2023年2月19日日曜日

白石歌004小重山令

小重山令

賦潭州紅梅

1人繞湘皋月墜時。
2斜横花樹小、浸愁漪。
3一春幽事有誰知。
4東風冷、香遠茜裙帰。

5鷗去昔遊非。
6遙憐花可可、夢依依。
7九疑雲杳断魂啼。
8相思血、都沁緑筠枝。

 

潭州の紅梅を()

 

(わたし)は湘(江)の(きし)(めぐ)る、月が(おち)る時。

2斜めに横へと花をつけた樹は小さく、愁いの(さざなみ)(ひた)っている。

一春(はる)幽事(ひめごと)を誰か知っているひとは()るだろうか。

東風(はるかぜ)は冷たく、(かおり)は遠く茜裙(はな)()る。

 

5鷗は去り、昔の遊びも(むかしのままではな)い。

6遙かに憐れむ、花は可可(ぼんやり)、夢は依依(ながなが)

7九疑(山)の雲は(くら)い、魂を()たんばかりに()く。

8相思の血(涙)は、(すべ)(たけ)枝に()みて。


淳熙十三年(1186)、三十二歳の作。 0潭州:いまの湖南省長沙市。 紅梅:范成大『梅譜』に「紅梅標格是梅、而繁密則如杏。其種来自閩・湘、有福州紅・潭州梅・邵武紅等号」とある。 1湘:湘江。湖南を流れる。 皋:岸。 2斜横:梅の枝のようす。林逋「梅花」詩に「疏影横斜水清浅、暗香浮動月黄昏」とある。 4茜裙:赤いもすそ、スカート。女性を指す。ここは紅梅の喩え。 6可可:かすかなさま。無名氏「漁家傲」詞に「雪点江梅才可可、梅心暗弄繊繊朵」とある。 7九疑:九疑山。湖南寧遠県南にある。 断魂啼:任昉『述異記』に、帝舜が南巡して、九疑山で崩御し、ここに葬られた。二妃娥皇・女英はこれを聞いて、湘水の浜で泣いたところ、涙が竹をまだらに染めた、とある。のちに二妃は湘水に身を投げた。 8緑筠:綠竹。

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