雲。延客已曛黒、張灯啓重門。煖湯濯我足、剪紙招我魂」とある。
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