2022年8月25日木曜日

101六醜(周邦彦)

六醜一首   周邦彦

薔薇謝後作

1正単衣試酒、恨客裏光陰虚擲。
2願春暫留、春帰如過翼。
3一去無迹。
4為問花何在、夜来風雨、葬楚宮傾国。
5釵鈿堕処遣香沢。
6乱点桃蹊、軽翻柳陌。
7多情為誰追惜。
8但蜂媒蝶使、時叩窓槁。

9東園岑寂。
10漸蒙籠暗碧。
11静遶珍叢底、成歎息。
12長条故惹行客。
13似牽衣待話、別情無極。
14残英小、強簪巾幘。
15終不似一朵釵頭顫裊、向人欹側。
16漂流処、莫趁潮汐。
17恐断紅尚有相思字、何由見得。

薔薇が散ったのちに作った

1ひとえの衣にかえて新しい酒を味わうこの時、私は悲しくも旅人として異郷でむなしく時間を浪費している。
2春をしばらく留めたいと思うが、春は飛ぶ鳥のようにさっと過ぎゆき、
3いちど去ってしまうと、あとかたもない。
4薔薇の花はどこへ行ったかしら。昨夜の風まじりの雨で、傾国の美女のような花は葬られてしまったそうな。
5螺鈿の髪飾りは道に散らばり、香りが残っている。
6桃の樹の下に点々と乱れて、柳の植えられた街の一画に軽やかに舞って。
7その濃い情を誰が惜しむだろう、
8ただ蜂と蝶だけが使者として飛び回り、たまに窓枠をたたいて、便りを届けようとするだけだ。

9ひっそりとした東園では、
10しだいに樹や草が、緑を濃くしている。
11しずかに花の咲いていた辺りを歩いて、ためいきをつく。
12棘のある長い枝はわざわざ旅人をひきとめて、
13衣のすそを引いて話すのを待つかのようだ、別れの恨みは限りない、と。
14散り残った小さな枝を、むりやり頭巾に挿してみた。
15しかし結局は、あの一枝があの人の髪でかすかに揺れて、人に向かって傾くさまには及ばない。
16花びらよ、朝夕の潮を追いかけて流れるのはやめておくれ。
17散った花びらに相思の文字が書いてあっても、どうやって見つければよいのだ。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1試酒:新しく醸した酒を味わう。『武林旧時』に、宋代、春の終わりから夏の初めにかけて、その年の新しい酒を味わう風習があった、とある。 4夜来風雨、葬楚宮傾国:風まじりの雨によって花が散るさま。「楚宮傾国」は美女を花にたとえる。 5釵鈿堕処遣香沢:唐の楊貴妃が玄宗に従って華清宮に行った時、大勢の隊列が通ったあと、道には螺鈿の髪飾りや靴、翡翠や真珠が散らばって、香りが数十里までただよった故事。「釵鈿」は散った花びらの喩え。 7為誰:誰がそのために。「誰為」に同じ。「誰最」とするテキストもある。 8窓槁:窓の格子。 10蒙籠:草木が茂るさま。 暗碧:緑の葉。 11珍叢:薔薇の花の集まっているところ。 12長条:薔薇の枝。棘があり、人の衣服をひっかけやすい。 14巾幘:頭巾。 15顫裊:かるく揺れる。 16潮汐:朝のしおを「潮」といい、夕のしおを「汐」という。 17断紅・相思字:唐の宮女が紅葉に「流水何太急、深宮尽日閑。殷勤謝紅葉、好去到人間(流水 何ぞ太〔はなは〕だ急なる、深宮 尽日閑たり。殷勤に紅葉に謝す、去りて人間に到るに好〔よろ〕し)」と詩を書いて溝から流したところ、宮外で拾った人と後に結婚した故事。赤い花びらを紅葉と見なした。

 

薔薇が()った後に作った

 

(ちょう)単衣(ひとえ)で酒を(あじわ)うころ、恨めしい、客裏(たびさき)光陰(つきひ)(むな)しく()てられて。

2春よ(しばら)く留ってくれと願うが、春は過翼(とり)(よう)()ってしまう。

3一たび()くと(あと)も無く。

(だか)(たず)ねたい、花は(どこ)()るのかと、夜来の風雨で、楚の(みやこ)傾国(びじょ)は葬られてしまった。

釵鈿(らでんのかんざし)が堕ちた処に香沢(かおり)(のこ)して。

乱点(ちりみだ)れる桃の(こみち)、軽やかに(ゆれ)る柳の(みち)

7多情にも誰が(そのため)追惜(おし)むだろう。

8但だ蜂と蝶だけが媒使(つかい)となって、(たま)窓槁(まどわく)を叩くだけ。

 

9東園は岑寂(さび)しい。

10(しだい)()(みどり)蒙籠(とじこめら)れる。

11静かに珍叢(くさむら)(あたり)(めぐ)っては、歎息(ためいき)()く。

12長い(えだ)(わざ)行客(たびびと)()きとめる。

13衣を()いて話すのを待っているかの(よう)に、別れの(おもい)無極(はてしな)い。

14残った(はな)は小さい、(むり)(あたま)()してみた。

15(つい)には、(ひとえだ)釵頭(かみ)(ゆれ)(わたし)に向かって欹側(かたむ)くには不似(およばな)い。

16漂流する処、潮汐(しお)()うのは(やめ)てくれ。

17(ちっ)(はなびら)()だ相思の字が有るかも(しれな)いが、何由(どうやっ)見得(みつけられ)ようか。


liù chǒu yì shǒu

qiáng wēi xiè hòu zuò

1 zhèng dān yī shì jiǔ,hèn kè lǐ guāng yīn xū zhì.
2 yuàn chūn zàn liú,chūn guī rú guo yì.
3 yí qù wú jī.
4 wèi wèn huā hézài,yèlái fēngyǔ,zàng chǔ gōng qīng guó.
5 chāi diàn duò chǔ qiǎn xiāng zé.
6 luàn diǎn táo xī,qīng fān liǔ mò.
7 duō qíng wèi shuí zhuī xī.
8 dàn fēng méi dié shǐ,shí kòu chuān gǎo.

9 dōng yuán cén jì.
10 jiàn méng lǒng àn bì.
11 jìng rào zhēn cóng dǐ,chéng tàn xī.
12 cháng tiáo gù rě xíng kè.
13 sì qiān yī dài huà,bié qíng wú jí.
14 cán yīng xiǎo,qiáng zān jīn zé.
15 zhōng bú sì yì duǒ chāi tóu zhàn niǎo,xiàng rén qī cè.
16 piāo liú chǔ,mò chèn cháo xī.
17 kǒng duàn hóng shàng yǒu xiāng sī zì,hé yóu jiàn dé.

1 件のコメント:

  1. 相思の文字を花びらに……
    芭蕉の葉より繊細な感じだね。

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