2022年10月3日月曜日

222渡江雲(呉文英)

渡江雲  呉文英

西湖清明

1羞紅顰浅恨、晚風未落、片繡点重茵。
2旧堤分燕尾、桂棹軽鷗、宝勒倚残雲。
3千糸怨碧、漸路入・仙塢迷津。
4腸漫回、隔花時見・背面楚腰身。

5逡巡。
6題門惆悵、墮履牽縈。
7数幽期難準、還始覚・留情縁眼、寬帯因春。
8明朝事与孤煙冷、做満湖・風雨愁人。
9山黛暝、塵波澹緑無痕。

西湖の清明

1羞じらって花は浅い恨みに眉をひそめる、晚の風にも散らないで、花びらが草に点々と。
2むかしの堤は燕の尾のように分かれ、棹さす舟は鷗のように軽く、馬は夕雲に寄り添う。
3柳の枝は怨んで青く、次第に路は分け入る、桃源郷に。
4胸がみだりにつまる、花を隔てて時おり見えるから、後ろ姿の細い腰つきが。

5ぐずぐずする。
6会えなければ門に寂しさを書き、会ってくつを落とされれば気にかかる。
7約束の日を数えようにも定め難い、また思い始める、縁を結んだ目、帯を緩めた恋心。
8明朝、すべては靄とともに冷え、湖いっぱいの風雨で愁う人になる。
9山は黒々とし、波は揺蕩うて痕も残さず。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1「羞紅」句:花をそっとはじらう少女に喩える。 重茵:厚いゴザ。草地を喩える。 2燕尾:西湖の蘇堤と白堤の交差するところ。燕の尾が割れているさまに喩える。 宝勒:宝馬。「勒」は馬のくつわ。 3千糸:柳の枝。 4「隔花」二句:蘇軾「続麗人行」に「隔花臨水時一見、只許腰肢背後看(花を隔て水に臨み時に一たび見る、只だ許す 腰肢背後より看ることを)」とある。 5逡巡:ぐずぐず決められない。 6題門:唐の崔護が門に詩を書いた故事。晏殊013「清平楽」の「人面」句の注、参照。また晋の呂安が嵆康を訪ねたが会えず、門に書き付けをした。『世説新語』に見える。ここは不偶の意。 墮履:張良が圯上で黄石公に遭い、クツを拾った故事。『史記』「留侯世家」に見える。ここは気にかける意。 7寬帯因春:思い煩い、痩せて帯が緩くなること。 9澹:波がゆれるさま。

西湖の清明

 

1羞(はじら)って紅(はな)は浅い恨みに顰(まゆひそ)め、晚の風にも未落(ちらな)い、片繡(はなびら)が重茵(くさち)に点々と。

2旧堤(むかしのつつみ)は燕の尾のように分かれ、桂棹(ふね)は鷗のように軽く、宝勒(うま)は残雲(ゆうぐも)に倚(よ)る。

3千糸(やなぎのえだ)は怨んで碧(あお)く、漸(しだい)に路は入る、仙塢迷津(とうげんきょう)に。

4腸(むね)が漫(みだり)に回(つま)る、花を隔てて時おり見えるから、背面(うしろすがた)の楚腰身(ほそいこしつき)が。

 

5逡巡(ぐずぐず)する。

6門に惆悵(さびしさ)を題(か)く、履(くつ)を墮(おと)されれば牽縈(きにかか)る。

7幽期(やくそくのひ)を数えようにも準(さだ)め難い、還(ま)た覚(おも)い始める、情縁(えにし)を留(むす)んだ眼、帯を寬(ゆる)めた春因(こいごころ)。

8明朝、事(すべて)は孤煙(もや)と与(とも)に冷え、満湖(みずうみいっぱい)の風雨で愁う人に做(な)る。

9山は黛暝(くろぐろ)、塵波(なみ)は澹緑(たゆと)うて痕(あと)も無い。


dù jiāng yún

xī hú qīng míng

1 xiū hóng pín qiǎn hèn,wǎn fēng wèi luò,piàn xiù diǎn zhòng yīn.
2 jiù tí fēn yàn wěi,guì zhào qīng ōu,bǎo lè yǐ cán yún.
3 qiān mì yuàn bì,jiàn lù rù、xiān wù mí jīn.
4 cháng màn huí,gé huā shí jiàn、bèi miàn chǔ yāo shēn.

5 qūn xún.
6 tí mén chou chàng,duò lǚ qiān yíng.
7 shù yōuqī nán zhǔn,hái shǐ jué、liú qíng yuán yǎn,kuān dài yīn chūn.
8 míng cháo shì yǔ gū yān lěng,zuò mǎn hú、fēng yǔ chóu rén.
9 shān dài mìng,chén bō dàn lǜ wú hén.

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