2022年12月26日月曜日

白石詩019丁巳七月望湖上書事

丁巳七月望湖上書事

1白天碎碎如拆綿、
2黒天昧昧如陳玄。
3白黒破処青天出、
4海月飛来光尚湿。
5是夜太史奏月蝕、
6三家各自矜算術。
7或云七分或食既、
8或云食昼不在夕。
9上令御史登呉山、
10下視海門監月出。
11年来歴失無人修、
12三家之説誰為優。
13乍如破鏡光炯炯、
14漸若小児初食餅。
15時方下令厳禁銅、
16破鏡何為来海東。
17天辺有餅不可食、
18聞説飢民満淮北。
19是鏡是餅且勿論、
20須臾還我黄金盆。
21金盆当空四山静、
22平波倒浸雲天影。
23下連八表共此光、
24上接銀河通一冷。
25御史帰家太史眠、
26人間不聞鐘鼓伝。
27白石道人呼釣船、
28一瓢欲酌湖中天。
29荷葉擺頭君睡去、
30西風急送敲窓句。

丁巳七月、湖上を(なが)めて(できごと)を書いた

 

1白い(くも)碎碎(ちぎ)れて、()いた綿の(よう)

2黒い(くも)昧昧(ほのぐら)く、陳玄(すみ)(よう)

3白と黒の破れる処、青天(そら)(あらわ)れて、

4海に月が飛来し、光は()お湿っている。

5是の夜、太史は月蝕を奏し、

6三家は(それぞ)れ自ら算術を(ほこ)った。

(あるもの)は七分と云い、(あるもの)(すべ)て食すとし、

(あるもの)は昼に食して夕には不在(おこらな)いと云った。

(おかみ)は御史に(めい)じて、呉山に登り

10下に海門を視て、月の出るのを(みまも)らせた。

11年来(ながいあいだ)(こよみ)が失れても(あらた)める人が(いな)

12三家()説は、誰を優と為すべきだろう。

13(ふい)に鏡を()(よう)に光が炯炯(きらめ)き、

14(しだい)小児(こども)が餅を食べ初めた(よう)に(月が欠けていく)

15時は(まさ)に令を下して、銅を厳しく禁じているのに、

16破れた鏡が何為(どうし)て海の東から来たのだろう。

17天辺(そら)に餅が有っても不可食(たべられな)い、

18聞説(きくところ)では飢民が淮北に満ちているのに。

19是は鏡なのか是は餅なのか、(しばら)く論じるのは(やめ)う、

20須臾(すぐ)(わたし)に黄金の盆を(かえ)してくれたから。

21金盆(つき)は空に(うか)び、四山(やまやま)は静か、

22平波(なみ)(さかしま)(うつ)す、雲天(くも)の影。

23下は八表に連なり此の光を(とも)にし、

24上は銀河に接して一冷(つめたさ)を通じる。

25御史は家に帰り太史は眠り、

26人間(ちまた)には不聞(きこえな)くなった、鐘鼓の(おと)

27白石道人(わたし)釣船

28一瓢(ひょうたん)()たい()湖中(水面に浮かぶ月)を。

29(ハス)の葉が頭を()らす、君は睡りに()きたまえ、

30西風が急に送ってきそうだ、窓を敲つ句を。


慶元三年(1197)七月、四十三歳の作。 2陳玄:墨の別称。「陳」は古い、「玄」は黒い。古くなるほど佳いとされる。 5太史:天文官。 奏月蝕:『宋史』「天文志」に「慶元三年七月巳未、月食既」とある。 6三家:古代天文学の蓋天・宣夜・渾天の三学派。 9呉山:銭塘江の南にある。 10海門:河口。 14食餅:月蝕の時には餅を食べる習慣があったらしい。梅堯臣「月蝕」詩に「主婦煎餅去、小儿敲鏡声」とある。 15禁銅:当時、銅器を勝手に鋳造することは厳しく禁じられていた。『宋史』「寧宗紀」に「閏月甲戌、内出銅器付尚書省毀之、命申厳私鋳銅器之禁」とある。鏡は銅で造る。 18淮北:淮河以北の地区、いまの安徽省北部。 23八表:八方の外、きわめて遠い場所。 26鐘鼓伝:月蝕を伝える鐘や鼓の音。 30敲窓句:雨が窓を打つの意。

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