2022年8月18日木曜日

076満庭芳(秦観)

満庭芳  秦観

1暁色雲開、春随人意、驟雨才過還晴。
2古台芳榭、飛燕蹴紅英。
3舞困楡銭自落、秋千外・緑水橋平。
4東風裏、朱門映柳、低按小秦箏。

5多情。
6行楽処、珠鈿翠蓋、玉轡紅纓。
7漸酒空金榼、花困蓬瀛。
8豆蔻梢頭旧恨、十年夢・屈指堪驚。
9憑闌久、疏煙淡日、寂寞下蕪城。

1暁に雲は消え、春が人の気持ちによりそう、驟雨がちょうど降り過ぎ、また空は晴れあがって。
2古く草木の茂る台榭(たてもの)に、燕が飛んで赤い花びらを蹴散らす。
3舞いつかれて銭に似た楡のさやは自分から落ち、ブランコのむこう、川の水は橋と同じほどに水かさを増した。
4春風のなか、朱塗りの門に柳が映え、その向こうから低く小秦箏(こと)を弾く音が聞こえてくる。

5感じやすい季節。
6行楽に出かけたとき、車には真珠の飾りと翡翠色のホロ、馬には玉の轡に赤い手綱。
7しだいに酒杯は空となり、花は蓬莱や瀛洲の仙山で眠る。
8「豆蔻(ずく)の梢」に喩えられる少女とかつて別れた恨み、「十年の夢」かと指おり数えて、すぎた年月に驚きをこらえる。
9欄干にしばらくもたれていると、うすい靄とあわい夕陽が、寂しげにこの蕪城に下りていく。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
2「飛燕」句:杜甫「城西陂泛舟」詩に「魚吹細浪揺歌扇、燕蹴飛花落舞筵(魚は細浪を吹きて歌扇を揺らし、燕は飛花を蹴りて舞筵に落とす)」とある。 3楡銭:楡の莢(さや)が連なっているさまが銭に似ている。 7金榼:金属製の酒器の一種。 蓬瀛:蓬莱と瀛洲、伝説中の仙山。 8「豆蔻」句:杜牧「贈別」詩の意を用いる。074「八六子」詞の「春風十里」注、参照。 十年夢:杜牧「遺懐」詩の意を用いる。075「満庭芳」の「漫贏得」注、参照。 9蕪城:揚州を指す。南朝の宋が竟陵王の乱ののち、揚州の街が荒れはてて雑草が生い茂った。鮑照が「蕪城賦」を作った。

 

暁色(あかつき)に雲は()え、春は人の(きもち)(よりそ)う、驟雨は(ちょう)ど過ぎて()た晴れて。

2古い(うてな)(しげ)る榭、飛燕(つばめ)紅英(はなびら)を蹴る。

3舞い(つか)れて楡の(さや)は自ら落ち、秋千(ブランコ)(むこう)緑水(かわ)は橋と(おな)じほど。

東風(はるかぜ)(なか)(あか)い門に柳が映え、低く小秦箏(こと)()いている。

 

多情(かんじやす)い。

6行楽した(とき)、珠の(かざり)(みどり)(ほろ)(ぎょく)(くつわ)(あか)(たづな)

(しだい)に酒は(さかづき)、花蓬瀛(せんざん)(ねむ)る。

(ずく)梢頭(こずえ)(むかし)の恨み、十年の夢かと指を()り、驚きを(こら)える。

(てすり)(もた)れて(しば)し、(うす)(もや)と淡い日が、寂寞(さび)しく蕪城に下りる。


mǎn tíng fāng

1 xiǎo sè yún kāi,chūn suí rén yì,zhòu yǔ cái guò hái qíng.
2 gǔ tái fāng xiè,fēi yàn cù hóng yīng.
3 wǔ kùn yú qián zì luò,qiū qiān wài、lǜ shuǐ qiáo píng.
4 dōng fēng lǐ,zhū mén yìng liǔ,dī àn xiǎo qín zhēng.

5 duō qíng.
6 xíng lè chù,zhū diàn cuì gài,yù pèi hóng yīng.
7 jiàn jiǔ kōng jīn kè,huā kùn péng yíng.
8 dòu kòu shāo tóu jiù hèn,shí nián mèng、qū zhǐ kān jīng.
9 píng lán jiǔ,shū yān dàn rì,jì mò xià wú chéng.

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