1斯文準乾坤、
2作者難屈指。
3我従李郭遊、
4知有徐孺子。
5春風橘洲前、
6白月太湖尾。
7懐哉来無期、
8玉唾炯在紙。
9去年識仲氏、
10何啻空谷喜。
11合并忽自天、
12顚倒見底裏。
13維君天下士、
14竹箭東南美。
15胡不在石渠、
16諸公当料理。
17千巌今林宗、
18泉石助風軌。
19示疾不下堂、
20有句高八米。
21此老筆硯交、
22誠斎古元礼。
23毫端灑秋露、
24去国詞愈偉。
25属聞都門別、
26回首即桑梓。
27独憐苕渓上、
28垂榻俟行李。
29烟波肯尋盟、
30帰櫂為君艤。
徐通仲に呈げ、兼ねて仲錫への簡とした。通仲は誠斎と郷人で、近来調に赴き、而て誠斎は国を去った。又た通仲は久しく千巌と苕霅の約が有ったが、而し未至い。余は通仲を挽て与に同に千巌のところに欲帰い。故に末章に之に及んだ。
1斯文は乾坤に準じるから、
2作者は屈指るのが難しい。
3我は李郭に従って遊び、
4徐孺子が有るのを知った。
5春風の橘洲の前、
6白月の太湖の尾(にあなたはいる)。
7懐しい哉、来るのは無期、
8だが玉唾は炯と紙に在る。
9去年、仲氏を識った、
10何て啻だ空谷に喜ぶのみか。
11合并は忽と天からきて、
12顚倒って底裏を見せた。
13維れ君は天下の士、
14竹の箭は東南の美(と同じく君はすばらしい)。
15胡て石渠に不在いのか、
16諸公が当に料理するだろうに。
17千巌は今や林宗、
18(湖州の)泉石がその風軌を助る。
19示疾で堂から不下いが、
20句は八米より高いものが有る。
21此の老と筆硯の交わりをする、
22誠斎は古の元礼。
23毫端から秋露を灑ぐかのよう、
24国を去って詞は愈す偉しい。
25属ま聞いています、都門に別れ、
26回首れば即ち桑梓、と。
27独憐なのは、苕渓の上で、
28(千巌が)榻を垂らして行李を俟っていること。
29烟波に肯て盟をはたしに尋ねるというなら、
30帰る櫂を君の為に艤ぎます。
紹熙三年(1192)、三十八歳の作。 0徐通仲・徐仲錫:兄弟。楊万里(誠斎)と同郷の人。 赴調:吏部へ赴いて勤務評定をした後に、新しい任地へ行くこと。 千巌:蕭徳藻。 苕霅:苕溪・霅溪を併称したもの。どちらも今の浙江省湖州市にある。唐代、張志和が隠居した地。 1斯文:儒教の道や学問。 乾坤:天地。『易』「説卦」に「乾為天……坤為地」とある。 2難屈指:少ないこと。 3李郭:李膺と郭泰。ともに『後漢書』に伝がある。楊万里と蕭徳藻をなぞらえる。 4徐孺子:徐穉、字は孺子。『後漢書』に伝がある。徐通仲をなぞらえる。 5橘洲:湖南省長沙市西の湘江にある洲。美味い橘を産出する。ここは呉江の橘洲か。 6太湖:江蘇省と浙江省にまたがる湖。運河と苕溪の水が注ぎ、湖中に48の島がある。 8玉唾:唾液の美称。転じて、傑作や佳句。 10空谷喜:『荘子』「徐無鬼」の「空谷に逃るる者は、人の足音の跫然たるを聞きて喜ぶ」故事。誰もいないはずの山奥で聞こえる足音。孤独なときに受ける珍しくて嬉しい訪問や便りのたとえ。 11合并:集まること。 12顚倒:「傾倒」の誤りか。 14竹箭東南美:『爾雅』「釈地」に「東南之美者、有会稽之竹箭焉」とある。 15石渠:秘書省のこと。 16諸公:楊万里や蕭徳藻のこと。 料理:手配する、処理する。 17林宗:郭泰の字。 18泉石:山水のこと。 風軌:風度、作風。 19示疾:仏教語で、菩薩や高僧が病気になること。 20八米:隋の盧思道。文宣帝が崩御した時に、ほかの文士がそれぞれ挽歌十首を作ったが、盧思道だけが八篇も選ばれ、「八米盧郎」と呼ばれた。「八米」は「八采」の誤り、という説もある。才能の高いこと。 22元礼:李膺の字。 23毫端:筆さき。 25都門:都の城門。都のこと。 26桑梓:『詩経』小雅「小弁」に「維桑与梓、必恭敬止」とあり、朱熹『集伝』に「桑梓二木。古者五畝之宅、樹之墻下、以遺子孫給蚕食、具器用者也……桑梓父母所植」といい、「桑梓」で故郷を指す。 28垂榻:「懸榻」と同じ。『後漢書』「徐穉伝」に、豫章太守の陳蕃は客を好まず、徐穉のために榻(椅子)を一つだけ用意し、帰るとこれを掛けておいた、という。賢士を礼遇するたとえ。 行李:使いすること。出かけること。
0 件のコメント:
コメントを投稿