2022年8月3日水曜日

039戚氏(柳永)

戚氏 柳永

1晚秋天、一霎微雨灑庭軒。
2檻菊蕭疏、井梧零乱、惹残煙。
3淒然、望江関、飛雲黯淡夕陽間。
4当時宋玉悲感、向此臨水与登山。
5遠道迢遞、行人淒楚、倦聴隴水潺湲。
6正蟬吟敗葉、蛩響衰草、相応喧喧。

7孤館度日如年、風露漸変、悄悄至更闌。
8長天浄、絳河清浅、皓月嬋娟。
9思綿綿。
10夜永対景、那堪屈指、暗想従前。
11未名未禄、綺陌紅楼、往往経歳遷延。

12帝里風光好、当年少日、暮宴朝歓。
13況有狂朋怪侶、遇当歌対酒竟留連。
14別来迅景如梭、旧遊似夢、煙水程何限。
15念利名・憔悴長縈絆、追往事・空惨愁顔。
16漏箭移・稍覚軽寒。
17漸嗚咽・画角数声残。
18対閑窓畔、停灯向暁、抱影無眠。

1晚秋の空、しばし細かい雨が庭と軒のある小部屋に降った。
2垣根の菊はすでに枯れ、井戸ばたの梧桐(あおぎり)も散り、寒々と靄がかかる。
3うらさびしい景色、山河を眺めやれば、夕陽の中、飛んでいく雲が暗い。
4思えば当時、宋玉もこうして悲しんだのだろう、山に登り河に臨んで。
5道は遠く、旅人は孤独で、サラサラと流れる音に倦みながら。
6おりしも蝉は枯葉に鳴き、コオロギは枯草に鳴いている、競い合うかのようにうるさく。

7私は今年もひとり寂しく旅館にいる、風は冷たく露は濃くなり、夜がふけていく。
8夜空は洗われたように、銀河が清らかで、月が皓々と美しい。
9思いは果てない。
10長い夜、月を見ながら、指折り数えるには耐えられない、過去のあれこれを。
11名も上げず禄もなく、妓楼で浮かれて、幾年もぐずぐずと過ごしてきた。

12都は美しかった、当時まだ私は若く、朝から晩まで歓楽を尽くした。
13放埓な友人たちと、酒や歌があれば必ず引き留めあって。
14別れて以来、瞬く間に時は過ぎ、かつての遊びは夢のごとく、けぶる河にかぎりなく隔てられている。
15憔悴しつつまだ足かせのように名利を思い、昔を懐かしんでいたずらに愁い顔をさらに暗くする。
16夜はさらに更けて、すこし肌寒くなってきた。
17しだいにむせび泣くような、角笛のとぎれとぎれの音。
18しずかな窓辺で、灯火を消して夜明けまで、自分の影を抱いたまま、とうとう眠れずに過ごしてしまった。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1庭軒:庭と窓のある小部屋。 4宋玉悲感:楚の辞賦家宋玉は「九弁」を作り、「悲哉秋之為気也(悲しいかな 秋の気為るや)」「憭慄兮若在遠行、登山臨水兮送将帰(憭慄として遠行に在りて、山に登り水に臨み将に帰らんとするを送るが若し)」などの句がある。 5迢遞:遥か遠いようす。 隴水潺湲:古楽府「隴頭歌辞」に「隴頭流水、鳴声鳴咽。遥望秦川、肝腸断絶(隴頭の流水、鳴声鳴咽す。遥かに秦川を望めば、心肝断絶す)」とある。 6蛩:コオロギ。 8絳河:銀河。天を絳宵ということから。 嬋娟:美しいさま。 10景:日月、ここは月をいう。 16漏箭:刻漏暁箭、更筹、日時を図る器具。

