2022年10月10日月曜日

264渡江雲(張炎)

渡江雲  張炎

久客山陰、王菊存問予近作、書以寄之。

1山空天入海、倚楼望極、風急暮潮初。
2一簾鳩外雨、幾処閑田、隔水動春鋤。
3新煙禁柳、想如今・緑到西湖。
4猶記得・当年深隠、門掩両三株。

5愁余。
6荒洲古漵、断梗疏萍、更漂流何処。
7空自覚・囲羞帯減、影怯灯孤。
8長疑即見桃花面、甚近来・翻致無書。
9書縦遠、如何夢也都無。

長らく山陰に旅人として留まり、王菊存が私に最近の作品について尋ねたので、書いて彼に送った。

1山はひとけなく空は海に接し、たかどのにもたれて遠く眺めれば、風は速く夕暮れの潮が上がりはじめる。
2簾で鳩の鳴く向こうは雨、いくつかひっそりした田があり、川を隔てて春の鋤を動かしている。
3新たにけぶる宮中の柳、きっといま、緑は西湖にまで届いただろう。
4まだ覚えている、あのころ私は閉じこもって、門は二、三株の柳におおわれていた。

5愁いがあふれる。
6荒れはてた汀、折れた桔梗とまばらな浮き草は、さらにどこへ流れていくのか。
7むなしく自覚する、腰周りは痩せて帯が緩むのが羞しく、影はぽつんとした灯火に怯えている、と。
8いつも疑っている、すぐにあの娘に会えるのに、どうして近頃はむしろ手紙さえ無いのか。
9手紙がたとえ遠くとも、どうして夢でさえも会えないのか、と。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
0王菊存:未詳、作者の友人であろう。題序を「山陰久客、一再逢春、回憶西杭、渺然愁思(山陰で長らく客として留まり、春に何度も逢い、杭州を思い出すと、呆然と愁いに沈む)」とするテキストもある。 6漵:浦、水辺。 8桃花面:晏殊013「清平楽」の「人面」句の注、参照。

久(なが)らく山陰に客(たび)して、王菊存が予(わたし)に近作を問(たず)ねたので、書いて以(そし)て之(かれ)に寄(おく)った。

 

1山は空(ひとけな)く天(そら)は海に入(せっ)し、楼(たかどの)に倚(もた)れて望極(とおくなが)れば、風は急(はや)く暮(ゆうぐれ)の潮が初まる。

2一簾(すだれ)で鳩の外(むこう)は雨、幾処(いくつか)の閑(ひっそり)した田で、水を隔てて春の鋤を動かす。

3新たに煙(けぶ)る禁(きゅうちゅう)の柳、想(きっ)と如今(いま)、緑は西湖にまで到(とど)いたろう。

4猶(ま)だ記得(おぼえ)ている、当年(あのころ)、深隠(とじこも)って、門は両三株に掩われていた。

 

5愁いが余(あふ)れる。

6荒古(あれは)てた洲漵(みぎわ)、断(お)れた梗(ききょう)と疏(まば)らな萍(うきくさ)は、更に何処(どこ)へ漂流(なが)れるのか。

7空(むな)しく自覚する、囲(こしまわり)は帯が減(ゆる)んで羞しく、影は孤(ぽつん)とした灯(ともしび)に怯えている、と。

8長(いつ)も疑っている、即(すぐ)に桃花面(あのこ)に見(あ)えるのに、甚(どうし)て近来(ちかごろ)は翻致(むし)ろ書(てがみ)さえ無いのか。

9書(てがみ)が縦(たと)え遠くとも、如何(どうし)て夢でさえ(也都)も無いのか、と。


dù jiāng yún

jiǔ kè shān yīn,wáng jú cún wèn yǔ jìn zuò,shū yǐ jì zhī.

1 shān kōng tiān rù hǎi,yǐ lóu wàng jí,fēng jí mù cháo chū.
2 yì lián jiū wài yǔ,jǐ chǔ xián tián,gé shuǐ dòng chūn chú.
3 xīn yān jìn liǔ,xiǎng rú jīn、lǜ dào xī hú.
4 yóu jì dé、dāng nián shēn yǐn,mén yǎn liǎng sān zhū.

5 chóu yú.
6 huāng zhōu gǔ xù,duàn gěng shū píng,gèng piāo liú hé chù.
7 kōng zì jué、wéi xiū dài jiǎn,yǐng qiè dēng gū.
8 cháng yí jí jiàn táo huā miàn,shèn jìn lái、fān zhì wú shū.
9 shū zòng yuǎn,rú hé mèng yě dōu wú.

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