其一
1滔滔沔鄂留、
2有靦三宿桑。
3持缽了白日、
4事賤丸蛣蜣。
5念当去石友、
6煙席凌江湘。
7為君試歌商、
8歌短意則長。
杜甫の「長歌 意は極まり無し、好し老夫が為に聴け」を以て韻と為し、沔鄂の親戚友人に別れ奉る。
其一
1滔滔たる沔鄂に留まり、
2三宿桑して有靦しい。
3缽を持めて白日が了り、
4やる事は蛣蜣より賤しい。
5念う、当に石友のもとを去り、
6煙席で長(江)湘(水)を凌えていこう、と。
7君の為に、商のうたを歌おうか、
8歌は短いが、意は則は長い。
淳熙十三年(1186)冬、三十二歳の作。(夏承燾『姜白石繋年』) 0長歌意無極好為老夫聴:杜甫「行次塩亭県聊題四韻奉簡厳遂州蓬州両使君諮議諸昆季」詩の第七第八句。 沔鄂:沔は沔水(漢水の別称)、鄂は現在の武漢市一帯。白石は若い頃、ここに嫁いだ姉を頼って暮らしていた。 1滔滔:水の流れるさま。『詩経』小雅「四月」に「滔滔江漢、南国之紀。尽瘁以仕、寧莫我有」とある。 2靦:恥じる。 三宿:仏教語。『後漢書』「襄楷伝」に「浮屠不三宿桑下、不欲久生恩愛、精之至也」、李賢の注に「言浮屠之人寄桑下者、不経三宿便即移去、示無愛恋之心也」とある。のちに「三宿恋」で世俗に恋着することをいう。 3持缽:仏教語。托鉢。 4蛣蜣:蜣螂。タマオシコガネ、センチコガネ、俗にフンコロガシ。黄庭堅「演雅」詩に「蛣蜣転丸賤蘇合、飛蛾赴燭甘死禍」とあり、任淵注に「荘子斉物論注曰、蛣蜣之智、在於転丸、而笑蛣蜣者、乃以蘇合為貴。按爾雅、蛣蜣、蜣蜋也」とある。 5石友:金石のようにかたい友情。晋・潘岳「金谷集作詩」に「投分寄石友、白首同所帰」とある。 7歌商:商のうたを歌う。『淮南子』「道応訓」に、衛の寧戚が徳を修めたが用いられず、商賈となって斉の東門に宿をとっていた。斉の桓公が夜に舎を出ると、寧戚が牛に飯し、角を叩いて商歌を歌っていた。桓公は常人にあらずとして召しかかえた、とある。
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