2023年1月6日金曜日

白石詩013呈徐通仲兼簡仲錫

呈徐通仲兼簡仲錫通仲与誠斎為郷人近来赴調而誠斎去国又通仲久与千巌有苕霅之約而未至余挽通仲欲与同帰千巌故末章及之

1斯文準乾坤、
2作者難屈指。
3我従李郭遊、
4知有徐孺子。
5春風橘洲前、
6白月太湖尾。
7懐哉来無期、
8玉唾炯在紙。
9去年識仲氏、
10何啻空谷喜。
11合并忽自天、
12顚倒見底裏。
13維君天下士、
14竹箭東南美。
15胡不在石渠、
16諸公当料理。
17千巌今林宗、
18泉石助風軌。
19示疾不下堂、
20有句高八米。
21此老筆硯交、
22誠斎古元礼。
23毫端灑秋露、
24去国詞愈偉。
25属聞都門別、
26回首即桑梓。
27独憐苕渓上、
28垂榻俟行李。
29烟波肯尋盟、
30帰櫂為君艤。

 

徐通仲に(さしあ)げ、兼ねて仲錫への(てがみ)とした。通仲は誠斎()郷人(どうきょう)()近来(ちかごろ)調(ひょうてい)に赴き、(そし)て誠斎は(みやこ)を去った。()た通仲は久しく千巌()苕霅()約が有ったが、(しか)未至(はたしていな)い。(わたし)は通仲を(ひきつれ)(とも)(いっしょ)に千巌のところに欲帰(かえりた)い。(ゆえ)末章(さいご)(このこと)に及んだ。 

 

1斯文は乾坤に準じるから、

2作者は屈指(かぞえ)るのが難しい。

(わたし)は李郭に従って遊び、

4徐孺子が()るのを知った。

5春風の橘洲の前、

6白月の太湖の尾(にあなたはいる)。

7懐しい(かな)(いらっしゃ)るのは無期(いつやら)

8だが玉唾(すみあと)(はっきり)と紙に在る。

9去年、仲(さん)()った、

10(どうし)()だ空谷に喜ぶのみか。

11合并(であい)(ふっ)と天から()きて

12顚倒(はらをわ)って底裏(そこ)を見せた。

13()れ君は天下の士、

14竹の()は東南の美(と同じく君はすばらしい)。

15(どうし)て石渠に不在(いな)いのか、

16諸公が(まさ)料理(てはい)するだろうに。

17千巌は今や林宗、

18(湖州の)泉石(しぜん)がその風軌(ふるまい)(ひきたて)る。

19示疾(やまい)で堂から不下(おりな)いが、

20句は八米より高いものが有る。

21此の(ごろうじん)と筆硯の交わりをする、

22誠斎は(いにしえ)の元礼。

23(ふで)(さき)から秋露を(そそ)ぐかのよう、

24(みやこ)去って(ことば)(ますま)(すばら)しい。

25(たまた)ま聞いています、都門に別れ、

26回首(ふるかえ)れば即ち桑梓(ふるさと)、と。

27独憐(ざんねん)なのは、苕渓の(ほとり)

28(千巌が)(いす)を垂らして行李(つかい)()っていること。

29烟波(もやるなみ)(あえ)(やくそく)をはたしに尋ねるというなら、

30帰る(ふね)を君の為に(つな)ぎます。


紹熙三年(1192)、三十八歳の作。 0徐通仲・徐仲錫:兄弟。楊万里(誠斎)と同郷の人。 赴調:吏部へ赴いて勤務評定をした後に、新しい任地へ行くこと。 千巌:蕭徳藻。 苕霅:苕溪・霅溪を併称したもの。どちらも今の浙江省湖州市にある。唐代、張志和が隠居した地。 1斯文:儒教の道や学問。 乾坤:天地。『易』「説卦」に「乾為天……坤為地」とある。 2難屈指:少ないこと。 3李郭:李膺と郭泰。ともに『後漢書』に伝がある。楊万里と蕭徳藻をなぞらえる。 4徐孺子:徐穉、字は孺子。『後漢書』に伝がある。徐通仲をなぞらえる。 5橘洲:湖南省長沙市西の湘江にある洲。美味い橘を産出する。ここは呉江の橘洲か。 6太湖:江蘇省と浙江省にまたがる湖。運河と苕溪の水が注ぎ、湖中に48の島がある。 8玉唾:唾液の美称。転じて、傑作や佳句。 10空谷喜:『荘子』「徐無鬼」の「空谷に逃るる者は、人の足音の跫然たるを聞きて喜ぶ」故事。誰もいないはずの山奥で聞こえる足音。孤独なときに受ける珍しくて嬉しい訪問や便りのたとえ。 11合并:集まること。 12顚倒:「傾倒」の誤りか。 14竹箭東南美:『爾雅』「釈地」に「東南之美者、有会稽之竹箭焉」とある。 15石渠:秘書省のこと。 16諸公:楊万里や蕭徳藻のこと。 料理:手配する、処理する。 17林宗:郭泰の字。 18泉石:山水のこと。 風軌:風度、作風。 19示疾:仏教語で、菩薩や高僧が病気になること。 20八米:隋の盧思道。文宣帝が崩御した時に、ほかの文士がそれぞれ挽歌十首を作ったが、盧思道だけが八篇も選ばれ、「八米盧郎」と呼ばれた。「八米」は「八采」の誤り、という説もある。才能の高いこと。 22元礼:李膺の字。 23毫端:筆さき。 25都門:都の城門。都のこと。 26桑梓:『詩経』小雅「小弁」に「維桑与梓、必恭敬止」とあり、朱熹『集伝』に「桑梓二木。古者五畝之宅、樹之墻下、以遺子孫給蚕食、具器用者也……桑梓父母所植」といい、「桑梓」で故郷を指す。 28垂榻:「懸榻」と同じ。『後漢書』「徐穉伝」に、豫章太守の陳蕃は客を好まず、徐穉のために榻(椅子)を一つだけ用意し、帰るとこれを掛けておいた、という。賢士を礼遇するたとえ。 行李:使いすること。出かけること。

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