1項君声名天宇窄、
2与君俱是荊湖客。
3向来相聞不相値、
4長安城中乃相識。
5論文要得文中天、
6邯鄲学歩終不然。
7如君筆墨与性合、
8妙処特過蘇李前。
9我如切切秋虫語、
10自詭平生用心苦。
11神凝或与元気接、
12屢挙似君君亦許。
13西湖一曲古牆陰、
14清坐論詩夜向深。
15見謂人間有公等、
16不知来者不如今。
17乾坤雖大知者少、
18君不見古人拙処今人巧。
19我徂山林口挂壁、
20如君合救狂瀾倒。
21石渠春水緑泱泱、
22閣下無人白日長。
23万里江湖入帰夢、
24子雲不願校書郎。
25九華山色梅根渡、
26半日風帆即秋浦。
27六条察吏安用許、
28幸有千巌作詩侶。
項平甫が池陽に倅としてゆくのを送る
1項君の声名は天宇をも窄くする、
2君と俱で是も荊湖からきた客。
3向来は相聞いていたが不相値かった、
4長安の城中で乃て相識えた。
5(私は)文を論じて、文中の天を要得うとし、
6邯鄲で歩きかたを学んだが、終に不然かった。
7君の如きは、筆と墨が与に性合し、
8妙処は特に蘇李の前を過ぎている。
9我は切切とした秋の虫の語の如、
10自ら詭めて平生から心を用いて苦しんでいる。
11神凝すると或は元気と接して、
12屢ば挙げて君に似すと君も亦た許めてくれた。
13西湖の一曲、古びた牆の陰、
14清かに坐って詩を論じていると夜は向に深てきた。
15人間では公等が有ると見謂るが、
16来者が今に不如いかどうかは不知い。
17乾坤は大きいと雖も知る者は少ない、
18君不見い、古人の拙処、今人の巧み。
19我は山林へ徂き、口を壁に挂けましょう、
20君の如きは、合に狂瀾の倒れ(乱れた世の中)を救いたまえ。
21石渠の春の水は緑に泱泱い、
22(あなたが去れば)閣下に無人く、白日は長い。
23万里の江湖を帰夢に入たことでしょう、
24子雲は校書郎など不願い。
25九華の山の色、梅根の渡、
26半日、帆に風ふけば、即ち秋浦。
27六条察吏は安て(名所巡りを)用許るでしょう、
28幸いに千巌が有て、詩侶と作ってくれるでしょう。
慶元元年(1195)、四十一歳の作。 0項平甫:項安世、字は平甫、江陵の人。慶元元年五月から五年八月まで通判池州だった(『南宋館閣続録』巻八「校書郎」に見える)。 倅:助け役、副官。宋代の通判は諸府州軍の副で、権限も大きかった。 池陽:安徽省池州市池陽郡。 3相値:「相遇」と同じ。 5文中天:文中の天機の意か。 6邯鄲学歩:他人の真似をしてうまくいかず、自分の本来の技能まで失ってしまうこと。『荘子』「秋水篇」にある故事で、戦国時代に趙の都邯鄲に行った燕国の人が、人々の歩く姿勢が美しいのを見て真似しようとしたがうまく出来ず、自分本来の歩き方まで忘れてしまい這って国に帰ったという。 7性合:本来の性質と合致している。 8蘇李:蘇武と李陵。ともに前漢の人、詩を贈答した。『文選』に、李陵から蘇武に送った詩三首と蘇武に答えた書、さらに蘇武の詩四首が収められており、南宋の厳羽『滄浪詩話』に「五言詩は李陵・蘇武に起こる」という。 11元気:大本の気。 12似:示す。 14向:なんなんとす。 19挂壁:使わずに置いておく喩え。 20狂瀾倒:逆巻く大波が倒れる、乱れた世の中の喩え。 21石渠:秘書省のこと。 23帰夢:帰郷の夢。 24子雲:前漢の揚雄の字。 校書郎:宮中の書物を扱う官。 25九華:九華山は安徽省にある山、九つの山が蓮の花に似ている、仏教の四大名山の一。 梅根:宣州にある地名。銅銭を鋳造するために夜も灯をともしていたらしい。孟浩然「夜泊宣城界」に「火識梅根冶、煙迷楊葉洲」とある。 26秋浦:宣州にある地名。李白に「秋浦」詩があり、「白髪三千丈、縁愁似箇長」という。 27六条察吏:漢代、刺史は郡太守などを六つの事柄で取り締まった。 28千巌:蕭徳藻のこと。蕭徳藻の息子が監酒として池陽に赴く際に同道しており、この時まだ池陽に滞在していたのではないか、という。
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