瑞鶴仙 蔣捷
郷城見月1紺煙迷雁迹。
2漸碎鼓零鐘、街喧初息。
3風檠背寒壁。
4放氷蟾、飛到蛛糸簾隙。
5瓊瑰暗泣、念郷関・霜華似織。
6漫将身化鶴帰来、忘却旧遊端的。
7歓極。
8蓬壺蕖浸、花院梨溶、酔連春夕。
9柯雲罷弈、桜桃在、夢難覓。
10勧清光、乍可幽窓相照、休照紅楼夜笛。
11怕人間・換譜伊涼、素娥未識。
故郷の街で月を見た
1あおい煙が雁の飛んだあとを迷わせる。
2次第に太鼓や鐘の音が途切れ途切れになり、道の喧噪もやむ。
3風に灯火が、冷たい壁を背に揺れる。
4氷のような月は光を放ち、蜘蛛の糸のかかる簾の隙に飛んで入る。
5玉の涙をひそかに流し、故郷の月の光は織るように注いでいるだろうと思う。
6みだりにこの身を鶴と化して帰って来たとて、むかし遊んだところはすっかり忘れてしまった。
7あのとき歓びは極まって。
8仙境のハスが水面に映り、梨の花咲く庭に月の光が溶け、春の宵を酔い続けた。
9雲山で碁を打ち終えるうちに斧は朽ち、桜桃の種だけ枕元にあり、夢は探しがたい。
10月の光よ、いっそのこと私のぽつんとした窓を照らしておくれ、たかどので夜に笛を吹く人を照らすのはやめて。
11この世で「伊州」や「涼州」のような北方の曲に譜を換えても、月の女神は分からないだろうから。
蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1紺:空の青色。赤みを帯びた深い青色。 3檠:灯台、また灯をいう。 4氷蟾:月。 5瓊瑰暗泣:密かに玉のような涙を流す。『左伝』成公十七年に「声伯が夢で洹水を渡ると、ある人が瓊瑰(けいかい)を与えて「食べろ」という。泣くとその涙も瓊瑰となり、懐いっぱいになった」とある。 6化鶴帰来:丁令威の伝説。王安石046「千秋歳引」の「華表語」の注、参照。 端的:確実に。句中で倒置になっている。 8蓬壺:蓬莱・方壺。海中の仙山。ここは川の中州をいう。 蕖:ハスの花。 花院梨溶:晏殊「寓意」詩に「梨花院落溶溶月、柳絮池塘淡淡風(梨花の院落 溶溶たる月、柳絮の池塘 淡淡たる風)」とある。 9柯雲罷弈:雲山に入って柴を採り、人の碁を打つのを見る。『述異記』に、晋の王質が山に入って柴を採っていると、仙人が碁を打っているのに出逢った。碁が終わると、斧の柄(柯)はすっかり腐っていて、百年以上もたっていた、とある。 桜桃在:『酉陽雑俎』に、ある人が隣の女に桜桃を二つもらう夢を見た。食べて目が覚めると、夢であったと分かったが、枕元には桜桃の種があった、とある。10乍可:「寧可(むしろ~がよい)」。 11伊涼:「伊州」「涼州」、曲の名。
郷の城で月を見た
1紺い煙が雁の迹を迷わせる。
2漸に鼓や鐘が碎零になり、街の喧しさも初めて息む。
3風に檠が寒たい壁を背にして。
4氷のような蟾は放り、蛛の糸の簾の隙に飛到る。
5瓊瑰を暗かに泣し、念う、郷関の霜華は織る似と。
6漫に身を鶴に化して帰来たとて、旧遊んだところは端的忘却れた。
7歓びは極まって。
8蓬壺の蕖が浸り、梨花の院に溶け、春の夕を酔い連けた。
9柯をもち雲で弈を罷えると、桜桃が在り、夢は覓し難い。
10清光よ、乍可幽とした窓を相照して勧れ、紅楼の夜の笛を照らすのは休めて。
11人間で伊涼に譜を換えても、素娥は未識い怕う。
ruì hè xiān
xiāng chéng jiàn yuè
1 gàn yān mí yàn jì.
2 jiàn suì gǔ líng zhōng,jiē xuān chū xī.
3 fēng qíng bèi hán bì.
4 fàng bīng chán,fēi dào zhū mì lián xì.
5 qióng guī àn qì,niàn xiāng guān、shuāng huá sì zhī.
6 màn jiāng shēn huà hè guī lái,wàng què jiù yóu duān dì.
7 huān jí.
8 péng hú qú jìn,huā yuàn lí róng,zuì lián chūn xī.
9 kē yún bà yì,yīng táo zài,mèng nán mì.
10 quàn qīng guāng,zhà kě yōu chuān xiāng zhào,xiū zhào hóng lóu yè dí.
11 pà rén jiān、huàn pǔ yī liáng,sù é wèi shí.
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