2022年10月4日火曜日

226斉天楽(呉文英)

斉天楽  呉文英

1煙波桃葉西陵路、十年断魂潮尾。
2古柳重攀、軽鷗聚別、陳跡危亭独倚。
3涼颸乍起、渺煙磧飛帆、暮山横翠。
4但有江花、共臨秋鏡照憔悴。

5華堂燭暗送客、眼波回盼処、芳艶流水。
6素骨凝冰、柔蔥蘸雪、猶憶分瓜深意。
7清樽未洗、夢不湿行雲、漫沾残涙。
8可惜秋宵、乱蛩疏雨裏。

1けぶる波、あの人と別れた西陵の路、十年の悲しみは流れとともに。
2あのとき折った柳に再び会い、あのとき別れた鷗とまた集まる、高いあずまやに独りもたれていたあの場所で。
3涼しい風がにわかに起こり、ぼんやりする岸と船、暮れの山は青く連なる。
4ただ有るだけ、川べりの花が、ともに秋に水面に臨んで、私と同じように憔悴したさまを映して。

5部屋の蠟燭がひっそりと旅人を見送った。あの人が流し目で振り返ったとき、艶めかしさがあふれた。
6腕は氷のように、白かった、まだ破瓜の深い意味を覚えている。
7酒を干さず、夢で雲を湿らせないうちに、みだりに涙で枕を濡らして。
8惜しいことだ、秋の宵、コオロギの声をこぬか雨の中で聴いているだけとは。

蔡義江『宋詞三百首全解』注:
1桃葉:東晋の王献之の愛妾の名。辛棄疾178「祝英台近」の「桃葉渡」の注、参照。 西陵:杭州西湖の西冷と銭塘江を隔てた西興(いま蕭山市に属する)、どちらもそれぞれ西陵と呼ばれる。ここは借りて、銭塘江で別れた渡し場をいう。 3颸:涼風。 6素骨凝冰:白くつやつやした肌の形容。 柔蔥蘸雪:指が細く白いさま。方干「採蓮」詩に「指剥春葱腕似雪(指は春葱を剥き腕は雪に似たり)」とある。 分瓜:「破瓜」ともいう。六朝時代の俗語。「瓜」の字を分けるとふたつの「八」の字に似ているので、韻語で女性の「二八の年華(十六歳)」をいう。また俗に、女性の処女喪失をいう。『通俗編』に見える。唐・段成式「戯高侍郎」詩に「猶憐最小分瓜日、奈許迎春得藕(偶と同じ音)時(猶お憐れむべし 最小分瓜の日、奈許ぞ 春を迎えて藕を得る時)」とある。 7湿行雲:晏幾道054「木蘭花」の「朝雲」の注、参照。蘇軾の詩に「仙山霊雲湿行雲(仙山の霊雲 湿れる行雲)」とある。また詞に「夢行雲」という詞調がある。

1煙(けぶ)る波、桃葉(あのひと)の西陵の路、十年の断魂(かなしみ)みは潮尾(ながれ)と。

2古(あ)の柳は重(ふたた)び攀(お)り、軽鷗(かもめ)は別れて聚(またあ)う、危(たか)い亭(あずまや)は独(ひと)り倚(もた)れていた陳跡(あのばしょ)。

3涼颸(すずかぜ)が乍(にわか)に起こり、渺(ぼんやり)する煙磧(きし)と飛帆(ふね)、暮れの山は翠(あお)く横(つら)なる。

4但(た)だ有るだけ、江(かわ)の花が、共に秋の鏡(みずも)に臨んで憔悴したさまを照(うつ)して。

 

5華堂(へや)の燭(ろうそく)が暗(ひそ)かに客(たびびと)を送った、眼波(ながしめ)で回盼(ふりかえ)った処(とき)、芳艶(なまめか)しさが流水(あふ)れた。

6素骨(うで)は凝冰(こおり)のように、柔蔥蘸雪(しろ)かった、猶(ま)だ分瓜(はか)の深い意を憶(おぼ)えている。

7清樽(さけ)を未洗(ほさな)い、夢で行雲(くも)を不湿(しめらさな)いうちに、漫(みだり)に残涙(なみだ)で沾(ぬ)らす。

8可惜(おし)い、秋の宵、乱蛩(コオロギ)を疏雨(こぬかあめ)の裏(なか)で。


qí tiān lè

1 yān bō táo yè xī líng lù,shí nián duàn hún cháo wěi.
2 gǔ liǔ zhòng pān,qīng ōu jù bié,chén jì wēi tíng dú yǐ.
3 liáng sī zhà qǐ,miǎo yān qì fēi fān,mù shān héng cuì.
4 dàn yǒu jiāng huā,gòng lín qiū jìng zhào qiáo cuì.

5 huá táng zhú àn sòng kè,yǎn bō huí pàn chǔ,fāng yàn liú shuǐ.
6 sù gǔ níng bīng,róu cōng zhàn xuě,yóu yì fēn guā shēn yì.
7 qīng zūn wèi xǐ,mèng bù shī xíng yún,màn zhān cán lèi.
8 kě xī qiū xiāo,luàn qióng shū yǔ lǐ.

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