1晚秋の天(そら)、一霎(しばし)の微雨(こさめ)が庭軒(のきさき)に灑(そそ)ぐ。

2檻(かきね)の菊は蕭疏(か)れ、井(いど)の梧(アオギリ)は零乱(ち)り、残煙(もや)を惹(かぶ)っている。

3淒然(わび)しい、江(かわ)と関(やま)を望めば、飛雲(くも)が黯淡(うすぐら)い、夕陽の間に。

4当時、宋玉は悲感(かな)しみ、此(ここ)で(向)水(かわ)に臨み与(そし)て山に登った。

5遠道(みち)は迢遞(はるか)、行人(たびびと)は淒楚(ひとり)、隴水の潺湲(ながれ)を聴くのも倦(あきあき)して。

6正(ちょう)ど蟬は敗葉(かれは)で吟(な)き、蛩(コオロギ)は衰草で響(な)き、相(たが)いに応じて喧喧(やかま)しい。

 

7孤館(やど)で日を度(すご)す、年(まいとし)の如(よう)に、風と露は漸(しだい)に変わり、悄悄(ひっそり)と更闌(よふけ)に至る。

8長天(そら)は浄(きよ)い、絳河(ぎんが)は清浅(きよ)い、皓(しろ)い月が嬋娟(うつく)しい。

9思いは綿綿(どこまで)も。

10夜は永く景(つき)に対(むか)い、那(どうし)て堪(た)えられるだろう、指を屈(お)り、暗(ひそか)に従前(むかし)を想うことに。

11名も未(な)く禄も未(な)く、綺陌紅楼(いろまち)で、往往(いくつ)も歳を経た、遷延(ぐずぐず)と。

 

12帝里(みやこ)の風光は好(すばら)しい、当年の少(わか)い日、暮からの宴で朝まで歓(たの)しんで。

13況(まし)て狂朋怪侶(あそびなかま)が有(い)て、歌と(当)酒に(対)遇えば竟(かなら)ず留連(ひきとめ)て。

14別来(わか)れて、迅(すぎ)る景(とき)は梭(さ)の如(よう)、旧遊(あのころのあそび)は夢に似て、煙(けぶ)る水(かわ)の程(へだたり)が何限(かぎりな)い。

15利名を念(おも)い、憔悴して長(つね)に絆(あしかせ)を縈(まつわ)らせ、往事を追っては、空しく愁い顔を惨(みじ)めにする。

16漏箭(とき)は移り、稍(すこ)し軽寒(はだざむさ)を覚える。

17漸(しだい)に嗚咽(むせびな)くような、画角(つのぶえ)の数声(おと)の残り。

18閑(しず)かな窓畔(などべ)で(対)、灯を停(け)して暁まで(向)、影を抱いて無眠(ねむらな)い。


qī shì

1 wǎn qiū tiān,yí shà wēi yǔ sǎ tíng xuān.
2 jiàn jú xiāo shū,jǐng wú líng luàn,rě cán yān.
3 qī rán,wàng jiāng guān,fēi yún àn dàn xī yáng jiān.
4 dāng shí sòng yù bēi gǎn,xiàng cǐ lín shuǐ yǔ dēng shān.
5 yuan dào tiáo dì,xíng rén qī chǔ,juàn tīng lǒng shuǐ chán yuán.
6 zhèng chán yín bài yè,qióng xiǎng shuāi cǎo,xiāng yìng xuān xuān.

7 gū guǎn dù rì rú nián,fēng lù jiàn biàn,qiāo qiāo zhì gèng lán.
8 cháng tiān jìng,jiàng hé qīng qiǎn,hào yuè chán juān.
9 sī mián mián.
10 yè yǒng duì jǐng,nǎ kān qū zhǐ,àn xiǎng cóng qián.
11 wèi míng wèi lù,qǐ mò hóng lóu,wǎng wǎng jīng suì qiān yán.

12 dì lǐ fēng guāng hǎo,dāng nián shào rì,mù yàn zhāo huān.
13 kuàng yǒu kuáng péng guài lǚ,yù dāng gē duì jiǔ jìng liú lián.
14 bié lái xùn jǐng rú suō,jiù yóu sì mèng,yān shuǐ chéng hé xiàn.
15 niàn lì míng、qiáo cuì cháng yíng bàn,zhuī wǎng shì、kōng cǎn chóu yán.
16 lòu jiàn yí、shāo jué qīng hán.
17 jiàn wū yè、huà jiǎo shù shēng cán.
18 duì xián chuāng pàn,tíng dēng xiàng xiǎo,bào yǐng wú mián.

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